オバマ政権

研究用カナビスの政府独占見直しへ?


Katie Sanders

Source: Congress Daily
Pub date: 18, Mar 2009
Obama Administration Likely To Review
UMass Scientist's Bid To Grow Marijuana
Author: by Katie Sanders
http://www.nationaljournal.com/congressdaily/cda_20090318_1850.php


ブッシュ前大統領は、1月、政権の最後の最後にも医療カナビスに一撃を加えてからホワイトハウスを去って行った。

マサチューセッツ大学アマースト校の医療植物の専門家ライル・クラカー教授は、8年前から医療カナビス研究用に民間でのカナビスを栽培する許可を求めて闘ってきたが、2年ほど前には管轄する麻薬取締局(DEA)の行政法の判事からもその妥当性を認める判決を得ていた。

しかし、この判決には強制力がないために公聴会の対象にもならず、DEAは実質的には何の拘束も受けずに最終決定を下すことができるようになっている。それを良いことに、ブッシュ政権は2年間も決定を棚晒にしたあげく最後になって、民間の栽培場を認めることは公共の利益にそぐわないとだけ述べて却下したのだった。

だが、医療目的のカナビスに前向きな姿勢を取ることを公約したオバマ政権が誕生して、この決定をとり消す動きが出てきた。このことで、クラカー教授のライセンス問題は再び注目を集めるようになってきた。

この問題に詳しい消息筋によると、ホワイトハウスはDEAの決定を覆すことを要求しそうだと言う。「基本的には、今回行われた決定の経緯を詳しく調べて、適正に見直したいと考えているのです。」

当事者であるクラカー教授は、今回の動きについて慎重ながらも楽観的な見方をしている。ブッシュ政権は、胚性幹細胞研究の禁止や、外国の家族計画グループにまで影響を与えかねない堕胎についての言論統制などといった議論の多い問題に積極的な姿勢を見せてきたが、それに一線を画するオバマ政権は、カナビスの栽培ライセンス問題についても前政権とは違った姿勢を取る可能性がある。

クラカー教授は、「オバマ大統領は、政治よりも科学を重視する意向を示しています。現在までは、それとは反対で、科学よりも政治を優先させる状況が続いてきたと考えています」 とインタビューに答えている。

ちょうど先週、オバマ大統領は、ホワイトハウス科学技術政策局 (OSTP)の首脳に「政府の意思決定にあたっては、科学的誠実さを回復する戦略を展開する」 ことを求め、「社会がは科学を信じられるようにして、公共政策の決定にあたっては科学的なプロセスを経ていることを伝える必要がある。公的な役割を担っている人々は、科学的あるいは技術的な発見や結論を抑圧したり変更してはならない」 と書いている。

医療カナビス問題に関しては、オバマ氏は2007年のアイオワ州での選挙キャンペーン中に、科学者や医師が苦しみの治療に最善だと判断すれば、その使用について認めるつもりだと述べている。「痛みの緩和のためにモルヒネが処方されていますが、それと何ら違いはありません。」

これに対して、クラカー教授のDEAライセンス問題に詳しい当局の関係者たちは一様に口を閉ざしている。

先月には16人の下院議員がエリック・ホルダー司法長官に対して、DEAの最終決定を改めるか撤回して、新しい政権が選んだDEA局長のもとで再検討できるようにすべきだと求めた。彼らは、クラカー教授に研究目的でカナビスを栽培する資格のあることは、行政法判事の判決にもあるように 「一点の疑問もない」 と書いている。

ジョン・オリバー議員(マサチューセッツ州、民主)に率いられた議員たちは、エマニュエル大統領補佐官の1月20日のメモを引用して、基本的に大統領職の期限ぎりぎり(11th hour)のすべての決定は凍結されるべきで、ブッシュ政権はその 「精神」 踏み躙ったと主張している。メモは就任式直後に出回ったもので、まだ効力はないもののすでに官報に掲載された最終決定と規程について再考するように求めている。

クラカー教授とブッシュ政権の争いは、2001年にクラカー教授が、DEAとFDAの許可したカナビス研究に民間の自分の大学で栽培したカナビスを使うことを求めて連邦政府にライセンスを申請したことから始まった。

アメリカでカナビスを使った研究をするためには、政府がミシシッピー大学に依頼して独占的に栽培したカナビスを使うことが1968年から義務づけられており、1974年からはドラッグ乱用研究所(NIDA)が管轄するようになったが、クラカー教授の試みは何十年にもわたるこの独占形態に一石を投じることになった。

長らくこの政策をバックアップしてきた上院歳出委員会の常連でミシシッピー州選出のサド・コクラン上院議員(共和)は、自分の名前のついた建物にある大学の天然産物研究センター(NCNPR) とカナビス栽培施設に一括して350万ドルの資金を割りあてている。

今週これについて問われた彼の報道担当官は、コクラン議員は、ミシシッピー大学の出身者として自分の州にセンターがあることを誇りを持っており、ライセンスの決定についてはDEAの問題だとかわしている。

しかし、2007年のDEA行政法判事の判決では、拘束力はないものの、科学研究用にミシシピーのNIDAが供給しているカナビスは、研究のメリットを引き出すには不十分な効力しか備わっいないと認めて、クラカー教授に独自の栽培のライセンスを与えるように勧告している。

マサチュセッツ州選出のエドワーデ・ケネディやジョン・ケリー上院議員を含めた45議員もこのはっっケツを支持する書簡を発表したが、当時のカレン・タンディDEA局長とその後継者であるミッシェル・レオンハート局長は2年近くにわたってライセンス問題には意志決定を避けてきた。

だが、ブッシュ大統領がホワイトハウスを去る1週間を切ってから、レオンハート局長はクラカー教授の申請を拒否し、最終的な発効日付を2月13日に設定することで,ブッシュ大統領が権限を持っている間は議論を封じ込めるように画策した。

このタイミングの取り方について、クラカー教授と訴訟を率いたアメリカ自由人権協会のアッレン・ホッパー弁護士は、この決定が政治的動機から行われたものだとしている。ホッパー弁護士は、通常行政法の判事は超党派のテクノクラートで、法的で論理的な観点から事件を検証するものだが、「今回の決定は、DEAの局長にとっては政治的な約束事なのです」 と語っている。

この件に詳しい消息筋も、「完全に政治的なもの」 だと同意している。「イデオロギー・ベースで突き動かされているだけなのです。」

クラカー教授は、レオンハート局長が彼にライセンスを認めたくない理由として、自分で栽培したいという研究者が続出するのを恐れているのではないかと言う。「われわれのケースは行き詰まりを爆破するダイナマイトのようなものなのです。一旦どこかが崩れれば、もう元には戻せないのです。」

レオンハート局長が最終決定書を出したのに対して、ポッパー弁護士は、局長の主張に異議を唱えるために証言と証拠を示す公聴会を開いて再考を求める申し立てを行った。一方、クラッカー教授のライセンスの拒否が発効する予定になっていた2月13日の4日前になって、現在も新政権内に残っているレオンハート局長は、期限を4月1日まで遅らせることを大統領に告げた。

これに対して、司法省のローラ・スイーニー広報官は、カナビスのライセンス問題に触れて、1月20日のエマニュエル・メモとは関係なく、クラカー教授の訴訟チームが証拠を補足するために時間を求めたのに応じて、発効期日の先送りを決めたと述べている。

オバマ政権がまだDEAの局長を決めていないことが多くの問題を引き起こしているが、ホルダー司法長官への書簡の共同署名者のひとりでもあるサム・ファール下院議員(カリフォルニア州、民主)は、オバマ政権の新局長任命が 「信じられないほど遅い」 と批判している。

しかし、経済の急速な落ち込みと2つの戦争を抱えるオバマ政権に対して、ドラッグ問題に早急に対応していないなどと非難できるものなのだろうか? 「言いたくはないのですが、思うに、最も重要な問題というわけではありませんからさっさと決めて欲しいのです。」