開発が進むカナビノイド医薬品
Source: The Press Association
Pub date: 08 Mar 2008
Subj: Cannabis could help smokers quit
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=13332
動物の体内には、カナビスの成分と似た作用を引き起こすエンドカナビノイド(内因性カナビノイド)が自然生成されることが知られているが、その受容体であるカナビノイド・レセプターと一体となって体内のさまざまな機能を調整している。このシステムはエンドカナビノイド・システムと呼ばれ、1990年前後に発見されて以来、特にここ10年間で急速に研究が進んでいる。
その一つの分野として、各種の中毒行動とエンドカナビノイド・システムの関係を調べる研究が行われている。
イギリス・ノッチンガム大学の細胞薬理学者デイビッド・ケンダール教授は、「現在では、エンドカナビノイド・システムが脳内の報酬経路とドラッグを求める行動と密接に結びついていることがわかっていますが、このことは、報酬経路を抑制するようなエンドカナビノイドがあれば、ニコチンのような中毒成分を求める行動を抑えることができることを示唆しています」 と話している。
こうしたことから、天然のカナビスの成分であるカナビノイドや化学合成したカナビノイドを使った医薬品を開発しようとする研究が盛んに行われている。
イギリス薬理学ジャーナルのポッドキャストを開始以来その編集者を務めている生物医学の専門家で、ケンダール教授の同僚でもあるスティーブ・アレキサンダー博士は、「カナビノイドを使った医薬品については、実現される可能性が非常に高いことは明らかです。現在ではさまざまな分野でその可能性を調べる研究が行われています」 と言う。
「ドラッグには報酬経路を刺激してますます使いたがる性質があるという考え方からすれば、ある種のエンドカナビノイドが報酬経路を妨害して、そうした 「うずき」 や欲求を抑え込むことができます。」
「こうした欲求とすれば食欲も同じです。現在、イギリスでは、アコンプリアと呼ばれる肥満症の医薬品が使われていますが、これは、カナビノイド・レセプターの機能を抑制するカナビノイドの一種で、食欲を抑える作用を利用したものです。アメリカのメルク製薬でも、これと同じ薬を肥満やニコチン中毒に使うことを模索しています。」
ケンダール教授は、「脳内はカナビノイド・レセプターで満たされていますので、特に驚くことでもありませんが、鬱や不安といった病気においてもレセプターに作用して鬱を抑える抗鬱剤の開発などにも多大な関心が寄せられています」 とも指摘している。
また、カナビノイドには血圧を下げる働きがあることも示されており、高血圧症の治療にも使えるのではないかと考えられている。同じ大学の心臓血管薬理学者のミッシェル・ランダール博士は、エンドカナビノイドがどのようにして血管の緊張を緩めるのかについて調べている。
「こうした作用には多くのヒントが隠されています。例えば、エンドカナビノイドは、ショック状態などの一定の症状下で血圧を下げることが分かっていますが、もしエンドカナビノイドがその生理的な働きに重要な役割を果しているとすれば、治療薬として使える可能性が大きいことになります。」
アレクサンダー博士は、「良質の医薬品を開発する上では、エンドカナビノイド・システムには多大な可能性があります。現在のところは、カナビスに関連した医薬品の範囲は限られていますが、この分野での知識が増えてくれば、もっと多くの医薬品が提供されるようになるはずです」 と加えている。
|
従って、一口にカナビノイド医薬品といっても、使われるカナビノイドの種類によって全く逆の作用を引き起こすことに注意しなければならない。
アコンプリアについては、体内で恒常性を保っているエンドカナビノイド・システム全体に影響するために、正常な機能まで妨害されて深刻な副作用が起こることも指摘されている。そのために、開発されたヨーロッパでは認められているものの、アメリカでの認可申請では、安全性が問題になって却下されている。
ヨーロッパ当局、アンチ・カナビスの抗肥満薬を認可 (2006.7.27)
FDAの諮問委員会、カナビノイド・ブロッカーの安全性を認めず (2007.6.14)
カナビノイド・ブロッカーが、カナビスの 「ハイ」 を弱める (2007.7.19)
天然のカナビスには60種類以上のカナビノイドが見つかっているが、それぞれはさまざまに異なった作用を持っているために、カナビノイド成分の含有割合によって効果が違う。
含有割合については品種ごとにだいたい決まっており、医療カナビス患者たちは自分の症状に一番適した品種を栽培して使ったりしている。しかし、ブラック・マーケットでは品種の選択肢がないのは当然だが、オランダやカナダ政府が供給している医療カナビスでも種類が少ないが問題になっている。
混迷するカナダの医療カナビス (2008.2.27)