カナビス根絶作戦という巨大浪費


Angela Macdonald

Source: Examiner.com
Pub date: 24 July 2009
The great marijuana money mistake
Author: Angela Macdonald, NORML Examiner
http://www.examiner.com/x-17593-NORML-Examiner~
y2009m7d24-The-great-marijuana-money-mistake


カリフォルニア州12億7000万ドル
オクラホマ州2000万ドル
コロラド州250万ドル
ネバダ州60万ドル
ニューメキシコ州20万ドル
・・・

総額14億8000万ドルのカナビス。たったこの1週間でアメリカ政府と州政府がカナビスの根絶作戦によって失われた金額だ。しかもマスコミに報道された分だけでだ。

『全米警察24時コップス』 などのテレビ番組を思い出してみればわかるように、引き抜かれた植物は燃やされて捨てられてしまう。子供たちの成長や教育や健康には何の役にも立てずに燃やされてしまうのだ。

政治家たちは事あるごとに子供を守れと言う。云く、ドラッグ使用という悪魔から子供たちを守る必要がある。云く、近所の小児愛者から子供を守る必要がある。頭を守るためにヘルメットを用意しろ、車の座席ではチャイルド・シートを用意してシートベルトをしろ、と言い立てる。

だが実際には、そうした保護もろくに用意できていないのに、そうした問題を生み出す元凶になっている穴をさらに深く堀り続けているのだ。

アメリカは、他の国がそうした問題をどのように解決しようとしているか見ようとはしない。アメリカこそオールマイティの国で、どの国よりも進んでいると自惚れているからだ。もしこの国が他の国から学ぼうとする謙虚さがあれば、自分たちが進歩的な国に住んでいるなどという思い違いをせずに、本当に進歩的な国になっているはずだ。

都合のいい道徳観を持ち出して、巨大な可能性を秘めているカナビス産業を押し潰しているという事実を無視して、いったいどこが進歩的と言えるだろうか?

私の道徳観は合衆国憲法に強く根ざしたもので切っても切れないが、そもそもわれわれの憲法には植物のことなどどこにも書かれていないのだ。アメリカを建国したピューリタンの社会でさえも、自分の土地に何を植えるかについてあれこれ指示するのは政府の仕事ではないと強く考えていた。

建国の父たちはヘンプから作った紙に憲法の草案を書き、自分たちもカナビスを栽培していたと伝えられているが、もしそれが本当ならば、政府が市民に課した税金を浪費しているのを見て嬉しく思うだろうか?

われわれは、物を買い、車を運転するのに税金を払っているばかりではなく、収入にはその2倍も3倍もの税金を払っている。それなのに、政府は財政不足だとしてヘルスケアの改善や教育への補助、裁判のリソースを切り詰めようとしている。

こうした現実を見つめれば、この1週間だけで政府によって14億8000万ドルもの大金が失われたのはどういうことなのかよく考えてみる必要がある。

カリフォルニア州の報告書 では、カナビスを合法化して課税すれば年間14億ドルの税収が見込まれると報告しているが、それに匹敵する額がたった1週間で失われるとは…

財政赤字のカリフォルニアでは、特に地方の保安官の数が減って広大な森林公園の見回りまでできなくなっているが、そこにつけ込んでメキシコのギャングたちが不法移民を使ってカナビスを大々的に栽培するようになった。

同じような動きは以前からあったが今年はその勢いが増し、連邦麻薬取締局(DEA)が摘発したカナビスの本数は作戦半ばにして過去最高を記録することが確実になっている。


Mexican growers having big pot year in state
Sanfrancisco Cronicle, 2009.7.28 (この記事には興味深い写真も掲載されている)

摘発量は2000年に比較すると20倍にもなるが、一方では、カナビスの入手しやすさや値段はほとんど変化していない。このように根絶作戦は本来の目的には何の効果も上げていないが、栽培地をより環境破壊を受けやすい森の奥地へと押しやってしまうという本末転倒な状況を作り出してしまっている。

問題は、なぜギャングたちがそこまでしてカナビスを栽培しようとするのかという点に行き着く。結局、儲かるからなのだ。つまり、禁止法が違法栽培を助長している。これは1920年代の禁酒法で違法市場が栄えたのと同じだ。

この問題を解決する唯一の方法は、カナビスを合法化して規制管理するしかない。このことは、ワインのぶどう、ホップ、タバコなどが森の中で秘密に栽培されたりしていないことからも明らかだ。(Here we go again…  MPPブログ 2009.7.28)

結局カナビス禁止法は、子供たちや社会を守るためなどではなく、禁止するために働いている組織や刑務所産業複合体のためにある…

実際のところ、オバマ政権のドラッグ政策にはそのような気配が色濃く出ている。オバマ政権はドラッグの治療や防止に重点を移すと盛んに言ってきたが、2010年のドラッグ関連予算全体の割合では、治療や防止にための予算が3.3%減って、法執行関係が65.6%にまでなっている。この割合は、ブッシュ前政権の62.3%よりも高くなっている。(Drug war's wrong focus Baltimore Sun July 27, 2009)

この事実をポジティブに解釈すれば、オバマ大統領が目指しているドラッグ政策に道をつけるために、当面、法執行関係に予算を多く割り当てることで批判をかわすためなのかもしれない。

それは結局のところ、禁止法執行側の目的が自分たちの仕事が無くならないようにすることだからだ。この点では、かつてクリントンが大統領だったときに、マリファナ喫煙経験を攻撃され、 「吸ったが吸い込んではいない」 と詭弁を使ってレーガン時代の何倍もの予算をドラッグ戦争に貢ぐと、税金という確実な資金を得た反対ロビーからの追求はなくなったことからもわかる。

だがこうした懐柔策は、治療や防止に重点を置いた政策が根付いてくれば様相が変わてくると思われる。実際、上に引用したBaltimore Sunで政府に批判的な記事を書いたのは、以前にホワイトハウス麻薬取締政策局(ONDCP)のスポークスマンだった人で、いまではドラッグ治療関連のロビー活動をしているからではないかと 言われている

一方、オバマ政権は製薬業界と癒着しているという指摘もある。

この冬に流行するとされる豚インフルエンザ対策として、ホワイトハウスは18人の製薬会社、健康保険会社、病院業界などの代表を招いて今後のワクチンの大規模接種について話し合った。

その中でホワイトハウス側は、ワクチンの臨床試験を十分に行っていては時間がかかって間に合わないので、もしワクチンの副作用が出て国民が製薬会社を提訴しても製薬会社が有罪にならない免責を与え、しかも秋には6〜18歳の全国民に対してワクチンの予防接種を義務づける方針を固めたと言う。(インフルエンザ強制予防接種の恐怖 田中宇の国際ニュース解説 2009年7月29日)

こうした癒着関係からすれば、今後オハマ政権のドラッグ政策が治療や防止に重点を移して行くことは十分に考えられると同時に、製薬業界に打撃になるカナビス合法化に反対しても何ら不思議ではない。結局、ここでもやはり、カナビス禁止法は経済の問題だと言うことになる。