オバマのカナビス政策を占う


Jacob Sullum

Source: NORML Daily Audio Stash
Pub date: 12 Nov 2008
Obama on Drugs
Author: Jacob Sullum :: Townhall.com Columnist
http://stash.norml.org/2008/11/12/obama-on-drugs/
http://townhall.com/columnists/JacobSullum/
2008/11/12/obama_on_drugs&Comments=true


マサチュセッツとミシガンの大勝利

つい先ごろ行われた選挙では、マサチューセッツ州で1オンスまでのカナビス所持の刑事罰を撤廃して最高100ドルの罰金に置き換える住民発議が認められた。またミシガン州でもカナビスの医療使用を求める住民発議が通過して、医療カナビス法を持つ13番目の州が誕生した。

それぞれの州が獲得した支持率は65%と63%で、バラク・オバマ候補の得票率を上回っている。この結果について、マリファナ・ポリシー・プロジェクト(MPP)のブルース・ミルケン氏は、アメリカ社会全体の世論を反映したものだと言う。

確かにここ数年に実施された世論調査では、大多数のアメリカ人が、カナビスを吸ったという理由だけで投獄すべきではなく、また、カナビスから恩恵を得られる患者については合法的にカナビスを入手できるようにすべきだと答えている。


口が重くなったオバマ

だが、次期大統領に決まったバラク・オバマ議員は、選挙途中で一旦はカナビスの非犯罪化に言及しながらもすぐに撤回し、また、医療カナビスをめぐる発言も曖昧さに包まれている。

実際、彼のカナビス問題に対する口の重さは、オナマ政権になればドラッグ政策の刑罰が軽減化されて、もっと寛容な方向に向かうだろうと期待している人たちを落胆させているようにもみえる。

期待される理由の一つには、彼はアメリカ史上どの大統領よりも青年時代のドラッグ使用について率直に語っていることが上げられる。

カナビスを吸い、コカインを吸引したことについては後悔もしていると話してはいるが、彼が刑罰を受けなかったと同じ行為をしているドラッグ・ユーザーを当時よりも厳しく罰することは正当化が難いので、明らかに当時よりも処罰が軽減化される期待のほうが大きい。


後退するオバマ発言

また、2004年の上院議員選挙キャンペーンでノースウエスタン大学の学生たちに、「私は、…カナビス法を非犯罪化することが必要だと思う」 と語っていたことからすれば、期待を集めても当然のことだろう。

一般に非犯罪化とは、少量のカナビスの単純所持に対して、すべてを刑事的な罰則で対処するのではなく、逮捕や投獄を制限したり撤廃することを言う。また、末端の些細なディーラーの懲役刑を5年から1年に軽減することも含む場合もある。

確かにそれはそれで改革には違いないが、オバマ議員の発言はもっとずっと先を見据えたものであったことは間違いない。もしそうでなければ、学生たちに、ドラッグ戦争は 「完全な失敗だった」 とまで主張していたこととは辻褄が合わない。

しかし、今年になって彼はそうした見方を後退させてしまった。キャンペーンでは、これまでの発言について、「暴力を伴わないドラッグの初犯者であっても、長い期間にわたってずっと刑務所に送り込む政策を続けてきたが、その数はあまりにも多くなり過ぎ、法律を考え直さなければならない」 という意味だと説明している。


医療カナビスに対する曖昧さ

オバマ議員の医療カナビスに関する見方はもっとずっと鮮明ではあるが、周辺部分については依然として曖昧な部分が残されている。彼は、医療カナビスが合法化されている州の患者やケアギバー栽培者に対しては、連邦麻薬取締局(DEA)の強制捜査はやめると約束しているが、キャンペーンの定形メール回答には次のように書かれている。
「多くの州が医療カナビスを認める法律を持っていますが、ブッシュ政権はディスペンサリーなどの施設を強制捜査し、深刻な病気に苦しむ人たちを逮捕し続けています。乏しい連邦の予算を何の脅威にもなっていない患者さんたちに浪費している一方では、ナンセンスなことに、より危険なドラッグを扱う暴力的な密売業者の多くが野放しにされているのです。オバマ議員が大統領になれば、ブッシュ政権の政策は継続しません。」
ここでは、医療カナビス患者と 「より危険なドラッグを扱う暴力的な密売業者」 を対比しているが、本来これらは全く無関係なことを一緒くたにしている。このことは、オバマ議員には、患者を保護して安心させるための法律を整備するという計画がないことを示している。

さらに、彼は、食品医薬品局(FDA)が医薬品としてのカナビスの品質がどのようなものであるかを決める必要があるとも述べている。このことは、カナビスの薬物規制法の分類を第1類から格下げして、全国の医師が処方できるようにするという意味にも取れるが、連邦当局が州の政策を却下して使えないようにする可能性も含んでいる。


オバマの最も大きな弱み

オバマ議員の最も大きな弱みは、皮肉なことにドラッグの使用歴で、法改革により踏み込む動機になるよりは、むしろドラッグに厳しい姿勢を見せなければならないのではないかと不安になってしまうことだ。

同じことはクリントン大統領でも起こっている。当初はカナビスにリベラルな姿勢を取ると期待されていたが、カナビス反対派ロビーから喫煙経験を攻撃されて、「吸ったが吸い込んではいない」 と言い訳して、かつてないほどドラッグ戦争予算を急増させて攻撃の矛先をかわした。やがては反ドラッグの本心をあらわにして、憲法の修正第1条を踏みにじってまで、患者に医療カナビスを推薦した医師を投獄すると脅した。

結局は、この政策は連邦控訴審で拒絶されることになったが、この憲法違反の政策を弁護するためにクリントン大統領のドラッグ政策主席顧問は、「われわれの政権は、合法化あるいは合法化という概念と戦い続けるための方法を常に探し続けなければならないのです」 と語っていた。

「われわれは、カリフォルニアの医療カナビス発議が子供たちに発しているメッセージと戦わなければならない…」

子供をたちを守るという口実で 「合法化の概念」を無理やりにでも抑えつけなければならないと、この言葉を熱狂的に叫んでいるのは誰か?  実は、首席補佐官に内定しているラム・エマニュエル議員なのだ。

ドラッグ戦争に熱心なのはエマニュエル議員だけではない。ジョー・バイデン次期副大統領も、80年代に上院司法委員会の議長をしているときに悪名の高い「強制下限刑のガイドライン」(mandatory-minimum sentencing guidelines)を策定している。このガイドラインは、それ以後のドラッグ戦争に最も大きな影響を与えた政策の一つと言われている。

クリントン大統領は、前任のレーガンやブッシュ大統領をはるかに越えてカナビス戦争をエスカレートさせたことはあまり知られていないが、政権の第1期目(1993年〜97年)でカナビスの逮捕者数がものすごい勢いで急増していることからも、その異様さが分かる。


カナビスの逮捕者数が最も急増し始めたのはクリントン政権の第1期目
クリックで拡大


クリントン大統領のカナビスいついての発言の中で最もおぞましいのは、大統領を辞めたすぐ後で、カナビスの非犯罪化を支持する発言をしている ことだ。彼はローリング・ストーン誌の2000年11月号で、「カナビスの少量所持についてはすでに多くの地域で非犯罪化されていますし、そうすべきだと思っています」 と臆面もなく語っている。

バラク・オバマ大統領候補へのカナビスに関する公開書簡  (2008.2.1)