カナダのカナビス使用

中流階級でカジュアル化が進む

Source: Eurek Alert
Pub date: 14 May 2008
Canadian middle class relaxing with marijuana
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-05/uoa-mcr051408.php


カナダ・アルバータ大学の調査研究によると、中流階級のさまざまな人たちが余暇活動をより充実したものにするために、意識的にカナビスを選択して注意深く使っている姿が明かになった。

薬物の使用と乱用ジャーナルの最近号に掲載されたこの研究では、アルバータ大学のジェレイント・オズボーン社会学教授のチームが2005年から2006年にかけて41人のカナダ人の生活状況をさまざまな角度から調査している。

その結果、従来言われていた「典型的」なカナビス・ユーザー像などは存在せず、あらゆる世代の人が、テレビを見たり、スポーツをしたり、セックスしたり、絵を描いたり、文章を書いたりするときに、意識的にカナビスを選んで、それぞれの活動を充実したものにしていることが分かった。

「ある人たちは、毎日のストレスやプレッシャーから開放されてよりリラックスするためにカナビスを使っていますし、今やっていることにより集中するのに役立つと言って使っている人たちもいます。」

調査対象として選ばれたのは、アルバータ、ケベック、オンタリオ、ニューファンドランドに住む21才から61才までの職業に就いている男性25人と女性16人で、カナビスを毎日使っている人もいれば、年に1、2回という人もいる。 大半が中流階級に属する人たちで、小売、サービス、通信といった産業でホワイトカラーやソーシャルワーカーなどとして働いている。全体の68%が高卒より上の学歴を持ち、11%も高校を卒業している。

調査では、全員が自分自身を節度と責任を持ったカナビス・ユーザーと考えており、そのときどきのセッティングに合わせて使い方を調整し、他人の迷惑にならないように気を配っていることも明らかにされている。

研究者たちはこうした結果を踏まえて、広がったカナビス使用についてさらなる科学的な調査を実施するとともに、政府は、カナビスの非犯罪化に取り組み、最終的には合法化を目指すべきだと結んでいる。

「カナダ政府は、カナビスを犯罪として扱うことについて、過去から現在に至まで正当な理由を示したことは全くないのです。今回の研究で示されたことは、カナビスを使っている人たちのほうが、アルコールやタバコのユーザーよりも社会犯罪の脅威にはなっていないということです」 とオズボーン教授は話している。

「カナビスを合法化して政府がコントロールできるようにすれば、これまで取り締まりに費やしていたリソースを他の犯罪に振り向けることができますし、カナビスに依存している犯罪組織を弱体化する一方で、税収で得た資金をドラッグ教育につぎこんで、効果的にカナビスの節度ある使用を促して、ドラッグの乱用を減らすことができるようになります。」

今回の論文: Understanding the Motivations for Recreational Marijuana Use Among Adult Canadians Geraint B. Osborne, Curtis Fogel, Substance Use & Misuse, Volume 43, Issue 3 & 4 February 2008 , pages 539 - 572

今回の調査は、4月にCAMH(中毒およびメンタル・ヘルス・センター)から発表されたオンタリオの調査 と同じような結果が示されているが、調査方法が全く異なっている。

今回の研究は、社会的なコンテキストの中で、どうして人はリクレーショナル目的でカナビスを使うのかを明らかにしようとしているところに特徴がある。このような民族誌的ともいえる側面から取り組んだ研究は初めてと言えるかもしれない。

カナダ、中年のカナビス・ユーザーが急増  (2008.4.15)

これまでカナビス・ユーザーと言えば、ヒッピーや昼間からソファのうずくまって音楽の聞いているような外れたタイプで見られることが多かったが、もはやそのようなステレオタイプはカナダでは通用しなくなっている。このことは、オランダの地方のコーヒーショップに行って、地元の人たちがどのようにカナビスを使っているかを見ても簡単に分かる。

また、カナビス反対派からは、カナビス・ユーザーは無気力で仕事もしないので社会の生産性が下がって迷惑になっているといったステレオタイブも相変わらず語られているが、オンタリオの調査では、高学歴者のカナビス使用が増えていることや、カナビス・ユーザーで年収5万ドル(500万円)以上を稼いでいる人が32%にもなっていることが示されている。

カナビス反対派は、カナビスを使っている人の実態を実際には知らないので上のようなステレオタイプの設定が必要になるわけだが、彼らが現実のデータに基づいた議論をしたがらない理由もそこにある。幻想が肥大化すると、人は無知に酔うようになる。