オランダ

カナビス・ベース医薬品の開発を推進

Source: Reuters
Pub date: 07 Nov 2007
Subj: Dutch want cannabis registered as regular medicine
Author: Emma Thomasson; Editing by Robert Hart
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12994


オランダ政府は、7日、カナビスをベースにした医薬品の開発を促進して科学研究を実施し、5年を目処に広く薬局で利用できるようにしたいと発表した。

オランダは、2003年に、癌の慢性痛・吐き気・食欲不振、HIV、多発性硬化症の患者を対象に、カナビスを処方薬としては世界で初めて薬局での販売を開始している。

アブ・クリンク保健大臣は、オランダの会社にカナビス・ベースの医薬品を開発するまたとない機会を提供することで、「カナビス医薬品を通常の認可医薬品として扱えるようにする」 と語っている。

売春やコーヒーショップでの嗜好カナビス販売についても認めているオランダは、社会改革のパイオニアとして長い歴史を持っている。また、安楽死を認めた最初の国としても知られている。

オランダ政府は、既に、研究所スタイルの厳重に管理された栽培場で特定の品種のカナビスを栽培して薬局に供給しているが、その他にもオランダのエコー製薬でカナビス・ベースの医薬品の開発を進めたいとしている。

「開発には数年かかると思われるが、その過程で、カナビス医薬品についての科学的データを収集し効能と安全性のバランスを見極めたい」 と大臣は話している。

保健省の広報官によると、オランダにはカナビスを使っている患者は非常に多いが、その多くがコーヒーショップで購入しており、薬局で薬として入手している患者は1万5000人以下にとどまっているために、今年度は売れ残りで20万ユーロの損失が出ている。

エコー製薬では第1弾として、9月にカナビスの活性成分の入った舌下型錠剤ナミソールの出荷を開始しているが、治験は来年から始まることになっている。ナミソールは処方医薬品扱いで、クリンク大臣は徐々に薬局の医療カナビスと置き換えたい意向を示している。

カナビス・ベースの医薬品としては、イギリスのGW製薬が製造しているカナビス舌下型スプレー・サティベックスが2005年にカナダで世界ではじめて認証され、多発性硬化症患者の治療に使われている。

アメリカでも昨年、サティベックスの臨床試験の開始が認められているが、今年の7月には、ヨーロッパでの認証で臨床試験の不足が指摘され、GW製薬はいったん申請を取り下げている。

カナビスの医療使用には長い歴史があり、中国では5000年前に薬草として使われていたことが知られている。また、19世紀にはイギリスのビクトリア女王も月経痛の治療にカナビス・チンキを使っていたと言われている。

だが、カナビスは薬として標準化が難しく、カナビスよりも強力な合成医薬品が開発されたことから、20世紀に入ると人気がなくなった。

カナビスの医療利用については、一部の人たちから科学的な研究が不十分だという批判も出ている。また、欝や統合失調症のリスクが増えると指摘する医師もいる。

エコー製薬は、アムステルダム近郊にあるカナビス・ベースの医薬品に特化した医薬品開発企業。

会社で初の製品になるナミソールは、カナビスから抽出した純度の高いTHCを含んだ錠剤で舌下で溶かして摂取する。会社の サイト には、発現はハーバル・カナビスをバポライザーで摂取するより若干遅い程度で、血中濃度は33分でピークに達し、下がってからも長時間持続する。また、吸収効率(バイオアベラビリティ)については1.5倍優れていると書かれている。1錠中のTHCは1.5mgで、20錠でパッケージされている。


GW製薬のサティベックスも舌下からスプレーで投与するが、カナビス抽出液にアルコールを加えているのでアルコールの刺すような刺激や舌が白くなる副作用も 報告 されている。また、味についても、ペパーミントでごまかしているが、基本的に味が悪く気持ちが悪くなる人もいるほか、液体が舌下からこぼれ出しやすいために胃に流れることもあると 指摘 されている。また、喫煙の迅速性に比較して 発現に20分 ほどかかることも大きな欠点となっている。

これに対して、ナミソールは摂取しやすく発現も早いうえに持続性も優れている。また、カナビノイドの含有成分構成についても容易に変更できるとされ、製造コストの点でもスプレーよりも安くできるという優位性がある。こうした点からすれば、現在のところナミソールが最も将来性のあるカナビス・ベースの医薬品だと思われる。

舌下から投与する方法は舌の裏側の毛細血管が浮き出していて吸収力に優れているからで、カナビス・チンキを滴下したり、ハシシを粒にまるめて歯の裏側に押し込んで少しづつ溶け出すようにして効力を持続させるような使い方が昔から行われてきた。

オランダ保健省医療カナビス事務所(OMC) は、今年の2月、医療カナビス(ハーバル・カナビス)として、従来のベドローカン(THC18%)、ベドノビノール(THC11%)に加えて、多発性硬化症患者向けにハイになりにくいベディオール(THC6%、CBD7.5%)の販売も開始し、品揃えを強化している。

Specifications Bedrocan, Bedrobinol and Bediol
オランダ、医療カナビスの販売継続へ、販売量増加と外国からの購入打診も  (2007.10.13)