アメリカ中西部で

高まる医療カナビスへの関心


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Source: Chicago Tribune
Pub date: 13 July 2008
Across Midwest, Interest in Medical Marijuana Grow
Author: Tim Jones, Chicago Tribune correspondent
http://www.mapinc.org/norml/v08/n668/a01.htm?134


アメリカ中西部で医療カナビスを合法化しようとする動きが活発化している。西部のロッキーから東のニュー・イングランド地方の中間に位置する中西部 では、ミシガン州が、終末期や重度の疾患に苦しむ人のカナビス使用を認める最初の州になろうとしている。

ミシガン州では、秋の11月の選挙で、医師の裁量で患者がカナビスを使用できるようにすることを求めた住民投票が予定されている。対象は、癌、クローン病、HIV/エイズ、アルツハイマー病、C型肝炎などに苦しむ患者で、カナビスで症状の緩和が期待できる疾患になっている。

世論調査では、一般のカナビスの合法化には反対する結果が何年も続いているが、カナビスの医療目的での使用については、世論調査でも住民投票でも圧倒的な強い支持が示されている。また、これまでカナビスの医療使用に反対してきた医師グループも、賛成に回ったり、抵抗を控えるようにもなってきている。

こうした世論と、一部の疾患の治療にカナビスが役に立つという医学研究、さらに医療コミュニティの変化が重なり合って、医療カナビスを合法化する動きも活発化してきた。1996年にカリフォルニア州で医療カナビス215住民条例が成立して以来、この12年間で12州が医療カナビス法を持つようになった。

前ミシガン州議員で、ミシガン・コンパショネート・ケア協議会の広報官を務めるダイアナ・バイラム氏は、「政治議論を越えて、医療の問題として議論する必要があります。それが世論なのです」 と指摘している。「本当に考えなければならないのは、病に苦しんでいる患者さんたちのことで… そのような人たちは、逮捕や投獄される恐れなしに医療カナビスで安寧を得られるようにすべきなのです。」

彼女のグループはデトロイトを本拠に活動しているグループで、今回の発議に当たっても47万5000人の署名を集めて住民投票実施に大きな役割を果たしている。


アメリカ医師会ミシガン支部も反対から中立に

中西部で医療カナビスに関する政治的関心が高くなっていることは明らかで、ミシガン州の5つの都市でもすでに医療カナビス条例を制定している。

また、ミネソタ州でも、最終的には下院を通過しなかったものの上院では承認されている。イリノイ州では過去にわずかの差で上院の通過が阻むまれているが、秋の選挙後に再び提案されることが見込まれているほか、オハイオ、ウイスコンシン、ミズリーの各州でも議論が始まっている。

今回のミシガン州の発議は拘束性で、通過すれば議会でも阻むことはできないが、11月の選挙までには4か月を切った現在でも発議に反対を表明している組織は出てきていない。

アメリカ医師会のミシガン支部にもなっているミシガン州医師会は、最近、医療カナビスに反対していた従来の立場を取り下げて、中立の立場を取ることを発表している。放射線診療の専門医でミシガン州医師会の会長を務めるミカエル・サンドラー氏は、「限定された量のカナビスが患者の一部の助けになるかどうかについては、他の意見もよく聞いて先入観で判断しないということです」 と語っている。


予想される反対

だが、これから反対の声も大きくなってくることも予想されている。カナビス問題に関しては政治的な状況が変化しやすいことや、1996年にカリフォリニア州の住民投票で成立した医療カナビス法による現在の混乱状態などが大きな懸念材料として取り上げられる可能性もある。

カリフォルニア州の医療カナビス法では、患者は医師から推薦状を書いてもらうことを義務付けられているが、対応疾患についての制限が曖昧で、実質的に誰でも取得できるようになっている。このために合法的に医療カナビスを販売できるカナビス・ディスペンサリーやクラブが州のあちこちに出現し、大規模な栽培が畑ばかりか自宅内でも行われるようになった。このために、各地で栽培の強制捜査が頻発している。

こうしたカリフォルニアの状況について、カナビス禁止法の撤廃を掲げて運動しているNORMLのアレン・ピエール事務局長は、「政治的カオス状態」 と表現している。

「カリフォリニア州の医療カナビス法と同じような州法を持っているところはありませんし、持とうと思っているところもありません。カリフルニア以外の州法は、どこも対応疾患を厳格に狭く定義していますし、所持できるカナビスの量や栽培できる本数も少なくなっています。また、カリフォルニア・スタイルの小売ディスペンサリーを認めようとしているところはどこにもありません。」


医療カナビス法をめぐるさまざまな動き

今回のミシガン州の発議では、患者は、2.5オンスまでのカナビス所持と施錠されや場所で12本の植物を栽培できるようになっている。

他の州での 所持量や栽培本数適応疾患 なども似たようなガイドラインを持っているが、一部の州では、それを改める動きも出ている。例えば、1998年に医療カナビスが認められたオレゴン州では、酒類販売店でのカナビス販売を求める動きがある。

また、隣の ワシントン州 では、これまで60日分のカナビスを所持できるようになっていたが、州保険省は、具体的な数量を決める必要があるとして1.5ポンドにすることを提案している。この量については、一部の患者や支持グループは少な過ぎると批判し、警察などは多過ぎると言っている。

カナビス問題が政治的に影響を受けやすいことも示されている。2年前にサウスダコタ州で医療カナビス発議の住民投票が実施されたが、ことときは48%対52%の僅差で否決されている。

民主党の次期大統領候補に決まっているバラク・オバマ氏は、医療カナビスを支持することを表明しているが、科学と医療コミュニティからの支持があることと慎重にコントロールされることを条件にしている。これに対して、共和党のマケイン候補は、医療カナビスに反対している。

また、州と連邦との間には医療カナビス問題に関して決定的な溝もある。医療カナビス法を合法化した州であっても、法的にいえば連邦法に違反している。

2005年に出された 連邦最高裁の判決 では、州法で合法であっても連邦の訴追を免れることはできず、強制捜査や起訴の対象になることが確定している。実際、カリフォルニアのディスペンサリーはたびたび連邦の強制捜査を受けている。


新しい展開が始まっている

こうしたさまざまな状況に中で実施される今回のミシガン州の住民投票は、特にまだ医療カナビス法を持っていない地域からは一種のバロメーターとして注目されている。

全国に医療カナビス法を広めることに力を注いでいるマリファナ・ポリシー・プロジェクトのブルース・ミルケン広報官は、「今回の動きは、これまでと違って、世論をキャッチアップする法律を作ろうとする動きが着実に進展し始めていることを示しています」 と語っている。

「政治屋ともいえる多くの連中は、現実を差し置いてあれこれ議論するのが常ですが、医療カナビス問題に関してはそのようなダーティな駆け引きはほとんど通用しなくなってきています」 と語っている。

ミシガン州で圦ょカナビス条例が成立している都市は、デトロイトのほかに、トラバース・シティ、ファンデール、アナーバー、フリントの各市。

これまで住民投票が行われ州と賛成得票率。否決されたのはサウスダコタ州のみ。

1996 カリフォルニア 56%
1998 アラスカ 58%
1998 オレゴン 54%
1998 ワシントン 59%
1999 メイン 62%
2000 コロラド 54%
2000 ネバダ 65%
2004 モンタナ 62%
2006 サウスダコタ 48%