イギリスの2研究

高効力スカンクの蔓延説を全面否定

THC20%以上のスカンクは全体の4%のみ

Source: The Guardian
Pub date: September 17, 2007
Title: Skunk strength has doubled, studies suggest
Author: Alan Travis
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12832


イギリスの有数の研究機関が実施した押収カナビスの効力に関する調査で、現在イギリス国内で売られている「スカンク」の効力は10年前の2倍になっているものの、効力が20倍のスーパー・スカンクがストリートに蔓延しているという最近頻繁に語られている話については、そのような事実はないと退けている。

今年の暮れに出版される予定になっている2件の研究では、双方合わせて警察の押収した約550サンプルのスカンクを分析した結果、いずれもスカンク・カナビスの活性物質であるTHCの平均効力が、1995年の7%から、2005年には2倍の14%になっていると結論を書いている。

しかし、この2つの研究を吟味したドラッグ・シンクタンクのドラッグリンクは、最近のイギリスで普通に販売されているスカンクの効力が30%以上になっているとする主張を全面的に否定する内容になっているとレポートしている。実際、研究の一つによれば、押収されたスカンク全体でTHCが20%を越えるものは4%しかなかった。

今年の初めころから、イギリスのドラッグ市場の主流が従来の20倍も強力なスーパー・スカンクになって、精神病の引き金になっているという主張が頻繁に語られるようになった。こうした情勢を受けて6月には、ゴードン・ブラウン首相がカナビスの法律上の分類をCからより厳しいB分類へアップグレードすべきかどうかドラッグ乱用委員会(ACMD)に諮問するように命じるまでになっている。

内務省のジャッキー・スミス大臣はこれを受けて、ACMDに対して、より強力になった現在のカナビスが精神病に与える影響について見直すように求めている。

ACMDでは、18ヵ月前にもカナビスをC分類からそれ以前のB分類に戻したほうがよいかについて見直した報告書を提出している。そこでは、ハシシや「伝統的」に輸入されてきたハーバル・カナビスの効力には過去10年以上変化はないが、押収されたスカンクやシンセミラの平均効力については2倍以上増加していると結論を書いている。

しかしながら、ACMDの議長サー・マイケル・ラウリン教授は、効力の違うカナビス製品の使用形態に関する情報がほとんど存在せず法律を変えるには十分ではないとして、カナビス使用に対する罰則の強化には反対する決定を下している。

今回の諮問に対しては、ACMDは来年の4月に決定を下す予定になっているが、 最近の証拠によれば、イギリスでは、カナビス栽培場や家庭内栽培が爆発的に広まっているにもかかわらず、スーパー・スカンクに類するものは余り見付かっておらず、大半は、高収量だが効力の低い種類であることが示されている。

2件の未発表研究の最初のものは、法医学サービス・ドラッグ情報部のレズリー・キング元部長が行った調査で、法医学者によって収集された299サンプルを分析している。この結果は、年末にヨーロッパ・ドラッグ監視センター(EMCDDA)から発行されることになっている。

もう一つの研究は、ロンドンのキングス・カレッジの研究チームが実施したもので、ダービーシャー、ケント、ロンドン、サセックス、マージーサイトで警察が押収したスカンクをサンプルに分析している。この研究では、市場に溢れていると言われているような新種の30%以上のスーパースカンクなどは見られず、最大でもはるかに低い24%どまりで、20%を越えるカナビスは4%しかなかった。

また、キングス・カレッジの研究チームは、押収された中ではTHC濃度が3〜4%の伝統的な非スカンク系のハーバル・カナビスが多く、濃度は10年前と変化していないことも見出している。

2年前には、より効力の強いスカンク品種の所持については別に重い刑罰を適応すべきだという動きもあったが、捜査現場の警察官がカナビスの品種まで識別することなどできないという問題が指摘されて却下されている。


この記事の代表的な数字

20倍   新種のスーパー・スカンクの効力は20倍になっているという主張は否定された。
30%   現在のスカンクの大半は30%以上のTHCを含んでいると言われていた。
550   今回の2研究で分析に使われた押収スカンクのサンプル数。
14%   全サンプルの平均THC%
  4%   20%以上のTHCを含むスカンクは、全体の4%のみ。


イギリスで 「スカンク」 と言われているのは、特に強いカナビスの総称で、実際のスカンク系品種のカナビスを指しているわけではない。

スカンク系の品種は、アフガン種、メキシコ種、コロンビア種を掛け合わせて品種改良したもので、他の改良品種よりも特に効力が強いわけでもない。

イギリス政府の 反ドラッグ・キャンペーン・サイト「Talk to Frank」では、スカンクとシンセミラは別のもので、効力が非常に強く人工的に改良されたハーバル・カナビス用の品種などとあからさまな嘘を書き立てているが、これは、実際にはカナビスのことは何も知らないのに、「スカンク」をステレオタイプに仕立て上げることで、危険が増していると自分で思い込んでいることを示している。

最近のイギリスにおける反カナビス・キャンペーンは、ほとんど例外なく「スカンク」神話で構成されている。しかし、反対派は、今回の研究で示されて事実を無視してさらに熱狂的にキャンペーンを展開するはずで、現政権もそれに迎合してくる可能性が高い。

1930年代にアメリカでカナビスが禁止されるときにも、それまで広く使われていたカナビスという言葉を使わずに、ほとんど知られていなかった「マリファナ」という用語にあらゆるネガティブなイメージを貼り付けてステレオタイプに仕立て上げ、リーファー・マッドネス・キャンペーンの弾圧が開始されたが、今回のイギリスも、「スカンク」という言葉を使って全く同じことをやろうとしている。まさに、リーファーマッドネスというほかない。

アメリカでもホワイトハウス麻薬撲滅対策室(ONDCP)のジョン・ウォルターズ長官が、2002年に「効力は、2倍どころではなく30倍にもなっている」 と語っていたが、2007年4月25日にONDCP自身が発表した プレスリリース では、カナビスの効力の上昇はこの20年間で2倍程度増えたに過ぎないことを認めている。

また添附されたグラフからも明らかなように、効力の上昇している理由は、2000年以降に低品質のカナビスが淘汰されて高品質のカナビスが普及して平均値が上がったためで、これは、品種の改良で全体の効力が増したのではなく、誰でも室内で簡単に育てられる高THC品種が当たり前になってきたために、低品質のカナビスが少なくなったために起こっているに過ぎないことが分かる。

今回の記事によれば、こうした状況はイギリスの場合も同じであることが窺える。

神話 効力の強いカナビスほど危険
カナビスの効力が飛躍的に上昇? 効力の強いカナビスは危険か?  (2005.3.20)