カナビスでも禁断症状が起こる


神話
カナビスは、少量でも5日間繰り返し使用することで禁断症状が見られることもある。カナビスを中断すると、1〜2日以内に禁断症状が現われることもある。


事実
カナビスでも禁断症状は起こるが、実際的な問題は有る無しの2元論ではなく、その頻度や症状の程度にある。

禁断症状というのは、ドラッグの使用を中断したときに起こる震え・下痢・発汗・不眠・短気・不安・うつ・攻撃的傾向・食欲不振・疲労感などの症状を起こすことを指している。こうした特徴は、ドラッグの連続使用によって身体がドラッグが入っていることが普通の状態になってしまい、体が適応変化を起こしていることを示している。

つまり、禁断症状は、「ドラッグの入った普通の状態」が乱されることに対する抵抗反応ということができ、ユーザーは、快楽を増すためというよりも、「普通」を取り戻すためにドラッグを使い続けたくなる。

カナビス・ユーザーでも禁断症状を起こすこともあるが、外見でわかる程の禁断症状が起こることも非常に稀れで、長期にわたってヘビーに常用しているような例外的にケースに限られている。全米医学研究所(IOM)の報告では、アルコールやヘロインなど身体的に顕著な禁断症状を伴う薬物に比べて「穏やかで期間も短く」、一旦止めたユーザーが再び始めようとする誘惑もあまり起こらないとしている。

実際、ごく普通のカナビス・ユーザーで、自分が禁断症状を経験したり、回りで禁断症状を起こしている人を見たという経験の持ち主はまずいないだろう。一般に、カナビスの使用では、数日間連続して使っているとむしろ効きかたにシャープさがなくなってくるので、自分から中断して、いったんカナビスを抜いて感度を戻そうとする人が多い。


反カナビス研究の中心である国立薬物乱用研究所(NIDA)の
ジャック・ヘニングフェィールト博士による評価 でさえカナビスの禁断性は最も低い


●また、ヨーロッパではシンセミラが普及する1980年代以前は、カナビスとしてはハシシが主流だった。ハシシは燃えにくいのでジョイントにするときにはタバコに混ぜて巻いていたが、現在でもその習慣が一般的に残っており、バッズでジョイントを巻くときにもタバコも混ぜるのが普通になっている。

このことがカナビス・スモーカーにニコチン中毒の多い理由にもなっている。当然のことながら、ニコチンの禁断症状がカナビスの禁断症状として見えることもある。しかし、ニコチンに対する中毒なので、ピュアなカナビス・ジョイントを吸っただけでは禁断症状は解消しないという特徴がある。

また、カナビスとアルコールの常習的併用は、カナビスの依存症にするリスクを増やす可能性があることも 指摘 されており、この場合もカナビスの中断で目立った禁断症状が出てくる可能性がある。しかし、この禁断症状はカナビスの単独使用の場合とは様相がかなり異なる。

さらに、医療的にカナビスを使っている場合は、頻繁に摂取して常にTHCの体内レベルを保って「普通」の状態を維持しているケースもあり、中断すると不安や不快な症状が出てきて禁断症状のように見えることもある。しかし、当然のことながら、こうした禁断症状は嗜好用途の場合とは区別して考えなければならない。


禁断症状の研究

カナビスが禁断症状を示すという報告は1994年にDSM-IV診断基準が整備されてから多く見られるようになったが、 研究の実態 は、ドラッグ乱用研究所(NIDA)から資金提供を受けたものが多い。

彼らはカナビスを1本でも吸えば乱用と言うが、実際にはごく普通のユーザーが実験の対象になることはなく、多くは目的とする結果の出やすいように、何年間にもわたって1日何回もカナビスを吸っているような例外的な超ヘビーなユーザーが選ばれる。

また、カナビスの禁断症状とアルコールやタバコの禁断症状を直接的に比較することは意図的に避けて、ごく普通のユーザーでも簡単にカナビスの禁断症状に陥るような一般論に仕立てあげている。当然、マスコミはそのように報道する


●例えば、
2001年の研究 では、14年間1日平均4回カナビスを吸っている超ヘビーなユーザー12人を対象に、最初の1〜5日はカナビスを吸い、6〜8日目は中断し、9〜13日は再び喫煙し、14〜16には再び中断してもらって調べたところ、中断期には、顕著な食欲の低下、睡眠困難、体重減少、カナビスに対する渇望が見られたとしている。

しかしながら、この研究で最も不可解なことは、中断期の変化を被験者の前後と比較しているだけで、同じ実験をタバコやアルコールの常用者に対しても同時に行ってそのデータと比較しようとしていない点にある。一般の人のバランスある理解を得ようとすれば、カナビスの中断期の状態をタバコやアルコールあるいはカフェインの中断期の状態と比較しなければ説得力がないが、この研究ではそれを無言で避けている。


●また、禁断症状の研究では対照群を使ったものはほとんどなかったが、2008年1月になって、タバコの禁断症状と対照比較した小規模の 研究 が発表された。この研究では、カナビスとタバコを常用している12人を対象にして、いろいろな順序でカナビスまたはタバコの一方、あるいは両方同時に中断させて、生理検査とイライラや睡眠の困難さなどの聞き取り調査で禁断時の症状を調べている。

その結果、カナビスまたはタバコを単独で使っている人の場合の禁断症状の程度は同じようなスコアで、タバコの中断では不安や怒りなどの気分障害が多く見られたのに対して、カナビスの場合は睡眠障害が多かったと報告している。

この研究の問題の一つは、カナビスとタバコを併用している常用者だけについてしか取り上げておらず、タバコを吸わないカナビス・ユーザーについては何も調べていないことが上げられる。

また、この研究では中断期間を5日間に設定しているが、タバコの長期間常用者では中断後の切望感が数年も続くこともあり、このような短期間では禁断による影響を十分に反映していない可能性もある。また、禁断症状に簡単に影響を与えるアルコールの使用状況については何も触れていないが、アルコールはカナビスの依存性を高める ことが指摘されており、それが影響している可能性もある。

IOM報告 でも、タバコを試した人の約32%がタバコに依存するようになるのに対してカナビスの場合は9%と書かれているように、実世界においてはカナビスとタバコの中毒性がかけ離れていることは明白な事実だが、この研究のような限られた条件の小規模実験で得られた結果がそのまま全体に通用するかのように主張するのは、境界条件を無視した誇張で科学的にも正しくない。


●カナビスで禁断症状が出ることはそれほど頻繁でないために治療法まだ十分に研究されていないが、現在、リチウムや経口THC(マリノール)を使った方法などが報告されている。

2008年2月に発表されたニュージランドの 予備研究 では、カナビスを毎日9年以上使っている成人で治療を希望している20人を対象に炭酸リチウム500mgを1日2回7日間投与して、禁断症状の身体・精神スコアをモニターし、14、28、90日後にもスコアを集めるとともに、尿検査を実施してカナビスの使用状況を調べている。その結果、88%の人がカナビスを使う頻度が減り、全体の29%の人がカナビスを全くやめることができたとしている。

また、2007年1月のアーカンサス大学の 研究 では、8人のカナビス常用者を対象に、40日間に3回5日の中断期間をはさんで実験が行われた。中断期間には、1日3回、プラセボ、10mg(1日30mg)、30mg(1日90mg)のマリノールのいずれかがが被験者与えられ、期間以外はいつも通りにカナビスを吸うようにして、中断期の症状の変化を比較した。その結果、経口THCが少ない量でも禁断症状の改善が見られたが、量が多い場合にはさらに大きく改善し、その後のカナビスの使用量も減った。

いずれもまだ初期的な実験に過ぎないが、特に経口THCを使う方法はカナビス入りのクッキーなどに置き換えることができると思われるので手軽に試すことができる。確かに、カナビスを食べた場合には効果が持続している間はカナビスをそれほど吸わなくなる。クッキーを作る際には、効力を平均化して長時間にわたって吸収されるように加工すればより好ましい結果が得られるだろう。