アメリカ
医療カナビス法を審議する州が急増
Source: Drug War Chronicle, Issue #585
Pub date: May 15th, 2009
Medical Marijuana at the Statehouse -- The State of Play
http://stopthedrugwar.org/chronicle/585/medical_marijuana_statehouse_update
アメリカでは現在、カリフォルニア州をはじめとして13州で医療カナビスが合法化されているが、今年の終わりまでにはさらに数州がそれに加わってくる可能性がある。
今年は、これから法案の提出が見込まれている州も含めて、医療カナビス法案が19の州議会で審議されている。大半はやっと審議までこぎつけたばかりの状態で成立まではとでもおぼつかないが、少なくとも5州では有力な進展を見せており、反対する議員も一握りで知事も拒否権を発動せずに署名に応じる意向を示しているところもある。
全体的にみれば、医療カナビス問題は州議会のごくありふれた審議対象になってきている。すでに医療カナビスが合法化されている州と現在審議されている州を合わせると30以上にもなる。まだ政治課題として取り上げられていないのは主に南部の州で、ロッキーマウンテンの州では半分、中西部では進展状態は遅いものも着実に増加している。また、北東部の州ではここ数年議論が非常に活発化してきている。
今年の成立の可能性
各州の情勢の成り行きを正確に予想することは非常に困難だが、本記事では、州議会の歴史、専門家の分析、仲間や一般の意見などを参考にして成立の可能性を探ってみた。
法案は提出されたが、すでに否決されている州:
- アイオワ (IA)
- カンサス (KS)
- サウスダコタ (SD)
法案は提出されたが、今年は成立する見込みがほとんどない州:
- アラバマ (AL)
- コネティカット (CT)
- マサチューセッツ (MA)
- ミズリー (MO)
- オハイオ (OH)
- テネシー (TN)
- テキサス (TX)
法案が提出されたばかりか、または提出が予定されているが、今年は成立する見込みがほとんどない州:
- デラウエア (DE)
- アイダホ (ID)
- ペンシルバニア (PA)
- ウイスコンシン (WI)
今年中に成立することが期待できる州:
- イリノイ (IL)
- ミネソタ (MN)
- ニューハンプシャー (NH)
- ニュージャージー (NJ)
- ニューヨーク (NY)
- ロードアイランド (RI)
各州の詳細
今年中に成立することが期待できる州のすべてに関わっているマリファナ・ポリシー・プロジェクト(MPP)のダン・バーナッス副コミュニケーション・デレクターは、「2、3の州では非常に有望です。医療カナビス活動家たちは、これまで何度も州議会に苦杯を味わされてきましたが、今年はこれまでになく成立する可能性が高くなっています」 と語っている。
しかし細かく見ていくと、情勢は楽観を許さない。
イリノイ州では、上下両院の同僚法案が本議会での採決を待っている状態だが、MPPによると、「知事の承認を求めるほどの賛成を得るにはまだ不十分」 だと言う。今回と同様の法案は2年前に上院で否決されているほか、下院ではこれまでに本議会での採決さえ行われたことはない。
ミネソタ州では、先日下院の医療カナビス法案が最後の委員会を通過して本議会に送られている。上院ではすでに通過しているが、共和党のティム・ポウレンティー知事は拒否権の発動をちらつかせて牽制している。
ニューハンプシャー州では、3月に下院をスムーズに通過し、上院でもそれに修正を加えて4月に通過している。しかし、民主党のジョン・リンチ知事はこの修正に強く難色を示して、上院法案は受け入れ難いと表明している。下院でも上院の修正案に反対する投票を行い、知事が受け入れることのできるような文案に直すカンファレンス委員会の設置を呼びかけている。
ニュージャージー州では、2月に上院を通過したものの下院では委員会での審議が棚上げにされた状態になっている。だが、今年の後半には公聴会も予定されており、それが済めば議会も動き出すことが期待されている。
ニューヨーク州では、上院と下院で同一の法案が提出されている。下院は昨年中に通過しているが、共和党が主導権を握っていた上院では何も進展しなかった。しかし、現在では両院ともに民主党が多数を占めており、民主党の知事も前向きな姿勢を示していることから、成立する可能性が大きくなっている。
ロードアイランド州では、すでに医療カナビスは合法化されているが、今回は認定患者にカナビスを配布する「コンパッション・センター」の設立を求めている。4月に上院を通過し、現在は下院での審議を待っている。
正念場
MPPのバーナッス氏は、知事が乗り気ではないミネソタ州やニューハンプシャー州の例を上げて、「多くの法案が正念場を向かえています。例えば、ニューハンプシャーでは上下両院を通過しているのですが、知事を軟化させるために、現在、下院では患者さんたちと協力しながら最終法案の調整にあたっている状態です」 と言う。
「ミネソタでも、ポウレンティー知事は医療カナビスに反対していますが、医療カナビス支持者たちは懸命に働きかけてきたこともあって、知事もこの数年は医療カナビスについて学ぶ機会を持っています。ですが今だに方執行当局寄りの姿勢を変えていませんが、医療カナビスに対する当局への信頼が薄らいできていますので、知事の考えが変わることも期待できます。」
審議が停滞しているニュージャージー州では、ドラッグ・ポリシー・アライアンス(DPA)とMPPとNORMLが協力して働きかけているが、審議入りはタイミングの問題になっている。ニュージャージー医療カナビス連盟のケン・ウォルスキー代表は、「法案は下院の衛生委員会での公聴会が6月に予定されていますが、秋になる可能性もあります」 と言う。
「実際には、委員会の議長を務めるハーブ・コナウエイ博士(デルラン、民主)の決断にかかっています。彼の話しによると、議員たちは11月の選挙のことで頭が一杯で、論議の多い医療カナビス法の問題には神経質になっているとのことです。従って公聴会は6月でなければ選挙後になると思います。」
有望なニューヨック
ウォルスキー代表は、議員たちが医療カナビス法を論議が多いと思っているとしたらそれは誤りだと言う。「医療カナビスを支持することは政治的にはポジティブな見方をされるようになってきているのです。議員たちがどう考えようとも、そのことは世論調査の結果が能弁に語っています。病気に苦しんでいる患者さん第一に考えて再選の臨めば、落選の憂き目にはあうようなことはないと思います。」
NORMLのアレン・ピエール氏は、「ニュージャージーでの取り組みは長くつらいものですが、結果がどうなるかは五分五分の状態です。9月までは議会での議論が続きそうですから両陣営ともロビー活動をする時間がたっぷり残されているわけですが、コルジーン知事は署名する意向を示していますので大きな弾みになると思います。私は、最終的には成立すると考えています」 と話している。
「ニューヨークに関しても、現在では主だった政治指導者がまとまり始めています。確かに、この先の進捗状況を見通すことは困難ですが、ニュージャージーの場合と同様に知事が署名する意向を口にしていますので、またとない絶好のチャンスが回ってきています。」
「ニューヨークでは、ここ数年DPAがアルバニーを中心に活動し、MPPも有力なロビイストを使って議会内で説得を続けてきましたが、ニュージャージーと同じように支持者たちは5年〜7年も活動を積み重ねてきたのです。」
MPPのバーナッス氏も、「ニューヨークの状況はいままでとは全くちがって有望です。これまでは上院の主導権が共和党に握られていたことが問題だったのですが、現在は民主党に代わっています。このことで上院を通過する見込みが大きくなりました。下院はすでに非常に前向きです」 と語っている。
住民投票よりも州議会
住民投票と比較すれば、州議会でのプロセスは苦痛を伴うほど時間がかかりフラストレーションで一杯になるが、州議会を通じて医療カナビス法が成立することが実証されており、今後はますます住民投票よりも中心になって行くに違いない。それは、成立してからもさまざまな妨害をうける住民投票 よりも、議会の決定は、警察も含めてすべての機関に受け入れられるからだ。
1996年にカリフォルニア州で医療カナビス215条例が成立してから13年足らずで、現在では13州が医療カナビスを合法化し、アメリカ人の4人に一人がその恩恵を受けられるようになっている。今後1年以内にもそのパーセンテージはさらに増加し、それ以降も増え続けていくことは間違いない。
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