オランダ

犯罪者減少で8刑務所を閉鎖

Source: NRC Handelsblad
Pub date: 19, May 2009
Netherlands to close prisons for lack of criminals
http://www.nrc.nl/international/article2246821.ece/
Netherlands_to_close_prisons_for_lack_of_criminals


オランダのネバハット・アルバイラク司法副大臣は、19日、犯罪の減少にともなって空きが目立つ8箇所の刑務所を閉鎖すると発表した。この閉鎖によって1200人の仕事が失われることになる。

オランダは1990年代には刑務所不足に直面していたが、それ以降は犯罪が減って過剰な状態が続いている。現在では全体で1万4000人の収容能力があるにもかかわらず、実際の受刑者は1万2000人しかいない。

また副大臣は、この閉鎖にともなう直接的余剰人員や関連部所の人員にはレイオフを強制すべきではないと語っている。さらに、今回の刑務所の過剰は犯罪の減少の結果だが、司法省の研究機関によると、この傾向はしばらく続く見込みだと言う。

一方、ベルギーでは逆に刑務所不足で過剰な収容状態になっている。このために両国間では、ベルギーの受刑者をオランダの刑務所に収容する話し合いが行われ、2010年までに500人のベルギー受刑者をティルブルグの刑務所へ移管することが検討されている。

オランダ側ではこの取引で3000万ユーロの収入を見込んでいるが、これが実現すれば、ロッテルダムとフェーンハウゼン(フローニンゲン州)の刑務所の閉鎖が2012年まで延期されることになる。

オランダではドラッグが野放しであるために犯罪が多発しているなどとよく言われるが、この記事は、現実が全く逆であることを伝えている。

実際、オランダでの殺人数 は、1990年代には年間250人前後だったが、最近は減少を続けて2007年には147人にまで減っている。しかも殺人の多くは強盗などではなく、犯罪者同士の仲間割れによるものになっている。

また受刑者数の減少の理由としては、法律の改訂で2001年から軽犯罪では刑務所に送る代わりに社会奉仕を課すことができるようになったことや、中南米からのドラッグ密輸入関係で現地の検査が厳しくなってオランダに来る前に捕まってしまうケースが増えてきたことなども影響しているといわれている。

一方、世界一の刑務所国家アメリカ は財政難や 収容人員の過剰 で刑務所システムの変更を検討せざるを得ない状態になっているが、刑務所関連で収入を得ている人が非常に多いために抵抗も激しい。

実際、昨年11月のカリフォルニア選挙ではドラッグの非暴力違反者を刑務所ではなくリハビリ施設で治療することや現行のカナビス非犯罪化法の徹底を求めた発議(プロポジション5、NORA)が住民投票にかけられたが、シュワルツネッガー知事を先頭にして 警察や刑務所関係者たちが多額の資金をつぎ込んで猛烈な反対運動を展開して60対40で成立を阻んでいる。

カリフォルニア州の刑務所収容人員はアメリカ最大の15万人で、オランダの12倍にもなっている。

アメリカでは、刑務所産業複合体 が巨大な力を持っているために、無理にでも犯罪者を作り出そうとしてカナビスの少量所持で多数の人たちを逮捕している。

これに対して、ドラッグに寛容なオランダでは犯罪が減って刑務所を閉鎖しようとしている。また、オランダ政府は、警察官の採用を当初の計画から半減 することや資金も大幅に削減する計画も発表している。

こうした対比から見られるように、問題の根本は文明的ともいえるもので、ドラッグによる犯罪が実際は禁止法によって作り出されていることがわかる。

また、オランダではカナビスの酔っ払い運転が深刻だともよく言われるが、少なくともコーヒーショップではアルコールが扱えないために併用によるリスクがなくあまり問題になっていない。実際、EUの中でもオランダの自動車事故による死亡率はマルタに次いで 最も低くなっている