オランダ

もっと柔軟なドラッグ政策が必要

元首相、現市長らがバルケネンデ首相に書簡

Source: de Volkskrant
Pub date: 12 Dec 2007
Subj: Plea For a More Flexibale Drug Policy
Author: Bert Lanting
http://www.encod.org/info/PLEA-FOR-A-MORE-FLEXIBLE.html


バルケネンデ・オランダ首相は、他の国々と新しい国際ドラッグ条約を策定する合意を取り付ける必要がある。この国では、ソフトドラッグについてさらに進んだ寛容な政策を追求することが求められているが、1960年代初頭に作られた古い条約がそれを阻んでいる・・・

ファン・アフト元首相、エルス・ホースト元保健省大臣、ゲルト・リールス現マーストリヒト市長らの有識者グループがこのように主張する書簡を作成し、バルケネンデ首相に送った。

有識者グループには、ルウド・フリーマン・ティルブルグ市長、トム・グラフ・ナイメーヘン市長、グリーン左派党のキャサリーン・ビッテンウエハ欧州議会議員、南リンブルブ管轄と中西部管轄の警察署長などもに加わっている。

書簡作成に当たって有識者グループは、現在のカナビス政策がもはや信頼性が低下して有効に機能しなくなってきているという認識の上に立って、カナビス栽培を認めてコーヒーショップへの供給問題を解決するために、早急にカナビス政策をさらに寛容化することを訴えている。

これまでは、オランダ政府も国際条約遵守を理由に何度もカナビス栽培問題を拒んできたが、2008年は国連が過去10年のドラッグ政策を総括し、新しい政策を話し合うカンファレンスが開催される年でもあり、古い条約を改める機会が訪れている。

「1998年の国連会議では、2008年までのドラッグを根絶するという合意が行われましたが、この抑圧的なアポローチは完全に失敗しました。2008年には、これまでとは違ったアプローチを選択しなければならないことは明白です」 とビッテンウエハ欧州議会議員は語っている。




カナビス政策問題解決を求める有識者会議

有識者会議は、2007年10月31日に会合を開き、政治、行政、司法、警察、ドラッグ問題専門家たちが多面的な意見を交わして、カナビス販売に対してネガティブな結果をもたらしている現在の中途半端な寛容政策を早急に改める必要があることを確認し合った。

世界中の多くの国がそれぞれ別個のカナビス政策を採っているために、同じようなネガティブな結果に苦しんでいることはもはや明らかで、 各国のカナビス政策のさらなる展開を阻んでいる現在の国際条約を改めて、国際司法システムとして適正に機能するように協力して探究しなければならない。

わがオランダ国は他の国々と連帯して国際司法システムの変更に向けて努力することで、抑圧のみをベースにした現在の政策ではなく、各国がそれぞれ効果的で信頼性の高い政策を採用できるように努めなければならない。


問題解決に向けての現状認識と政府への進言

I. 現在までのカナビス政策
  1. 現在のカナビス政策は、前世紀の60年代を起源とする国際司法システムをベースにしており、もはや現代の問題に対処するには適合せず、有効な政策を展開するのに障害になっている。

  2. 現在のカナビス政策は、国際司法システムのすき間を使った寛容政策をベースにしている。この寛容政策は実利的ではあるが一時的な解決策に過ぎず、長く続けきたことで政府への信頼が低下してきている。

  3. 現在のカナビス政策は、一環性に欠けているので市民の理解を得るのが難しい。普段の生活では少量のカナビスの使用や小売販売は許されているが、一方でカナビスの栽培や卸売は犯罪として告発されるようになっている。政府がカナビスに禁止に費す労力はその健康リスクに見合っておらず、とりわけアルコールやタバコと比較した場合には不釣合になっている。

  4. 現在のカナビス政策は、さまざまな面で効果が薄くなってきている。市場をハードドラッグからソフトドラッグを分離して小売と犯罪の係わりを抑制してきたというポジティブな面もある一方で、カナビスのTHCレベルや異物混入といった品質をコントロールする法的な手段が用意されていないので、健康への害を削減することができないというネガティブな面が置き去りにされている。

  5. さらに、現在のカナビス政策政策を続けてきたことにより、犯罪組織の卸売の利益が増えて生産活動が巨大化し、また、家庭内栽培を促す結果にもなっている。

  6. 現在のカナビス政策は、行政や警察に重い負担を強いる一方で、一部の国や国連の統制機関の批判を招く結果になっている。

II. 現状の問題点
  1. オランダ議会や地方自治体は、コーヒーショップでのカナビスの小売販売を容認しながら、商品の製造や供給を禁じている現在の一貫性にないドラッグ政策を改めるように政府に働きかけてきたが、その度に国際条約の合意を理由に退けられてきた。

  2. 各国政府がもっと一貫性のある政策を施行できるようにする新たな国際法の枠組みを探る世界的な議論が必要になってきている。

  3. 国民の健康を守り、組織犯罪と戦うために自国の政策を見直す必要があると感じている国がますます増えている。

  4. カナビスは、どこにでも育ち、売買され、世界中で1億7000万人以上の人に使われている。このことは、カナビスの栽培、取引、使用にともなう問題が、どこの国でも共通して起こっていることを示している。

III. オランダ政府が問題解決に向けて行うべきこと
  1. 2008年の初めには、各国の代表が出席して、1998年の国連のドラッグに関する特別総会(UNGASS)で採択された10年間政策を総括する会合が開かれることになっているが、この問題を提起する絶好の機会になる。

  2. オランダ政府は、現在のカナビス政策に代えてもっと信頼できる効果的な方策を求めている他の国々と国際的な議論を開始すべきである。

  3. オランダ政府は、そうした国と力を合わせて公式の共同提案を作成し、来るべきUNGRSSの会合で発表して議論が行われるように積極的に努力すべきである。

  4. オランダ政府は、上の目標を達成するために、適切な財源と人材を割り当てるべきである。

ハーグにて、2007年10月31日

ファン・アフト、元首相(1977年〜1982年)
エリス・ホースト、元保健省大臣
A.アポストロウ、元議員
キャサリーン・ビッテンウエハ、欧州議会議員(グリーン左派党)
R.ドュフォー、ドラッグ政策ファウンデーション代表
G.リーアス、マーストリヒト市長
R.フリーマン、ティルブルグ市長
T.グラフ、ナイメーヘン市長
J.ロニンク、テルヌーセン市長
J.レウンケル、ナールデン市長
W.ベリング、リンブルブ南部管轄警察署長
F.ヘーレ、ブラバント中西部管轄警察署長
A.カイザー、元保健省事務官
V.エベルハード、ドラッグ&アルコール防止エキスパート
M.ジャルメス、トランスナショナル・インスティチュート、ドラッグ&デモクラシー

この参加者を限定した有識者会議は、マーストリヒトのリーアス市長を議長として行われた。

リーアス市長はかねてより、いわゆるコーヒーショップの 「バックドア」 問題を解決するために、カナビスの栽培を正式に認めるべきだと主張してきた。オランダ議会も何年にもわたりそれを支持してきたが、政府側は国際条約遵守の立場から足を踏み出すことを躊躇してきた。

マーストリヒト、カナビス栽培をめぐる現実主義と教条主義の闘い  (2006.7.4)
オランダ、これ以上の緩和なし、司法大臣、議会のカナビス栽培計画を拒否  (2006.6.23)
栽培合法化めぐりラップ対決、オランダ法相とマーストリヒト市長   (2006.2.27)
オランダは素面、正面からカナビス法のあり方を議論  (2006.1.1)
カナビス栽培合法化に前向き、オランダ20大都市  (2005.5.28)
司法相と自治相、カナビスで衝突、オランダ、栽培の合法化をめぐり  (2005.5.26)
コーヒーショップへの供給を合法に、マーストリヒト市長  (2005.3.14)

また、コーヒーショップの 「バックドア」 問題については、『ダッチ・エクスペリエンス』 の中でも詳しく触れられている。

しかし、現在では、この問題がベルギーにも直接波及しており、ベルギー国内でもカナビスの栽培を合法化すべきだという意見が広がってきている。

ベルギーはコーヒーショップを開くべき、カナビス栽培のコントロールをめぐるカンファレンス  (2007.12.4)

一部には、オランダがカナビスの寛容政策を放棄して、すべてのコーヒーショップを閉鎖すれば問題が解決すると短絡的に考える人たちもいるが、その考え方がどうして間違っているかについてはリーアス市長のサイトに良くまとめられた見解が掲載されている。

マーストリヒト市のコーヒーショップ政策、カナビスとコーヒーショップに関する13の誤解と1つの結論

国連の会議は2008年3月20日に予定されている。10年前に、どのような政策が採択されたかは、次の記事に詳しい。

ドラッグフリー世界は実現したか? 国連ドラッグ犯罪事務所の詭弁  (2007.6.15)