チェコ共和国

個人のカナビス栽培を非犯罪化へ

ライトドラッグとハードドラッグの分離を狙う


ヨーロッパのカナビスの首都

Source: Prague Post
Pub date: Oct 3, 2007
Title: Drug Use Debate Lights Up
Author: Eva Munkova
http://www.mapinc.org/norml/v07/n1138/a05.htm


チェコ共和国議会では、刑法を改正して、少量の嗜好用カナビス栽培の刑罰を下げて非犯罪化を行うことが検討されている。

新しい刑法が通過すれば、個人使用目的での栽培は非犯罪化され、個人用とみなされる量を越えてカナビスを栽培した場合には最高6ヶ月懲役になる。これに対して現在の法律では、一定以上のドラックを製造または所持して捕まった場合は1年から5年の懲役になっている。

「今回の修正法は、嗜好目的でドラッグを使うユーザーをブラック・マーケットから切り離すという考え方が背景になっています」 と司法大臣のズサナ・クンコーバ報道官は語っている。

クンコーバ報道官によれば、法律が変わっても、ドラッグの営利目的の製造や販売についての規定には本質的な変更点はなく、警察は現在と同様にディーラーを逮捕することができるようになっているとしている。

新しい法案では、カナビスのような「ライトドラッグ」の個人使用目的での所持や栽培に対する罰則が緩くなる一方で、コカイン、アンフェタミン、ヘロインといったハードドラッグの所持や販売についての罰則は厳しいまま残される。

ライトドラッグとハードグラッグ双方を所持、製造、輸送、販売した場合も従来通りの犯罪行為とみなされ、怪我や死亡事故を引き起こした場合には最高15年の懲役が科せられる。

チェコ議会で、ドラッグの刑罰問題が審議されるのは今回が初めてというわけでもない。同様の変更は、スタニスラフ・グロス(社会民主党)が首相だった2005年にも刑法改正法案の一部として提出されている。しかし、議会では、刑法改正法案自体が否決されたために、カナビスの刑罰の軽減化は実現しなかった。

当時の改正法案を作成した政府の委員会のメンバーだったジョセフ・ラディメッキー氏は、議会が最初にドラッグの栽培や所持を刑事犯罪化したのは1999年で、基準量については明確にされていなかったと言う。改正法案作成に当たっては、「専門家たちはEUの流れに追随したものだとみていましたが、政治家たちの見方は別でした。」

1999年の法施行の1年後に実施された政府の調査では、新しい法での厳しい対応にもかかわらず、ストリートでのカナビスの量はほとんど減らず、むしろ状況を悪化させているという結果が報告された。

「以前では畑や森の片隅で小規模栽培されたもので効力も弱かったのですが、それに代わって組織的な犯罪ディーラーがもっと強い製品を扱いはじめたのです。また、ディーラーが介在することで、ライトドラッグとハードドラッグが一緒くたになってしまったのです。」

今回の修正法案では、こうした研究にもとづいて、ライトドラッグとハードドラッグを分離することに主眼が置かれている。カナビスの個人使用に対する罰則を軽くすることで、チェコは、アメリカを含む西側諸国に広がる非犯罪化の流れに加わることになる。

アメリカでカナビス法改革運動に取り組んでいるNORMLのキース・ストロープ法律顧問は、「30年前は、カナビスの個人使用目的の少量所持でも10〜25年の懲役が普通だったのです」 と指摘する。

しかしながら、今回提案されている法案をすべての人が快く思っているわけでもない。宗教的倫理にもとづいてドラッグ中毒に対峙する国際組織ティーン・チャレンジのチェコ支部のペトル・ミニスター代表は、「ライトドラッグを使い始めると、やがて新しく違った刺激を求めてハードなドラッグに手を出すようになるのです。私は、その間は連続していると強く確信しています」 と言う。

これに対して、ストロープ氏は、ライトドラッグからハードドラッグの移行していくというような関連性はないと強調する。

「カナビスを売っているディーラーは、もともとドラッグの販売という重罪のリスクを冒しているわけですから、カナビスよりもより利益になるハードドラッグを売りつけようと狙っているのです。ですから、禁酒法を廃止してアルコールを合法化したのように、カナビスも合法化すれば、ブラックマーケットと分離することができるのです。」

規制や罰則を緩めることでどのような効果があるかについては、専門家たちの間でも見方は分かれている。

中毒克服のための本を何冊も書いているカレル・ネスプール氏は、「刑罰の効果は、訴追の一貫性に依存しているのです」 と言う。

「議会が法律を作っても警察がそれを無視すれば状況は改善しません。・・・今回の改正で、刑罰を軽くして、より一貫性をもって法執行できるようになれば正しい方向に動き始めると思います。」


チェッコは、ヨーロッパのカナビスの首都と言われるだけあって、特に若者のカナビス使用率は非常に高くなっている。


EMCDDA Annual Report 2006