大規模疫学研究

カナビスの使用で

頭・首部の癌のリスクが顕著に減る

Source: IACM
Pub date: 2 Aug 2009
Risk of head and neck cancer reduced in cannabis users
in large epidemiological study
http://www.cannabis-med.org/english/bulletin/
ww_en_db_cannabis_artikel.php?id=301#1


癌防止研究ジャーナルに掲載された 調査データ によると、カナビス・ユーザーではノンユーザーに比較して頭部と首部の癌の発症率が低いことが明らかになった。

カナビスが生成するカナビノイドには癌を抑制する作用があることが知られているが、これまで報告された疫学調査の結果には必ずしも一貫性はなく、大規模な調査が待たれていた。

今回の調査を行ったのは、アメリカのブラウン大学(ロードアイランド)、ボストン大学(マサチューセッツ)、ルイジアナ大学、ミネソタ大学の合同研究チームで、頭部と首部の扁平上皮癌(HNSCC)の発症に対してカナビス使用がどのような影響を与えるかを調べた。

ケース群は1999年から2003年までにボストン近郊の9病院でHNSCCと診断された434人で、対照群には年齢・性別・生活環境が似ている547人の健常者が住民台帳から無作為に選ばれた。

その結果、タバコの喫煙や飲酒などの交錯因子を除去した後では、カナビスの使用によって癌の発生リスクが48%減少し、統計的にも著しい差のあること示された。

この差は、カナビスの使用状態(現在あるいは過去の使用か、期間、頻度など)にかかわらず一貫したもので、10〜20年使用しているユーザーのリスクはノンユーザーの3分の1にもなっている。

また、20才以上でカナビスを使い始めた人は、それ以下の年齢で開始した人よりもリスクがより低くなることも示された。

この結果について研究者たちは、「適度なカナビス使用によって、頭部と首部の扁平上皮癌のリスクが減ることを示している」 と結論付けている。

今回の研究:
A Population-Based Case-Control Study of Marijuana Use and Head and Neck Squamous Cell Carcinoma. Liang C, et al, Cancer Prev Res (Phila Pa). 2009 Jul 28.

医療用途のカナビス使用は認めるがリクレーショナル用途は認められない、という一見するともっともらしい意見をよくみかけるが、この研究の結果はそのような主張には説得力がないことを示している。

医療の意味を病気になった人の治療と考えれば、病気になっていない人は医療の対象にはならないことになるが、本来の医療の究極は病気にならないように予防することにあり、その意味では現在健康な人でもその対象になるからだ。

カナビスに含まれるカナビノイドには生命の 恒常性(ホメオスタシス)を保つ機能 がある。病気になると恒常性が崩れ、体温や血圧の上昇・痛みなどが現れるが、カナビノイドはそれを正常に戻そうとする働きがあるので、治療に医療カナビスが使われる。

一方、予防という側面からみれば、日常的に恒常性が崩れにくい状態を保つことが重要になる。その点では、この研究でも示されているように、カナビスの適度なリクレーショナル使用が非常に大きな役割を果たしていることになる。

同じことはアルツハイマー病などでも言われている。アルツハイマー病とカナビスの関係を調べているオハイオ州立大学のゲーリー・ウエンク教授は、「実際のところ、1960年代や70年代にカナビスを常用していた人たちの間では、アルツハイマー病になった人は滅多にいないのが示されている」 と語っている

また、2006年の大規模ケースコントロール研究でも、たとえどれほど長期にわたるカナビス喫煙でも肺癌や上気道癌のリスクがノンユーザーに比較して増えることはないばかりか、適度な使用ではかえって癌のリスクが減ることも示されている。

大流行が恐れられている豚インフルエンザの予防や治療に カナビス・ローゼンジ が役に立つという指摘もある。ローゼンジは薬用キャンディーのことで、エクアドル産の強力なサティバ種を改良した植物の抽出液が混ぜられている。予防注射などと違って、ローゼンジにすることで子供やティーンでも摂取しやすいようになっている。

適度な飲酒は「百薬の長」などと言われるが(毎日の飲酒は必ずしもそうでないらしい)、適度なカナビス使用にも楽しみながら病気を予防できるという機能がある。両者に違いがあるとすれば、病気の時のアルコールはもっぱら病状を悪化させるだけだが、カナビスの場合は病状を緩和して治癒する力もあることだ。