オランダのカナビス生産
年間500トン25億ユーロ、輸出が80%
禁止法にともなう暴力犯罪も増加
Source: Drug War Chronicle
Pub date: 20 Oct 2008
Dutch Marijuana Export Industry Generates $2.7 Billion a Year, Prohibition-Related Violence
http://stopthedrugwar.org/chronicle/557/ dutch_marijuana_export_profit_crime
今年の夏にオランダ政府によって指名されたマックス・ダニエル警察本部長が、NRCハンデルスブラット紙 に語ったところによれば、オランダのカナビス栽培者たちは違法に栽培したカナビスをヨーロッパの近隣諸国に輸出して年間25億ユーロあまりを稼いでいると言う。また、ブラックマーケットの取引が拡大したことにより暴力犯罪も増えている。
ダニエル本部長は、警察の統計をベースに見積もると、オランダでは年間500トン以上のカナビスが生産され、その内の80%が輸出されていると言う。「オランダのカナビス・ユーザーは40万人ですが、もしそれだけの人数ならば十分に管理しきれる問題なのです。」
オランダの法律ではカナビスの所持と栽培は刑事犯罪となっているが、現実には、コーヒーショップでの少量販売や個人少量所持については容認されている。また、個人栽培についても4本まではあまり問題になることもない。
だが、大規模栽培については、コーヒーショップへの供給用も含めて禁止されている。このために、他の国と同様にオランダでも禁止にともなうブラックマーケットでの取引事件や暴力犯罪などの問題に直面している。「現在では、殺人、武器、ドラッグといった主要な事件のほとんどすべてにカナビスが絡んでいるのです。」
また、カナビスの取引は合法的な経済活動にまで浸透してきていると言う。銀行はカナビス栽培者に財政支援をしているほか、栽培資材会社は大学に対して農耕法の研究資金を提供し、オランダ政府の国庫すらコーヒーショップの売上から税収の恩恵を受けている。
ダニエル本部長は、「カナビス生産については、犯罪と非犯罪の世界がますます入り乱れてきています。多くの人がカナビスの栽培でリッチになり、10年もしないで大富豪になっているのです。そして、収益の多くを合法的な不動産に投資しているのです。でも、私は、十数年前に殺人を犯した人間が善良な市民に変わるなどとは信じていません」 と語っている。
ダニエル警察本部長インタビュー
Source: NRC Handelsblad
Pub date: October 20, 2008
Police to crack down on cannabis export
http://www.nrc.nl/international/Features/article2030745.ece/Police_to_crack_down_on_cannabis_export
カナビス栽培の何が大きな問題になっているのですか?
「長い間、カナビス栽培といえば、屋根裏で何本から植物を育てているといったイメージでした。1970年代初期に理想主義の若者たちがハウスボートで園芸的にカナビス栽培を開始したのが始まりです。全体の生産量もごく小規模でたかが知れていました。」
「ですが、25年程前に多くの起業家たちが農業大学や研究室を利用するようになったことで転換点が訪れたのです。それまでの植物の平均THC%は4〜9%でしたが、研究開発によって18%程度にまで増えました。30%に達する品種すら出現しています。」
オランダ国内のコーヒーショップで販売されているカナビスよりも輸出されるほうが多いのですか?
「そうです。他の国からの需要は増加して価格も高騰しています。外国のバイヤーたちは、オランダの価格の3〜4倍もの値段であっても払います。重量を増やすために鉄のやすり屑や砂などを混入する業者もいます。以前はコカインやヘロインのようなものだけだったのですが。」
「引き合いが多いのは、イギリス、ベルギー、ドイツ、フランス、それにスカンジナビア諸国です。われわれの推算では、オランダ国内で栽培されたカナビスの少なくとも80%が輸出に回されています。オランダのカナビス価格をベースに計算すると、輸出総額は毎年20億ユーロ以上になっています。」
コーヒーショップではカナビスやハシシの所持や販売が認められている一方で、仕入れることは許されていませんが、警察はこのあたりをどう対処しているのですか?
「コーヒーショップでは、店内に販売用のカナビスを500グラムまで持つことが許されて、お客さんは1日5グラムまで購入できるようになっています。この政策では、ショップのフロントドアでは販売を認めてバックドアでは仕入れことが許されていませんが、商売ができるように明らかにグレイエリアがあることを前提にしているわけです。」
「ところがオランダの西のベルギー国境にあるツルネゼン市では、1日に10〜12キロも販売するメガ・コヒーショップも出現しています。顧客の大半はベルギーやフランス人でオランダ人はほとんどいません。売上高は年間3000万ユーロにもなっています。当然500グラムルールも守られていません。」
警察官はバックドアをチェックしていないのですか?
「サプライサイドの取り締まりを始めていますが、全体を統括するような政策はまだありません。コーヒーショップ側が多量の在庫をどのような手口で隠しているかについては少しずつ分かってきています。」
「そうした在庫の大半は輸出することを意図していますから、押収する計画を立てています。オランダ人顧客の来ないコーヒーショップも広くいえば輸出しているのと同じです。」
オランダがコーヒーショップを認めているのは、ソフトドラッグとハードドラッグの市場を分断するためと言われていますが、一方では、警察はコーヒーショップのカナビスを供給している栽培場を閉鎖している…
「われわれの目的は、コーヒーショップを閉鎖することではありません。組織的な犯罪と戦っているのです。今では、組織犯罪の多くがカナビスの生産に乗り出してきているのです。」
どのような人たちが犯罪者なのですか?
「カナビス生産については、犯罪と非犯罪の世界がますます入り乱れてきています。多くの人がカナビスの栽培でリッチになり、10年もしないで大富豪になっているのです。そして、収益の多くを合法的な不動産に投資しているのです。でも、私は、十数年前に殺人を犯した人間が善良な市民に変わるなどとは信じていません。」
犯罪者たちはお互いに殺し合いをしているのですか?
「ある男性が家を6ヶ月間留守にしなければならなくなり、自分の甥に世話を頼んだのですが、戻ってきて見ると家は栽培中のカナビスの植物で埋まっていました。彼はそれを除去したのですが、拳銃で膝を撃たれて、1万8500ユーロを賠償しろと要求されたという事件も起こっています。」
「また、グローショップの中には、カナビスの栽培に必要な装置を家まで持ってきて、ランプと電気の取り付けまでやっているところもありますが、裏では犯罪組織をつながっていて、住所と名前を教えて収穫物を盗んだりもしています。現在では、殺人、武器、ドラッグといった主要な事件のほとんどすべてにカナビスが絡んでいるのです。」
それほど事態が手に負えなくなって来ているのなら、なぜ警察は迅速に行動できないのでしょうか?
「それは、警察も含めて、たかがカナビスではないかと思っていることにも原因があります。警察にとっては、カナビスで逮捕してもコカインで逮捕しても同じ程度のコストがかかります。ところが、コカインの場合は刑務所に入れられますが、カナビスの場合は笑って済ませることのできる程度の罰金しか科せられませんので捜査する意欲がわかないのです。われわれの社会では、そもそもカナビスを犯罪と結びつけて考えるようには育てられていないのです。」
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しかし、この記事(インタビュー)によれば、オランダで生産されているカナビスの80%以上が輸出されている。つまり、カナビスの大半はコーヒーショップ以外で密売されていることになり、コーヒーショップを閉鎖しても何の問題解決にならないことを示している。
カナビス生産にギャングが乗り出してくるのはそれが禁止されているために大儲けができるからだ。カナビスを合法化して、各国でコーヒーショップでの販売を認め、生産はアルコールと同様に指定業者だけに認めてやすく供給できるようにすれば、ギャングの出る幕はなくなる。
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