オランダ最高裁

医療カナビスに画期的な判決


Source: Bron: ANP
Pub date: September 16, 2008
MS-PATIENT BLIJFT ONBESTRAFT VOOR KWEKEN CANNABIS
http://www.encod.org/info/MS-PATIENT-BLIJFT-ONBESTRAFT-VOOR.html


オランダ最高裁判所は、多発性硬化症の治療のために自分自身のカナビスを栽培していた患者とその妻に対して、起訴されていたすべての罪状を取り下げる決定を下した。

オランダでは、基本的にはカナビスの栽培は禁止されているが、医療用のみが例外として認められている。

しかし、実際に栽培が認められているのは、国が認定した僅かな専門業者に限られており、患者は医師から処方箋をもらって薬局から入手する決まりになっている。


副作用

しかし、薬局から入手できる政府の医療カナビスは種類が限定されているために、患者によっては好ましくない副作用が現れる場合もある。

オランダでは、いわゆるコーヒーショップでもカナビスを買うことができるようになっているが、カビやバクテリアを多く含んでいるために、一部の患者には危険が伴う。

今回訴えられていたウイム・モーラグさんの場合も、政府に医療カナビスやコーヒーショップのカナビスが病状に合わず、多様なカナビスの中から自分にあったカナビスを栽培することにした。だが、やがて当局に発見されて下級審で有罪判決を受けた。


最高裁

しかし、専門家たちは、栽培していたカナビスが彼の病状に適した成分を含む種類であることを口を揃えて認めていた。

このために、控訴審では、病気にともなう痛みの緩和に栽培する権利がカナビスの栽培を禁じた州の利益よりも優先されるという考えを支持する逆転判決がくだされろことになったが、この判決を不服とする検察側は、決定を覆すように最高裁に上訴していた。

これに対して、オランダの最高裁判所は、今回、モーラグ夫妻の場合は刑法を適応されることを恐れずに穏やかに暮らせるようにすることが正しいとする判断を示した。


アヘン法の改革

しかしながら、今回の決定は例外な措置で、そのまますべての多発性硬化症患者に適応されるわけではない。同じ決定を得るためには、それぞれの患者が、カナビスの栽培を禁じた法よりも病気の緩和のために栽培する権利のほうが大きいことの正当性を示すことが必要とされている。

一方、議会には、多発性硬化症患者には自分で栽培したカナビスのほうが医療効果が高いという認識を示す向きも出てきている。D66党では、従来のアヘン法を改正して、すべての患者が自分用のカナビスを栽培できるように例外措置の敷居を低くする法案を提出することを約束している。

オランダ控訴審 医療カナビスの個人栽培を認める  (2006.10.21)

今回の判決で画期的なことは、これまでオランダ政府が供給してきたカナビスでは、種類が少なすぎて患者をニーズを十分に満たせないと明確に認めた点にある。

オランダ政府は2003年9月から医療カナビスの供給を開始したが、他国からのコーヒーショップへの批判も大きいこともあって、医療カナビスについては国連の単一条約を厳格に遵守することを最優先させた。

国連の単一条約28条では、医療用にカナビスを使う場合には、政府機関がすべての生産物を物理的に所管して流通させることを要求しているので、栽培を数人の認定業者に限定して、流通や価格の決定についてはすべて政府が取り仕切ってきた。

現在オランダ政府が供給している医療カナビスは、ベドローカン(THC18%)、ベドノビノール(THC11%)、多発性硬化症患者向けにハイになりにくいベディオール(THC6%、CBD7.5%)の3種類しかない。

しかし、実際には、医療カナビスの研究所では、さまざまな病気や症状に対応するために160種類以上のカナビスが栽培されてもいることや、カリフォルニアのなどの医療カナビス・ディスペンサリーではさまざまな品種や製品が販売されていることからもわかるように、医療カナビスの恩恵を十分に引き出すためには多様性が欠かせない

つまり、当初より懸念されていたように、医療カナビスを薬局を通じて普通の医薬品やモルヒネのように供給することは、種類が多過ぎて不可能であることが明確になったわけで、同時に、単一条約の方法ではカナビスの恩恵を十分に引き出すことができないことも証明されたことになる。