モロッコでカナビス合法化を求める動き

Source: Encod
Pub date: 7 May 2008
For The Legalisation Of Cannabis In Morocco
http://www.encod.org/info/FOR-THE-LEGALISATION-OF-CANNABIS.html


モロッコの市民団体グループが、『モロッコでのカナビスの合法化と有益な利用についての公開討論会への招待状』 というタイトルの文書を発表して、関心あるすべての人や団体の参加を呼びかけている。

この呼びかけは、国連とEUの圧力を受けて実施されていた北部モロッコのカナビス栽培に対する根絶政策が失敗しているという認識がもとになっている。この根絶政策からは次のような深刻な2つの結果がもたらされた。

  • 畑のカナビスを潰されても何の代替作物も提供されず、農民とその家族の苦しみが増えた。これは、貧困を克服するという国と国連の政策に矛盾している。

  • ドラッグ取引業者の多くが戦略を変えて、違法なハードドラッグを犯罪グループやテロリストに売るようになり、また武装するようになった。

呼びかけでは、本当に戦わなければならないのはドラッグ取引業者に対してであって、カナビスやそれを栽培している人々ではないとして、カナビス畑のある地域の経済的代替として、医療向けと産業向けのカナビス栽培の合法化を提案している。

従って、この招待状では、モロッコ社会の他の分野の活動家やグループに対しても次のように呼びかけている。

  • 問題に対する説得力のある解決策を見出すために、科学と政治のカンファレンスや会合を組織し、お互いを尊重し合う民主的な枠組みの中でアイディアを発展させる

  • カナビスの医療利用と産業利用を擁護している世界中の研究者や組織と共同して活動する

この問題に対する初めての公開討論会は、来月ラバトで開催することになっている。


問い合わせ先&呼びかけ人:
cannabis.maroc@yahoo.fr
Dr.Tahar Toufali (政治科学部門の大学教授)
Dr.Benacer Hemmou Azday (物理部門の大学教授)
Chakib Al Khayari (人権活動家)

後援:
国際カナビス医薬品学会 (IACM)
有効なドラッグ政策を求めるヨーロッパ同盟 (European Coalition for Just and Effective Drug Policies)

アラビア語の招待状 (pdf)

国連の薬物犯罪事務所(UNODC)によると、モロッコのカナビス生産高は、2003年の3070トンから2005年には半減して1510トンになっている。

これは、国連とEUの後押しでモロッコ政府がカナビス根絶作戦を行ったことによるもので、衛星による写真も探索に使われた。モロッコのカナビスは、道路も十分に整備されていない北部の急峻なリフ山系で栽培されているために容易に探索もできないが、衛星写真ではピンポイントで場所を特定することができために、多くの栽培地(43%)が潰され、栽培農家が逮捕された。


World Drug Report 2007

モロッコのハシシ生産高は世界で最も多いことや、生産地域での反政府武力闘争がないこと、王政の存続と権力強化のためにフランスや国連、EUとの関係が重視されていること、国連の麻薬撲滅政策全体が上手く行っていないのでとにかく見える成果を出す必要があることなどが重なって作戦が実行された。

確かにこの作戦でモロッコのハシシの生産は減ったが、当然予想されるように、アフガンなど他の地域での生産の増加を招く結果にもなっている。


World Drug Report 2007

しかし、このような性急でしっかりした見通しのない政策が強引に推し進められたために、カナビスの栽培しか収入の道のない農家に対する代替作物の栽培援助などが十分の行われず、結局は再びカナビスを栽培する農家が多く、農家数は8%も減っていない。

以前は、農家は未処理のカナビスを販売することのほうが多かったが、取り締まりで生産高が半減したこともあって、最終製品のハシシまで手がけるようになった。さらに、この作戦による品薄で価格が高騰したこともあって、実質収入は2割も増えている。


World Drug Report 2006

また、以前では、ヒッピーや一発屋の旅行者たちがモロッコのハシシをヨーロッパに持ち込んだりしていたが、取り締まりが厳しくなった現在では大掛かりな犯罪組織が中心となっている。そのために、摘発される量はトン以上が普通になってきている。

モロッコ、ハシシ生産は衰えず、国連カナビス根絶作戦の最前線  (2006.7.15)
暮らしを支えるカナビス、モロッコ、多数の農家がカナビス栽培  (2005.7.6)

モロッコの地図

今回の市民団体グループの呼びかけは、農家のカナビス栽培を医療用途と産業用に変えて世界の供給地になることで、地域経済を支え、すべての問題をコントロールできるようにしすことを目指しているが、同じような提案は、アフガンのケシ栽培についても提案されている。

世界に拠点を持つ国際シンクタンクとして知られる センリス・カウンシル (The Senlis Council)は、アフガンの ケシを医薬品に というキャンペーンを実施している。

アフガンのケシ栽培は、10年前には全世界の供給量の50%だったが、東南アジアでの栽培が撲滅されたことで現在では90%達している。センリスは、このケシのすべてを買い上げるほうが現在根絶に費している費用よりも安く上がると主張している。

また、アフガン一国で世界のモルヒネ供給の90%を担うとすれば、アフガンの農家はモルヒネの需要が続く限りケシの生産を続けることができて安定し、世界全体としても産地が限定されて管理が進むことで今よりずっと状況が良くなると主張している。