カナビスは麻薬である


神話
日本の法律では、カナビス(カナビス)もアヘンも覚醒剤も麻薬として扱われているので、カナビスが麻薬であることは明らかである。


事実
「麻薬」という言葉は、行政的な観点から作られたもので、科学をベースにした薬理学の分類を示すものではない。それは、1930年(昭和5年)に、「麻薬」という言葉がつくられた経緯を見れば明らかだ。

当時の経過については、厚生省の保見吉亮という人が次のように書いている。
……こんなぐあいで、数年を経るうち、ジュネーブの第二アヘン会議条件の批准実施となり、対連盟の報告事項も増えてきて、単なる輸移出入を主体とする省令だけでは不完全となったので、根本的に取締るべき新しい規則を初めてつくることになった。 ……元厚生次官の亀井孝一氏(後の衆院議員)、松尾、安香両技師、諸富技手、それに課の主任岡本と私が集まった。

……そもそも第一にこれらの薬品の総称から議題とし、当時外務省公文で唱われていた「危険薬品」「麻酔薬」「アヘン類似薬品」等といろいろな名称が出た末、亀山氏の意見として、新しい文句で「麻薬」ということに落着いた次第だったが、公布されてからも「麻薬」とは何だ、「アサグスリ」とは奇々怪々だなどと業界紙に大いに取り上げられ、さわがれたものである。……
麻薬への挑戦(久万楽也 、現代書房、1966)
この文からもわかるが、1930年という年は、日本のドラッグ史の大きな転換期であった。日本では、はじめて系統だった麻薬取締りの法律「麻薬取締り規則」がつくられ、それに伴いインド産のハシシが麻薬としてはじめて規制されたのである。当時は日本産のカナビスは含まれていなかった。また、1948年にマッカーサーの命令で事務的に「カナビス取締法」が制定されたが、その後しばらくは、日本のカナビスにTHCが見出されたことはなかった。

「麻薬」が科学的な用語でないことは、英語に対応する言葉がないことからも分かる。無理に訳せば Narcotics (麻酔薬)ということになるだろうが、上で引用したように、「麻薬」という言葉自体が「麻酔薬」という言葉を退けて作られたことを考えればおかしなことになる。内容的に最も近いのは、Controlled Substances (規制薬物)に相当するが、一般的に使われることはほとんどないし、そのように訳すこともない。

アメリカでは、嗜好的に使われる薬物は普通 「ドラッグ」 と呼ばれている。ドラッグには、カナビスばかりではなくアルコールやタバコなども含まれるのが常識だが、日本の麻薬にはそうした観点はない。そもそも 「精神に影響を与える」 という意味からすれば、アルコールやタバコはまぎれもなくドラッグであるが、日本では、社会的・行政的な事情から恣意的に麻薬からは全く切り離されている。

また、ドラッグを取締まる法律も、麻薬及び向精神薬取締法、カナビス取締法、あへん法、覚せい剤取締法などに分かれており、この対象を一括りにして麻薬というのはいかにも乱暴で混乱の原因にもなっている。実際、かつて厚生省では、「覚醒剤とマリファナは麻薬ではない」 という見解を示していたこともある。

このように 「麻薬」 という言葉は、日本独特の恣意的なレトリックであって、薬物の実態を示したものではない。これは、1930年代にアメリカでカナビスが禁止されるときに、それまで広く使われていたカナビスという言葉を使わずに、ほとんど知られていなかった「マリファナ」という用語を持ち出してきてリーファー・マッドネス・キャンペーンで弾圧を始めたのとよく似ている。当時は アメリカ医師会 ですら、マリファナがカナビスのことだとは知らなかったほどだ。

リーファー・マッドネス・キャンペーンでどうなったか
リーファー・マッドネス以前 リーファー・マッドネス以後
歴史名 --- カナビス 新名称 --- マリファナ
実験的にオピアム中毒の治療に使われた 習慣性のある危険なドラッグ
医学的には坑けいれん薬と認識されていた 制御不能の筋肉弛緩を引き起こす
医学的には鎮静剤と認識されていた 暴力行為や殺人を引き起こす
心の病の治療薬として使われていた 精神異常を引き起こす
神経の緊張をほぐす治療に使われた 危険な興奮剤で、若い女性が好んで窓から飛び降りる
無害な医薬品 危険なドラッグで、とぐろを巻いたガラガラ蛇のように獰猛になる
ユーザーは患者と呼ばれた ユーザーはドラッグ中毒と呼ばれた

このような手法は、ソーシャル・エンジニアリングと言われるもので、社会をコントロールしようとする権力者の常套手段になっている。

まともな定義もない「麻薬」という言葉を使っていると、現実を科学的・客観的にみることも考えることもできなくなる。カナビスを麻薬と決めつけるだけですべて分かったように思い込むのは、その人がマインドコントロールで思考停止になっている証拠である。こうした言葉による情報操作は、現在のアメリカを見てもわかるように、結果的には社会により大きな混乱を引き起こし、社会や個人や家族を破壊する。

参考:ファンシーズ・リーフ 第6章 日本の状況