アメリカ政府の統計に見る

カナビス「中毒」

で治療を受けた人の実態と危険の誇張

Source:NORML's Daily Audio Stash
Pub date: 31, Mar 2009
2007 Treatment Episode Data Set (TEDS) Marijuana Stats
Author: Radical Russ
http://stash.norml.org/2007-treatment-episode-data-set-teds-marijuana-stats/


アメリカでは、薬物乱用・精神衛生管理局(SAMHSA、Substance Abuse and Mental Health Services Administration) が薬物中毒防止と精神衛生サービスの改善と利用促進の中心となって活動しているが、毎年、薬物中毒によるリハビリ施設の利用状況についての統計データを発表している。

この3月には、2007年治療実績データ(TEDS、2007 Treatment Episode Data Set)が発表され、カナビス「中毒」について興味深い実態が示されている。

(グラフはクリックで拡大)

カナビスでリハビリ治療を受けた人はこの10年間で50%も増えている

まず目を引くのは、カナビスによる施設利用者が この10年間に急増しているというデータ だ。1997年の利用者はおよそ20万人だったものが、2005年までには30万人を越えている。

その後は頭打ちの状態が続いているが、いずれにしてもここ10年間にカナビスでリハビリを受けた人数は急激に上昇したことには変わりはなく、確かにこの結果をもとにすれば、カナビスに反対する人たちが言うように、「60年代のカナビスとは違う」強力なカナビスが出現したことでカナビスに中毒する人が50%も増えた、ようにも見えなくもない。


自分自身から治療を受けに行ったカナビス「中毒者」は15%だけしかいない

しかしながらこの急増の理由を調べてみると、1990年代の終わりから2000年代の初めにかけて裁判所がリハビリ治療送りの判決を下すことが急激に増えたためだと分かる。

例えば、今回発表されたデータ では、カナビスでリハビリを受けた人の57%は刑事裁判システムで強制されたもので、自分から進んで治療を受けた人は15%しかいない。

自ら治療を求めた人の割合はドラッグ全体ではおよそ33%になっているが、カナビスの15%という数字は他のドラッグと比べて最も低くなっている。またその一方では、強制された人の割合は最も高くなっている。

これに対して、例えばアルコールの場合は、自分から治療を受けた人は29%で、強制された人は飲酒運転も含めて42.5%しかおらずカナビスよりも15ポイントも低くなっている。


カナビスでリハビリ治療を受けた人の37%は、過去1カ月間はカナビスを使ってさえいない

さらに興味深いことは、カナビスでリハビリ治療を受けに行った人の およそ10人に4人が過去1ヶ月間はカナビスを使っていない という事実だ。これに対して、アルコールの場合は過去1ヶ月飲んでいない人は4人に一人だけで、ヘロインの場合も6人に一人しかいない。

また、カナビスでリバビリ治療を受けた人のうち初めて受けた人が57.9%であることも興味深い。この数字はどのドラッグよりも高くなっているほか、どういうわけか、この数字は刑事裁判で強制された人の割合56.9%にも近い。

アルコールも初めて受けた人の割合が50%を越えているが、初めての人が過半数を越えているのはカナビスとアルコールだけになっている。過去1回の人の割合はどのドラッグでも似ているが、カナビスとアルコール以外では過去に複数回の治療を受けている割合が高くなっている。

また、カナビスでリハビリ治療を受けた人の31%が仕事を持っている。この数字はヘロインやコカインの2倍になっている。アルコールの場合は42.5%が仕事を持っているが、これは合法であることや飲酒運転も含んでいることが影響していると考えられる。


カナビス治療の対象者の大半が25才以下で、その構成は他のドラッグとは全く異なっている

ドラッグ別にリハビリ治療を受けた人の年齢や性別 を見ると、その構成に大きな違いのあることもわかる。

カナビスでリハビリを受けた人の3分の2は25才以下で、性別では男性が4分の3を占めている。これに対して、シンナーや幻覚剤を別にすれば、平均年齢は30才代が中心で、アルコールやクラック・コカインでは40才になっている。

このことは、カナビスを禁止するための政策がなぜ若者をターゲットにしているかを示している。本音は若者を守るためためではなく、カナビスを禁止しておくためにキッズ・カードを使っている。もし、アルコールによるリハビリ治療者の平均が20才代だとしたら、同じようにターゲットにされているかどうかは疑わしい。

実際、カナビスでリハビリ治療を受ける若者が多くなっているからといっても、カナビスの危険が増していることの証明にはなっていない。しかし、カナビスに反対する人たちはそのように主張することで逮捕を正当化している。

今回の報告書:
2007 Treatment Episode Data Set, the National Admissions to Substance Abuse Treatment Services.

「カナビス中毒」 による治療施設入所者 36%が過去1ヶ月カナビスを使っていない
(2008.3.25)