「カナビス中毒」 による治療施設入所者

36%が過去1ヶ月カナビスを使っていない

Source: Drug War Chronicle
Pub date: 25 Mar 2008
1/3 of People Admitted to Marijuana Treatment Hadn't Been Smoking Marijuana!
http://stopthedrugwar.org/chronicle_blog/
2008/mar/25/1_3_of_people_admitted_to_mariju


厳格なカナビス禁止法の支持者たちは、カナビスの中毒性が非常に高いというレトリックを掲げて、絶えずその主張をまき散らし続けているが、いつもほぼ例外なく次のようなロジックを使う。

カナビス非犯罪化は、完全なカナビス合法化への危険な第一歩であり、アメリカの若者の大半をドラッグ中毒治療・回復施設に送り込まなければならなくなります。実際、ニューハンプシャー州でも、ドラッグ中毒の治療受けている人の割合は、他のどのドラッグよりもカナビスが最も高くなっています…… 

私は、ニューハンプシャー州の責任のあるリーダーの方々が、こうした高い中毒性のあるカナビスの非犯罪化や合法化の企みを阻止することを強く要請します。

この 声明 は、ニューハンプシャー州下院議会でカナビスの非犯罪化法案が 可決 される前日の3月19日に、ホワイトハウス麻薬撲滅対策室(ONDCP)のスコット・バーン副長官が出したもので、現在、政府がカナビス禁止法の正当性を主張する上で、カナビスの中毒性が高いという論点が最も強力で重要なものだと認識していることをよく表している。

しかしながら、政府の機関(SAMHSA)が出している報告書 の表(下図参照) を見れば、カナビス中毒だとされて治療施設に送り込まれた人のうち36%が、実際には過去1ヶ月以上もカナビスを使っていないことがわかる。つまり、カナビス中毒で治療施設の送られた人の相当数がすでにそれまでの習慣を自ら中断しているわけで、どう見ても 「高い中毒性」 を備えているなどとは言えない。

どうしてこのようなことになっているかは、表の別の項目を見れば合点がいく。つまり全体の58%が刑事裁判に関連して施設に送り込まれた人たちで、自分で治療の必要性を感じて来院したわけではなく、カナビス所持で裁判にかけられて、裁判官から 「カナビス中毒」 と診断されて治療を命じられたに過ぎない。

もっとも、実際に施設に入所した時点で、半数以上の人が1ヶ月以上もカナビスを使っていないのは別に驚くほどのことでもない。中には、たまたま現場に居合わせて逮捕されただけで実際にはカナビスを使った経験すらない人もいる可能性もあるが、おそらく大半の人は逮捕された後で、公判に備えて自発的あるいは弁護士のすすめでカナビスを中断し結果がこの数字に表れていると考えられる。

そもそも、実際にはカナビスの 禁断症状はカフェインよりも軽度 で中毒性も極めて低いので、簡単に止めることができるからだ。このことは、アメリカで最も権威があるとされている科学アカデミー医学研究所(IOM)が、ONDCPの依頼を受けて調査して発表した1999年の 報告書 にもはっきり書かれている。

このように、「カナビスの中毒性が高い」 という政府の主張の根拠は、実際には中毒ではない人を無理やり中毒という範疇に押し込めることで成り立っている。逆に言えば、ドラッグ戦士たちが好んで使う 「カナビス中毒」 という武器は、カナビス法改革を潰して、限られた財源を捜査や逮捕、裁判や治療に浪費し続けるための口実として重用されていることがわかる。


SAMHSA: 
Admissions by primary substance of abuse  (Table3Table4)


アメリカ政府が、「カナビス中毒」 というコンセプトをとりわけ重視しているのは、今月の始めに国立ドラッグ乱用研究所(NIDA)が、400万ドルを投じてカリフォリニア州のラホヤに 「カナビス中毒センター」 を設立すると 発表 したことにも表れている。NIDAのプレスリリース によれば、「カナビス中毒を防止するための新しいアプローチを開発し、診断法や治療法を確立する」 ことが目標だと言う。

また、最近では、「カナビスの禁断症状はニコチンに匹敵」 というニュースが大々的に伝えられた。この研究もNIDA関係の研究者によるもので、たった12人 を対象にしたお粗末なものに過ぎないが、政府の「カナビス中毒」 戦略の一環と考えられる。

アメリカ政府がこれほどまでに 「カナビス中毒」 にこだわる理由は、カナビスによってアメリカ社会が堕落すると信じているからではなく、おそらく警察や刑務所、御用研究者、ドラッグテストや治療産業、製薬会社の利権を守って太らせるためだ。

彼らは、「カナビス中毒」 に中毒して止められなくなっている。