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コーヒーショップのカナビスの値段

Pub date: April 18th, 2009
The price level of cannabis in coffeeshops: How and Why.
Author: Cannabinol
http://www.hempcity.net/blog/

今回のブログは、あちこちからよく聞かれる質問に答えるような感じで書いています。現在オランダのコーヒーショップでは、ハシシやバッズの値段がホットな話題になっていますが、お客さんばかりではなく自分の店のスタッフや他の店からもどのように決めているのか尋ねられたりもします。


もっと安くバッズを提供できないのか?

店のスタッフとの前回のミーティングでは、何人もから同じ質問が出てきました。お客さんにはもっと安くバッズを提供できないのかと聞かれました。当然、私は、安く手に入れば安く提供できると答えました。

スタッフたちがなぜこのような質問をするのかについてはよくわかっています。彼らは、お客さんから値段が高いことにあれこれ言われるからです。でもどうして価格がそうなっているのか説明できないのです。

これは間違いなく断言できますが、私の店のあるハーレムでは、15キロしか離れていないアムステルダムのコーヒーショップよりも安く提供しています。しかしお客さんにとってはそのようなことは関係なく、目の前の価格が高いことが問題なのです。

でも、こちらとすれば高く売りつけているわけではないというほかありません。


古き良き時代

昔は、コーヒーショップ自身が自分の栽培者や供給者のグループを持っていましたので、コーヒーショップのオーナーは栽培者にどの品種をどれくらい栽培するのかについて影響力を発揮することができました。栽培方法についてもわかっていました。

栽培者にしても買ってくれるところはコーヒーショップしかありませんでしたので、実際、キロ単位で外国に売りに行こうとする人でも直接栽培者から仕入れることはなく、コーヒーショップで調達していました。結局、カナビスの値段はオランダ中で似たり寄ったりでした。

価格が上昇することもありましたが、それはホリデー・シーズンの期間とその直後に限られていました。それもはっきりとした理由がありました。

一つは、栽培者も休暇を取るので収穫はいつもの半分程度に減ってしまうことと、もう一つは、夏にむかって温度が高くなると植物もどんどん成長しますが、夏がピークをむかえて27度℃以上になると突然成長が遅くなってしまうからです。

また、オランダの栽培者の多くは、夏の品質の悪い作物の後の7月と8月から栽培を開始することはまずありませんので、コーヒーショップ側では、夏の時期とその後のしばらくの間に販売するカナビスについては春からストックしておくことになります。

いずれにしても、当時はすべての状況を見通すことは容易でした。栽培者はコーヒーショップを相手にするしかなかったからです。


イギリスの罰則軽減で状況が変化

ところが、2001年にイギリスがカナビスにより寛容な政策をかかげるようになったことを契機にして状況は変化してしまいました。

イギリスのバイヤーたちがこぞってオランダの市場と栽培者のところにやってくるようになったのです。彼らはあたりかまわずカナビスを買い漁って多量に持ち帰りました。海峡を又にかけた密輸が盛んになったのです。

当然のことながら、彼らがカナビスを仕入れるにはコーヒーショップの仕入れ値よりも高い値段を提示するしかありません。このことで、栽培者たちはコーヒーショップに頼らなくても、最高値を提示するバイヤーに売ることができるようになったのです。

一方では、イギリスのカナビス価格は、グラムあたり8〜9ポンド(12〜14ユーロ)にも上昇しました。


商品不足で価格が高騰

こうした状況の変化で、当てにしていた栽培者からも話はこなくなったのです。すでに、コーヒーショップの買い取り価格よりも高いキロ400ユーロで売ってしまった人もいました。これにはコーヒーショップ側も驚かされました。

コーヒーショップは商品不足に陥り、私は親しい同業者たちとお互いにやりくりするようになりました。いわばコーヒーショップ間取引で、同僚の在庫を分けてもらって売るようになったのです。

どこのコーヒーショップでも同じ問題を抱え、商品が少なくなるに従って値段も高騰しました。値段が始終変わるので、カナビスを提供したい側ではサンプルの子袋に値段と電話番号を付けて連絡できるようにしていました。

ですがそれでもやりくりできずに、今では再びストリート取引になってしまっています。調達できるところならばどこからでも仕入れるようになったのです。

値段の折り合いがつかなければ買わないで済みますが、手に入れるためにはイギリスの価格と同等以上を出さなければならなくなってしまったのです。そうしなければ商品は底をついて商売が成り立たなくなってしまいますので、他に選択肢はありません。


政治の保守化

一方、同じ頃にオランダの政権がリベラルから保守へ変わって、それ以降ますます保守的な方向にむかうようになりました。過去3期続いている保守政権では、政党を隠れ蓑にした宗教グループが主導権を握っています。

この政治勢力はピューリタン的で、カナビスを嫌っているだけではなくカナビスを吸っている人にまで白い目を向けています。そんな具合ですから、あらゆる方法を使ってコーヒーショップを閉鎖してお客さんや供給者を追い立てようと狙っています。

その方法の一つとして、個人の少量家庭内栽培すらもやめさせようと画策しています。そうすればコーヒーショップへの供給ルートを断ち切って商売をダメにすることができると考えているからです。

政治家たちはチェスのプレイヤーのように先を読んであれこれしますが、プロ級の家庭内栽培者も多く、新しい栽培者も次から次へと出てきますので、彼らの「聡明な」計画が効果的に成果を上げる可能性はまずありません。

従って、コーヒーショップが干しあがることはありませんので、お客さんもコーヒーショップでカナビスを吸い続けることができます。


大規模栽培

家庭内栽培では、特に借家でカナビスを栽培する場合は、1本でも見つかると直ちに追い出される可能性があるので、多くの人が栽培することをあきらめてしまっていますが、倉庫や地下を使って大規模に栽培している人たちは自分の名前では借りていませんので、家を追い出される危険はなく気にしていません。

もともと大規模栽培は輸出が目的でしたから力を付けてくると、小規模な家庭内栽培は本来のコーヒーショップへの供給へ戻ってきました。ですがそれだけではコーヒーショップの需要をまかなうことはできずに、ショップやその供給者たちも大規模栽培者に頼るようになってきました。

通常、家庭内栽培者の提示する値段はリーゾナブルですが、大規模栽培者は輸出価格以下では首を縦には振りません。このことが、コーヒーショップがカナビスの価格決定に影響力を発揮できない原因になっているのです。


小売価格はどのように決まるのか

これまでの話はコーヒーショップの仕入れ価格についてでしたが、その仕入れ価格がお客さんの買う小売価格にどのように転嫁していくかという仕組みについても説明しておきます。

法理論上は5グラム以上のカナビスを購入することは禁じられていますが、実際には、供給者たちはハシシやバッズをキロ単位でどこかに隠しておいて、そこからコーヒーショップに供給するようにしています。

そうした秘密の在庫は違法ですが、500グラム制限を遵守している限りコーヒーショップに納められると途端に合法なカナビスに変わります。

そして、お客さんに販売すると税金がかかってきます。税率に関しては税務署側では、仕入れ価格に100%、あるいはそれ以上を加えて小売価格を決めるようにいってきます。それ以下ということはあり得ません。

このことは、4ユーロで仕入れた場合には8ユーロ、5ユーロで仕入れたものは10ユーロ以上で売ることを要求しています。このように、税務署は「正規」の値段に対して課税してきますので、もはやカナビスをディスカウントで売ることは許されない状況になっています。

つまり、実質的には税務署が小売価格を決めているのも同然で、コーヒーショップ側では何もできなくなってしまっています。言われた税金を払わなければ、ビジネスも終わりになります。


コーヒーショップ・オーナーの誇り

今回は、カナビスの価格がどのように決まるのかというホットな話題を可能な限りわかりやすく説明しました。それは、ユーロが導入されて以来、カナビスの価格レベルが上昇している理由をみなさんに理解していただきたかったからです。

オランダのコーヒーショップを訪れた際には、ぜひ今回の話を思い出してほしいと思います。ディーラー・カウンターではカナビスの扱いや品質について説明しますが、価格についての苦情はなしにしていただきたいのです。

また、世界中のインターネット・フォーラムでは、オランダのコーヒーショップの値段の高さを非難し、私たちを「欲張りのろくでなし」 とかさまざまに侮辱する意見を書き込んでいるスモカーも少なくないことも事実です。このこともこのブログを書いた理由です。

私に対するそうした非難は正面から受けてきましたが,それは、自分がオランダのコーヒーショップのオーナーで、それに誇りを持っているからです。


ノル・ファン・シャイク
ウイリー・ウォーテル・コーヒショップ
ハーレム、オランダ