From Hempire Cafe

ドラッグ戦争は本当に正いのか?

アメリカ保守政治活動カンファレンス

Source: Newsday
Pub date: 12th February 2006
Subj: War on Drugs - Is It Really 'Right'?
Author: Ellis Henican
Web: http://www.thehempire.com/index.php/cannabis/news/war_on_drugs_is_it_really_right


ドラッグ戦争が保守層 (right wing) の専売特許だと保守的に思っていないだろうか?

多額の税金を使いながら何にも進展していないのではないか?  政府のエージェントが国民のプライベートな生活に送り込まれているのではないか?  刑務所に入れられている百万人もの男女の大半は暴力とは関係ないのではないか?  こうしたことは保守の理念としている価値観を少しも高めていないのではないか?

もちろん答えはすべて、その通り。

一見すると有り得ないような気がするかもしれないが、今では、リベラルな左側 (left wing) の人たちだけがドラッグ戦争に異議を唱えているわけではない。アメリカ保守派の最も精力的な活動家や知識人たちの一部は、公然と、「ドラッグ中毒に対して、旧態依然とした「永遠にブチ込んでおけ」というアプローチで対処していてもいいのか?」 と問い始めている。

先週、ワシントンで開催された保守政治活動カンファレンス(CPAC, Conservative Policy Action Conference)の年次大会には何千人もの保守派の活動家や家族が集まり、お互いを激励しあい、家族同士の親睦を深めた。参加者たちはいつもの保守派の長談義に花を咲かせ、違法移民に警告を発し、リベラルなメディアをなで切りにし、断固たる態度でテロ戦争を遂行せよ、と声をからして主張した。チェイニー副大統領やカール・ローブ補佐官も加わり皆を熱狂させていた。

「保守主義こそがアメリカで最も有力な政治信条なのだ」とローブは満面の笑みで宣言していた。

しかし、この熱狂的な保守派の圧力団体の面々は、広い会場で予想もしていないメッセージを聞くことにもなった。アメリカが過去35年も遂行してきたヘロインやコカインやマリファナなどのドラッグ撲滅キャンペーンに厳しい疑問が投げかける声が響き渡ったのだ。CPACの大会でこれを予想していた人はいただろうか?

ドラッグ政策アライアンス(Drug Policy Alliance)を主催し、アメリカのドラッグ法改革の見えざる騎手と呼ばれているエサン・ナドルマンが演壇からさまざまな疑問を発した。プリンストン大学教授でもあった彼は、国中で医療マリファナ運動を推し進め、ロックフェラー時代から続くニューヨークの過酷なドラッグ法を緩和しようと闘ってきたキー・パーソンでもある。

ナドルマンは、厳しいドラッグ法に歴史的嫌疑を投げかけた保守派グループの先例をあげて、「ミルトン・フリードマンとウィリアム・F・バックリーの二人は20世紀後半で最もすぐれた保守派の思想家ですが、二人とも、ドラッグ法が劣悪で保守の倫理観に反すると考えていると明言しています」 と語り、これに対してわれわれ保守派は賛同できないとでも言うのでしょうか、とたたみかけた。

「個人の自由。財政規律。自らの意志決定に責任を持つ大人。政府の世話を四六時中期待しないこと。これが保守主義の神髄なのではないか?」 「それなのに、何故、アメリカの大人が何を吸い何を飲むかまで政府に決めてもらって、犯したら何十年も刑務所に入れるぞという脅しの法律を執行してもらわなければならないのか?」

保守でも守旧派の人たちは、行き過ぎた、とあきれ返り、ナドルマンのグループは、熱烈な反ブッシュで知られる国際投資家ジョージ・ソロスから資金提供を受けているからだと批判する人もいた。ナドルマンが最後に予定していた討論は、反対派の拒否にあい流れてしまう始末だった。反ドラッグ運動の先頭に立つドラッグ・フリー・アメリカのカルビーナ・フェイは議事進行係も改革を支持してグルになっていると糾弾した。

反ドラッグ派は、フェイの代理としてドラッグ戦争の擁護者ゲイリー・コッブを立てて 「保守派のドラッグ政策とは何か? ドラッグ戦争に関する小討論」 と題する演題で巻き返しをはかっていた。

プレゼンテーションを終えたナドルマンは、「溝はますます大きくなっています」 と感想を述べていた。多くの問題と同様に、社会保守派と自由保守派のドラッグ問題に対する見方も極めて異なっている。

しかし、ナドルマンは、「Just Say No」 や 「永遠にブチ込め」 政策に辟易とした若い保守層が育ちはじめており、刑務所よりも治療をといった議論や反ドラッグの説教に代えて実際に生命を救うことをめざした「害削減」運動に対して、よりオープンなスタンスを取るようになってきていると指摘していた。

「彼らとこうした議論ができることは本当にエクサイティングです。」 とナドルマンは加えた。