ドラッグは10年で合法化される

イギリス北ウエールズ州警察本部長


リチャード・ブランストーム

Source: BBC NEWS
Pub date: 1 Jan 2008
Subj: Drugs 'legal in 10 years' claim
http://www.mapinc.org/norml/v07/n1514/a10.htm


イギリス北ウエールズ州警察のリチャード・ブランストーム本部長によると、ドラッグの全面合法化は避けられないと言う。

ヘロインなども含めてすべてのドラッグを合法化すべきだというキャンペーンを展開しているブランストーム本部長は、「10年先まで」 にはドラッグの非犯罪化に向けての動が出てくると考えている。

現在、ドラッグは組織犯罪の大きな資金源になっているが、本部長は、1971年に制定されて以来続いているドラッグ乱用防止法を撤廃すればそれを絶つことができると主張している。また、エクスタシーのほうがアプピリンよりも安全だと思うと語っている。

しかし、イギリスの有名な独立系ドラッグ政策研究の専門家チャリティ・ドラッグ・スコープでは、当分合法化は起こりそうもないと分析している。


社会は急速に変化している

新年を迎えて、BBCラジオ4 では、北ウエールズ州、ダベッド州、ポーイス州の各警察から3人のゲストを招いて新年の番組を放送したが、その中で、10月に提言を発表して以来論争の的になっているブランストーム本部長は、自分の見解が少数派であることを認めながらも全体の流れは変化してきていると語っている。

「確かに、私の見方は警察関係の高官の大多数の意見とは違いますが、全部の人というわけでもありません。しかし、社会的な面からすると、国民の考え方は急激に変化しつつあります。」

「それは飲酒運転に対する世間の見方の変化を見ればわかります。私の若いころは、アルコールを飲んで運転することはごく普通のことで社会的に受け入れられていましたが、今では受け入れられなくなっているのです。」

「法律で禁止されているドラッグを合法化して規制管理することはもはや避けられないと思います。10ヵ月先とは言いませんが、10年先にはそうなると考えています。」

「例えば、EUに全面的に参加しているポルトガルでは、現在の国際条約の下でも非犯罪化が行われているのです。同じようなことは、世界中で議論されるようになってきています。」

イギリスのドラッグの乱用レベルについては、より進んだ治療プログラムが実施されるようになって減ってきているが、事態は依然として深刻な状態にあるとブランストーム本部長は語っている。


禁止法は機能していない

「われわれの社会は毎年およそ200億ポンド相当の損害を引き起こし続けています。記録に残っている犯罪の半分以上がドラッグがらみで起こっています。」

「政府は、証拠に基づいた政策を望んでいるわけですが、証拠は禁止法が機能していないことを非常に明確に示しています。」

「警察に頼った戦略は機能しないのです。事態は悪くなるいっぽうで、良くはならないのです。」


エススタシーは安全なドラッグ

本部長は、また、ドラッグに関するデマや誇張された噂がたくさんあるとも言っている。

「不純物のないエススタシーは極めて安全なドラッグです。アスピリンよりもはるかに安全です。」

「それは、ドラッグによる直接の死亡事故を調べた政府自身の研究を見ればわかります。エクスタシーによる死亡件数は、違法・合法を問わず他の多くのドラッグに比較しても少ないのです。」


勝つことのできない戦い

一方、ドラッグ・スコープの広報官は、今後10年以内にドラッグが合法化されることはないと語っている。

「現在の政府も野党のリーダーたちも、近い将来にドラッグに関する法改革をする意向を示している人はいません。現在の政権に至っては、カナビスをC分類からより厳しいB分類へ戻そうとして活発に動いているほどですから。」

昨年の10月、ブランストーム本部長は、ドラッグ法が時代遅れで警察が勝つことのできない戦いに巻き込まれているとして、現行のABC分類に基づいたドラッグ法をスクラップしてドラッグを合法化することを提唱して、現在もキャンペーンを続けている。

しかし、本部長の提言については、政治家たちからもさまざまな批判を受けている。

ブランストーム本部長の提言は、北ウエールズ州警察のサイトから ダウンロード して入手できる。

イギリス北ウエールズ州警察本部長、禁止政策は実効的でも道徳的でもない  (2007.10.10)
ドラッグ戦争に勝利はない、ドラッグ合法化を主張する警察官たち  (2006.11.29)

ブランストーム本部長については、ドラッグを擁護しているとして辞任を要求する政治家やマスコミも少なくないが、実際には、彼が率いている北ウエールズ州警察の 「事件解決率」 は非常に高く、業務の手を緩めているわけではない。

内務省の統計によると、事件解決率の全国平均が27%なのに対して、北ウエールズ州警察は48%でイングランドとウエールズ全体で最も高くなっている。隣接する南ウエールズ州警察は25%で下から9番目であることを考えれば、ブランストーム本部長の業績は際立っている。

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