揺れ動くカナビス世論

カナビスの本当の経済的受益者は誰か?

Pub date: Feb 10, 2005
Author: Dau, Cannabis Study House


オランダのカナビスの生産、卸、小売、消費、というサークルは一見して単純でスムーズに動いているように見えるが、実状はメリーゴーランドのように上へ下へとふらつきながら回っている。多量のハシシやウイードをいくつもの棚や場所に隠して商売をしていた時代が過ぎた今日でも、その実態は何ら変わっていない。  ---ダッチ・エクスペリエンス


カナビスによって知覚が開かれ楽しみが増えてストレスも解消されるという人がいれば、悪霊が入り込み精神が堕落するという人もいる。病気の治療に役立つという人もいれば、精神病になるという人もいる。環境破壊から地球を救ってくれるという人がいれば、邪悪な草は根絶せよと主張する人もいる。

人間は有史以来のカナビスを利用しさまざまな恩恵を受けて実に良好な関係を保ってきたが、不幸なことにここ百年で社会が分裂症を起こすほどにその関係はこんがらがってしまった。

何故、このような状態になってしまったのだろうか?  結論からいえば、結局、経済や利権の問題に帰着する。社会悪だの健康を害するだの犯罪の温床だのいろいろな理屈が語られるが、そうした類の「社会正義」は本当のところはオブラートに過ぎない。足元にはいつも経済が横たわっている。そのことは、カナビスによる一番の経済的受益者は本当ところ誰なのか考えてみればわかる。

カナビスを擁護する人の側からみれば、経済がその主要な動機ではない。例えカナビスが合法化されたとしても大半が消費者であり、経済的な利益を得るのは栽培や流通に係わる一部の人だけに過ぎない。しかもカナビスが誰れでも簡単に栽培できるようになれは市場を独占して巨利を得るのは不可能だ。激しい競争に生き残ってもそこそこの利益しか得られない。

カナビスに反対する人たちにとってはどうだろうか? カナビスが合法化または根絶されてしまったらその人たちの生活がどうなるか? 密売で巨大な利益を稼いでいる隠れ反対派のマフィアはとりあえず別にしても、取締りに携わる人たちは職を失い、アメリカの刑務所は空になって経営破綻し、ドラッグ・テストの薬品業界は売り上げが激減し、カナビスの害を言いたてるために高給で働いている官僚や学者や研究者たちは不要になる。 (ドラッグ・ヨーロッパ会議 参照)。


彼らは、本当は合法化も根絶も望んでいない。害や根絶を叫ぶことで手っ取り早くお金が得られるから派手に叫んでいるだけなのだ。かつてクリントンが大統領だったときに、マリファナ喫煙経験を攻撃され、 「吸ったが吸い込んではいない」 と詭弁を使ってレーガン時代の何倍もの予算をドラッグ戦争に貢ぐと、税金という確実な資金を得た反対ロビーからの追求はなくなった。

「カナビス問題」の本質は、カナビスを擁護する人たちの側にあるのではなく、実際のところカナビスから最も経済的利益を得ている反対する側の人たちのところにある。彼らは金銭のためにはどんな些細なことでも大声をあげる。アルコールでどんなに殺人や精神症が多発しようと全く気にする様子もなく、カナビスに精神症が増えたという研究が出ようものなら些細なものでも「社会正義」を振りかざして大騒ぎする。

確かにまともな研究者もいる。1972年、ニクソン政権の要請でアメリカで過去最大のマリファナ調査が行われた。その委員会を率いたレイモンド・シャーファーは、当初マリファナの悪害を信じていたが、調査するうちにそのような実態がないことに気付き正直にそれを 「マリファナ、誤解のシグナル」 という報告書にまとめた。しかしニクソンはそれを無視しただけではなくシャーファーを解任した。反対派の利益に逆らう研究者は職も奪われる。

しかし、21世紀に入り少しずつ様子が変わってきた。産業用カナビスや医療カナビスなどで利益をめざす業界が徐々に力をつけ、無差別的な禁止規制が機能しなくなってきた。各国がそれぞれのスタンスを取るようになり、カナビスを単一条約で世界均一に規制してきた仕組が崩壊し始めている。対立の軸は以前のように 「安全や倫理」 といった単純なものではなくなり、 「経済や環境や医療」 といった軸も加わって構造が複雑になってきた。

現在ではかつてのような明らさまな嘘や科学的誇張は通用しなくなってきた。反対派の「社会正義」はますます説得力を失い、スキャンダルの暴露に頼らざるを得ないようになってきている。クリントンもそうだが、最も合法化に近付いたカーター政権を失墜させたのも司法長官の喫煙容認スキャンダルだった。昨年イギリスでカナビス分類のダウングレードを行ったデービット・ブランケットは愛人スキャンダルで責任を取らされた。

こうした隘路を踏まえていろいろな文献を読むと、カナビスは、人間の歴史や文明や欲望などのありとあらゆる側面を居ながらにして目の前に展開しくれるメリーゴーランドでもある。