医療カナビス裁判

世界各地で時代を画する判決が続く

Pub date: 31 Mar 2008
Author: Cannabis Study House, Dau



最近、世界各地の医療カナビス裁判で、従来とは違った新しい判決が続いている。

1996年にアメリカのカリフォルニア州で医療カナビス条例が制定されてから12年経つが、中間の2003年にはカナダとオランダ政府の医療カナビスの配布開始を経て、最近では、アメリカ内科医師会が支持を表明するなどますます医療カナビスの認知が加速している。また、この1ヶ月間に各地で行われた裁判では時代を画するような判決が続き、全く新しい時代に突入しつつあることを強く思わせる。


チェコ最高裁、医療目的でのカナビス栽培に好意的な判決
2008年3月4日 チョコ共和国

チェコ最高裁は、医療目的でカナビスを栽培していた女性の裁判で、下級裁判所が出した有罪判決を見直すように差し戻す判決を下した。この裁判では、カナビス栽培がただちに犯罪とは言えず、医療目的と嗜好目的とは区別して扱うべきだとする画期的な判断が示された。

中央ボヘミア地方の村に暮らす年金生活者の女性(57)は、胃潰瘍と足の痛みを緩和するために自分の畑で約70本のカナビスを栽培していたが、カナビスの違法栽培と所持の罪に問われて地域裁判所から2年間の執行猶予付き有罪判決を受けていた。

今回の最高裁の決定は、カナビスの栽培そのものを合法と認めたものではないが、下級裁判所が判決を下す際には、それが医療目的なのか嗜好目的なのか十分に検証する必要があるとしている。今回の女性の場合、主治医も彼女が治療目的でカナビスを使っていることを知っていた。

医療カナビスを支持している国会議員の一人は、「チェコの医師たちはカナビスの医療効果についてますます理解するようになってきており、ポジティブな結果が見込まれる場合には患者のカナビスの使用を容認するようになってきています」 と語っている。

また、医療カナビスの支援者たちは、医療目的でのカナビス栽培を合法化して、1年に1.5キロまで認めるように国会議員たちの呼びかけている。請願書には、何人もの有名人や元国会議員たちが名を連ねている。

スペイン、医療カナビスの自宅外栽培に無罪判決
2008年3月16日 スペイン

スペイン北西部にあるフェロールの裁判所は、脊髄損傷による痛みとけいれんの治療のために医療カナビスを栽培していた 男性 (32)に対して、「 公衆衛生を脅かすような犯罪を犯したわけではない」 として無罪を言い渡した。

スペインでは、たとえ嗜好目的であっても自宅内では少量のカナビス栽培が認められているが、今回の場合は自宅ではなく、国の保険サービスの養護施設内であったために、所長から告発されていた。

スペイン政府も一部の疾患にカナビスが効果のあることを認めており、使用者も増加している。保健省大臣は、「カナビスの治療可能性については広く見直しが行われており研究も盛んに行われています。科学的には、癌の化学治療にともなう吐き気や嘔吐、エイズや末期癌の食欲不振、多発性硬化症による神経障害の痛みなどに効果のあることがわかっています」 と語っている。

連邦地裁裁判官、「この裁判は悲劇だ、今後同じことが起こってはならない」
2008年3月19日 アメリカ・カリフォルニア州

アメリカ・カリフォルニア州では医療カナビス法が施行されており、医師が治療目的で患者に医療カナビス使用を奨めることはできるが、医療カナビスそのものを供給したりしてはならないとされている。もちろん、連邦政府は医療カナビスそのものを認めておらず、普通のカナビスと同様に栽培や流通を厳しく取り締まっている。

カナビスを専門の 「ポット・ドク」 の一人として知られるモーリー・フライ医師は、弁護士である夫のシャファー氏とともに、患者にカナビスの苗を提供して栽培方法などを指導したとして、2004年に連邦の捜査を受け、「カナビス配布と共同謀議の重罪」 を犯した疑いで起訴された。

連邦法では、100本以上のカナビス栽培は重罪になっているが、今回のケースでは共同謀議の罪も加わって最高40年の懲役と200万ドルの罰金が科せられる可能性もあった。

判決の言い渡しにあたって、サクラメント連邦地裁のフランク・ダムレル裁判官は、自分たちの利益のためにこのような罪を犯したとは考えられず、二人を殉教者だとさえ呼んだ。そして、夫婦それぞれが医療カナビス患者であることや子供や孫もいることを指摘して、「今日は悲しくつらい。これは悲劇だ。今後同じことが起こってはならない」 と述べた。

しかしながら、連邦法では、カナビス栽培の重罪に強制される下限刑が5年に定められていることから、「選択の余地」 がないとして二人に5年の懲役刑を言い渡した。だが、最後に、上告するの理由も十分に揃っているので保釈を認める正当性があるとする判決を下した。

この判決について、医療カナビスに支持者たちは、連邦のカナビス法の変更が不可避であることを示した画期的な一歩で、裁判官自身が、下限刑を強制し医療カナビスを認めようとしない連邦法が破綻しているとして、上の裁判で正しい決定を下すべきだと宣言したものだと評価している。

カリフォルニア州最高裁、認定患者から押収した医療カナビスは返却せよ
2008年3月24日 アメリカ・カリフォルニア州

アメリカで逮捕されるカナビス事犯の大半は州や地元警察によるもので、連邦では大掛かりな組織犯罪に焦点を当てている。

従って、医療目的で少量のカナビスの所持が認められて州の認定医療カナビス患者は何の問題もないばずだが、実際には、州や地元警察は、連邦法が州法よりも優先されるという言い訳を根拠に医療カナビス患者からカナビスを押収したりしている。

実際、カリフォルニア州では、何百人もの患者が医療カナビスを押収されている。ゴールデン・グローブに住むフリックス・カハさんも、2005年6月に8グラムを医療カナビスを押収された。

彼はこうした流れを止めるために、医療カナビスの擁護団体であるアメリカン・フォー・セーフアクセス(ASA)と協力して、不正に押収された医療カナビスを返還するように求める裁判を起こした。

2007年11月のカリフォリニア州控訴審では、「連邦法を執行することは州警察の仕事ではない」 ので、連邦法を理由にカリフォルニア州の医療カナビス法を軽視してよいことにはならず、押収したカナビスは返却しなければならないという判決を下した。

今回のカリフォルニア州最高裁の判決もこれを支持したもので、もはや州警察は連邦法を言い訳にした医療カナビスの押収はできないことになった。

カナビスの医療使用、『必要性の弁護』 で無罪
2008年3月25日 アメリカ・テキサス州

アメリカ・テキサス州は、カナビスには厳しいところとして知られ、カナビス所持や栽培の 最高刑は99年 になっている。当然のことながら、医療カナビス法などは制定されていない。

しかし、3月25日に行われた裁判では、HIVに感染して治療のためにカナビスを所持していた男性(53)に対する陪審の評決で無罪が言い渡された。陪審の審議には11分しかかからなかった。

男性は、1986年にHIVに感染して吐き気と周期的な嘔吐に苦しみ、ひどいときには入院して輸血を受けなければならない状態だった。カナビスは症状緩和のために使っていたが、昨年の10月に家のフロント・ポーチで4グラムのカナビスを所持して吸っているところを発見されて逮捕された。

彼の弁護士は、カナビスが吐き気や嘔吐の治療に必要だったとする弁護を展開して無罪の評決に結びつけた。テキサス州のカナビス事犯で、「必要性の弁護」 が成功したのは今回が始めてのことになる。

ノースカロライナ州高等裁判所の元裁判官で、現在はマリファナ・ポリシー・プロジェクトのテキサス支部長を務めるレイ・ワーレン氏は、「もはや、アメリカの一般大衆は、医療カナビスでやっと生き延びている深刻な病気の人たちを単にカナビスを所持していたからという理由で逮捕するのを見たくなくなっているのです」 と話している。

「今こそ、テキサスや全国の政治家たちは世論に従い、患者たちを守るために行動を起こすべき時なのです。生命の危機に立ち向かっている人たちが、さらに逮捕という恐怖に晒らされるようなことがあってはならないのです。」