イギリス北ウエールズ州警察本部長

禁止政策は実効的でも道徳的でもない

Source: Transform Drug Policy Foundation News Release
Pub date: Oct 10, 2007
Title: Drugs prohibition is “unworkable and immoral” says Chief Constable
http://www.tdpf.org.uk/MediaNews_PressReleases_10_10_07.htm


今日、イギリス北ウエールズ州警察のリチャード・ブランストーム本部長は、現在のドラッグ問題に実効的に対処するためにドラッグの合法化と規制による管理を求めた報告書を発表した。この呼び掛けに対しては警察当局も公式に支持を表明している。現在イギリス政府の内務省が広くドラッグ政策への意見を求めているが、この報告書は、その政策検討委員会へ提出する書類の一環として用意された。

また、本部長は、トランスフォーム・ドラッグポリシー・ファンデェーションも委員会に加えるように提言している。委員会では、10月15日(月)の会合でこれらの勧告について検討することになっている。

この報告書についてトランスフォームのダニー・クシュリック代表は次のように語っている。

「現在の禁止政策による危険ドラッグの規制制御システムが破綻していることを示す証拠はあふれています。警察の本部長であるブランストーム氏が、今回、それに代わるドラッグ政策を世の中に広く呼び掛けるためにリーダーシップを発揮し、このような文書を発表したことに対して非常に歓迎しています。」

「これまでの禁止政策のためにドラッグの違法市場を生み出されて、イギリスの犯罪件数では単独で最も多くなっています。しかも、この10年間だけで、その対策1000億ポンドものコストをかけて破綻しているのです。そのことを考えれば、ブランストーム氏の呼び掛け自体は必ずしも驚くほどのことではありません。」

「最高位にある警察官であるブランストーム氏自らが、現在の対応の仕方について、コントロール不可で暴力も伴う違法市場に対して十分な影響力も発揮できず責任を全うしていないと認めているわけです。ドラッグ市場を政府がコントロール可能な環境戻すべきだという彼の主張は、人気取りの政策を掲げ、最近 『ドラッグが非犯罪化されることは絶対ない』 と啖呵を切って格好をつけたブラウン首相とは全く正反対になっています。」

「ここ何十年にもわたって政策全体が破綻しているにもかかわらず、どういうわけか、政府のドラッグ政策について聞いているパンフレットからは禁止政策の代替えの議論が排除されているのです。そうした中にあって、ブランストーム氏の文書は、実効性を持った意味ある政策議論を展開するためのプラグマティックな代替案を提供しているのです。」

「本部長の警察当局はこの勧告を支持していますから、他の警察当局も現在の禁止政策の実効性について真剣に見直してみるべきです。それが、ブランストーム氏が 『実効的でも道徳的でもない』 と述べている禁止政策について新たに考え直す第一歩と言えます。そうすれば、内務省や政府自体も、この問題を現在よりもはるかも真面目に取り組まざるを得なくなるはずです。」

「政党政治家の中ではタブーとなっていますが、ブランストーム本部長があえて 『プログマティクで道徳的』 な政策を掲げたことは大いなる尊敬に値します。非難する人もいるでしょうが、それはまさに、彼が 『モラルを振りかざした教条主義』 と呼んでいるところから発せられた教条的非難なのです。」

今回の報告書:   Drugs_Policy_Paper_2007   キャッシュ

イギリス・ブラウン首相、7月18日にカナビスの分類再見直しを 表明 し、カナビスの分類をCからBへ戻して罰則を強化する意向を示していたが、その一環として8月に広くドラッグ政策への意見を求めたパンフレットを発行している。パンフレットは7つの質問で構成されているが質問は非常に誘導的に作られており、ブラウン政権が選挙を狙ったパフォーマンスの色彩も強いが、今回の報告書はそれに正面から答える目的で作成された。
Drugs, our community, your say  (イギリス内務省、pdf)
Drugs policy - Just what is happening?   (UKCIA)

カナビスに関しては、現在内務省が、カナビスの分類をC分類からより刑罰の厳しいB分類に戻すかどうかをドラッグ乱用諮問委員会(ACMD)に諮問しているが、戻すに足りる科学的根拠が薄弱なので、このパンフレットで有利な意見を集めてそれを補おうとする意図も感じられる。ACMDの報告は来年の4月に予定されている。
Government drugs policy review sham  (UKCIA)

ドラッグ戦争に勝利はない、ドラッグ合法化を主張する警察官たち  (2006.11.29)