From Media Awarenees Project


カナダ

カナビス医薬品をめざす会社が上場


双方向テレビ革命のグルが率いるカナサット製薬

Source: Globe and Mail (Canada)
Pub date: 6 April 2006
Subj: ZNAIMER EYES RICHES FROM POT IN THE MEDICINE CHEST
Author: Leonard Zehr
Web: http://www.mapinc.org/drugnews/v06/n423/a07.html?180


トロントの都市型双方向テレビで革命をおこしたメディア・グル、モーゼス・ズナイマーが、今度は、カナビスをベースにした医薬品の開発に本格的に乗り出し、カナダ人の家庭用常備薬リストに革命を起こそうとしている。

「今日の状況は、100年前にコデインなどのケシから誘導した医薬品が出てきた頃と似ていると思う」 と、昨日行われたカナサット製薬(Cannasat Therapeutics Inc)の上場説明会で彼は語っっている。「カナサットは、カナビスの治療薬としての可能性とカナビスをベースにした医薬品の開発に対して、科学やヘルスケア、政府の政策、社会規範の発展など多岐にわたる観点から取り組んでいきます。」

ズナイマー(63)は、2003年に32年間務めた 17CHUMテレビ の社長兼主任プロデューサーから引退した後、全く新しい何かに取り組みたいと考えていた。ちょうどその頃、2004年、投資銀行のヒル&ガートナー・キャピタルが医薬品開発を目的としたカナサットの立ち上げを進めていたことから、彼は、アルフレッド・サンやクラブ・モナコのブランドで有名な小売業のジェセフ・ミムランと組んでベンチャーに加わることになった。

カナサットは今年になってから、投資会社ロンズデール・パブリック・ベンチャーに逆買収される形でトロント・ベンチャー証券取引所に上場を果たし、昨日の取引では15セント上がって40セントをつけた。

カナサットは過去2年間で650万ドルを資金調達しているが、その資金を使って、サスカトゥーン州を本拠とするプライリー・プラント・システムから少数非支配株を譲り受けている。プライリーは、カナダ政府から唯一カナビス栽培のライセンスを受けた会社で、フリン・フロン鉱山の廃坑を利用してカナビスを栽培している。

ズナイマーは、医療カナビスがハイになったり酔っぱらったりするためのものではなく、「体の機能を補完するもの」 だと強調し、社会からは迅速な沈痛作用を持つ医療薬として受け入れられていると述べている。

実際、カナサットで広報を担当しているサラ・アーウインは、17年前の臀部と骨盤に癌が見つかり現在では医療カナビス・ユーザーの認定も受けている。かの女は 「カナビスが私の人生のクオリィティを改善してくれました」 と語っている。

さらに、カナサットの株の5%を所有するズナイマー会長は、カナビスから鎮痛薬を開発するのにあたっては、リウマチ薬・鎮痛剤薬セレブレックス(Celebrex)のような副作用をなくし、また世間の 「マリファナ喫煙に対する悪評」 も克服しなければならないために、長い時間がかかるとも述べている。

どうやら、すぐに薬局に並ぶというわけでもなさそうだが、会社は、現在、カナビスを血流に送り込むための技術をアルバータ大学の研究所と共同で開発を進めている。執行役員の主任を務めるデビット・ヒルによると、人間での最初の臨床試験を2007年末までに取りかかたいとしているが、医薬品の一般的な認可プロセスで5年はかかると言う。

また、会社ではまず、化学療法やエイズの消耗性疾患に伴う痛みや吐き気、糖尿病やエイズ、帯状疱疹などの神経性の痛みに焦点を絞っている、と医薬品担当主任のウマール・セドは語っている。

その間を利用して、ズナイマーはメディアでの情報キャンペーンを開始し、カナビスの安全性とそれを医薬品として合法的に入手する方法を訴えていくとしている。世界でカナビスを医薬品として受け入れる用意のある国は今のところカナダを含めて3カ国しかない。

「まだ多くのカナダ人がこのプログラムをことを知りません。今のままでは、カナビスを医薬品として利用している多くの人でも、入手するためには自ら犯罪現場に身を晒してストリート・ディーラーから買わなければならないのです。値段も法外で、同じ品質のものを2度と手に入れることもできません。」

現在、カナダでは医療カナビス利用規制法の下で、医師の処方があれば保健省から医療カナビスカードの交付を受けられるようになっている。保健省のカナビス直接配布は2003年から始まり、ユーザーには毎月宅配で届けられている。医療カナビスの価格は1グラム約5ドルで、ストリート価格の3分の1になっている。

参考:
カナサット製薬
廃坑でマリファナを公式に栽培

しかし、カナダ保健省のカナビスは余り評判が良いとは言えず、返品や支払い拒否などで多額の不良債権を抱えて問題になっている。(カナダ政府の医療カナビス、不評で多額の焦げ付き February 05, 2006)

また、現在、保健省からカナビスを購入している認定患者は圧倒的に少なく1300人足らずしかいない。(Campaign promotes medical marijuana Apr 10, 2006)

オランダの場合も政府の公認した医療カナビスは評判が悪く、事実上撤退を余儀なくされている。(医療マリファナ配布事業中止へ March 18, 2005.)

さらに、アメリカでも1976年から、治験薬の適用免除プログラムの一環として政府はごく僅かの患者にカナビスの支給を続けている(現在では新規患者は受け付けていない)が、やはり品質が悪いことが知られている。(Free Marijuana from the Government

果たしてカナサットは今後、「政府がライセンスした生産者は巨額の投資を行っても、実験室のようなところからは低品質のウイードしか供給できない(ノル・ファン・シャイク)」 という事実を覆すことができるか?



From Cannabis Culture Magazine

カナダの大御所が医療カナビスに協力

カナサット製薬に賛否両論噴出

Source: CANNABIS CULTURE MAGAZINE
Pub date: 12 April 2005
Subj: Canadian moguls launch med-pot corporation
Author: Curt Robbins
Web: http://cannabisculture.com/articles/4181.html


モーゼス・ズナイマー
最近、トロントを本拠に医療カナビスに取り組みはじめたカナサット製薬が、カナビス改革運動に取組む関係者の間で賞賛と軽蔑の入り交じった評価を受けて話題になっている。

会社がカナビス・ベースの医薬品の開発を公表してから数年経つが、それ以来カナビス・コミュニティの中で数々の議論と分裂を引き起こす磁場的存在になってきた。

会社が公表している情報はほとんどないと言ってもよいが、ウエブサイトでは「高品質の医療カナビス製品を開発することで、それを必要とする患者さんたちに役立つことをめざしている」 と書かれている。

カナサットの副社長であるアンドリュー・ウイリアムズは、会社が近々発表するカナビス・ベースの医薬品について、「痛みや炎症、痙縮、吐き気などの疾患に苦しむ患者」 の治療を目的としている、と本誌に語っっている。

カナサットは自らを研究開発型の会社と位置づけている。最近、カナダメディア界の大御所モーゼス・ズナイマーと衣料品業界の大物ジョセフ・ミムランの財政支援を得たことで、「今後20年間に、全く新しいクラスの医薬品を開発し、認証を受けてカナダだけではなく世界中で利用できるようにしたいと思っています。この植物が人間の体にどのように作用するかを科学で明らかにすることで、現在のヘルスケアの概念が変わると信じています」 とウイリアムズは述べている。


アクティビストも参加

注目は、これまでカナダの医療カナビス運動で最も貢献度が高く長く活躍してきた3人のアクティビストもこのベンチャーに加わっていることだ。

トロントの法学教授でベテラン・アクティビストのアラン・ヤングは、カナサットの設立者の一人として上級顧問を務めている。彼は「この国ではこれまで、刑事裁判や挑戦的な権利訴訟を通じて、カナビスの医療利用への記念碑的な変革を成し遂げてくることができましが、カナビスを違法薬物から認可された医薬品として受け入れてもらう最終的で現実的な方法は、費用をかけて長い臨床研究をやる以外に道はありません」 と本誌に語っている。

ブリティシュ・コロンビア・コンパッション・クラブ・ソサイエティ(BCCCS)のヒラリー・ブラックもカナサットのマネージメントチームに加わっている。BCCCSはコンパッション・クラブの草分け的存在で、かの女はそこの設立者で事務局長でもあった。現在では役職を離れてボランティアとしてアドバイスを続けている。

「私にとって、カナサットは、医療カナビス市場を違法な状態から合法なものに変えるのに最も貢献できる場所だと信じています。われわれが行おうとしている研究の本質は、医療カナビスが患者さんや医師からよく理解され、すべての人の利益になることを示すことにあります。」

「マリファナ、禁じられた薬草」 の著者でもあり、医療カナビスの擁護者としても有名なハーバード大学医学部名誉教授レスター・グリンスプーン博士もカナサットの医学アドバイサーとして加わっている。なぜ設立に参加したのかという本誌の質問に対して、彼は 「カナビスの奇跡的ともいえる特徴を最大限に引き出し、配布の方法も含めて広くカナビスを応用しようとするビジョンに興味を惹かれたからです。」 と語っている。

だが、カナサットに反対の立場を取るカナビスの合法化運動や医療カナビス運動のアクティビストもいる。医療カナビス栽培の免税措置の撤廃やカナビス医薬品の配布の独占化、コンパッション・クラブの消滅などを危惧する声やさまざまな批判がカナサットに向けられている。

しかしながら、バンクーバーに本拠を置くマーク・エミリーは自らは加わることはないとしながらも、カナサットに支持を表明している。「カナサットに参加しているのは、投資銀行の人からアランやヒラリーに至るまで全員が非常に有能な人たちです。スプレーにしても、薬用キャンデーにしても、植物の成分全体を取り込むデバイスを開発することは素晴らしいことです。バッズの喫煙に頼らずに植物全体の成分を必要とする人びとがたくさんいます。彼らは、この広大なマーケットに医療カナビスの恩恵をもたらしてくれると期待しています。」


プレイリー・プラントをパトナーに

2004年の中頃、カナサットは、プレイリー・プラント・システムズ(PPS)から少数非支配株を購入している。PPSは2000年にカナダ連邦政府の特例を得て、保健省と5年間550万ドル医療カナビスの栽培と供給を独占的に請け負っているが、このことでは医療カナビス・コミュニティからは猛烈な非難を受けた。

カナサットでは本格的に製薬会社として発足すれば、PPSの栽培したカナビスを使って研究や臨床実験を行うことにしている。医療カナビス運動からのPPSに向けられた過去の強い批判に対して、カナサットのウイリアム副社長はパートナーをかばって楽観的な見方をしている。

「PPSに期待して出資したのにはいろいろな理由があります。PPSが、医薬品製造・品質管理基準(GMP)とバイオ安全性に適合したカナダでは唯一の会社であることも理由の一つですが、実際には、PPSのマネージメント・チームの強固な実績がこの投資を行う最大の理由でした。」

議論の的になっているPPSのカナビス栽培施設はマニトバ州のフリンフロンの鉱山の地下坑道の安全な場所にあるが、ウイリアムの言葉とは裏腹に、カナダ保健省から認定を受けて連邦政府からカナビスを購入しているお客さんである医療カナビス患者からは、品質の悪さや安全性についてすら多くの批判が噴出している。

バンクーバー・アイランド・コンパッション・クラブ(VICS)の創始者で所長も務めるフィリッペ・ルーカスは、PPSのカナビスを使うことに対して最も大きな声で批判を展開している。カナサットのような会社が研究にPPSのカナビスを使うことについて意見を聞くと、ルーカスは 「一私企業がカナビスをベースにした治療薬を開発しようとすることには拍手を送りたいと思いますが、臨床研究を行う場合には、科学界からもユーザーからも疑問が出ないような結果を出すために、むしろ低品質で安全に不安のあるカナビスで実施すべきだと考えています」 と警鐘を鳴らしている。

しかし、ウイリアムはPPSとのパートナーシップを断固として擁護し、「カナサットは研究と開発に多額の費用をつぎ込もうとしていますが、だからといって、会社の命運をかけているので最高品質のカナビスを使うのだという批判は誤解です。 PPSが栽培したカナビスの安全性に関して向けられた疑問に対しても長期にわたる検証を行っており、いままで品質を疑問視するような証拠は見つかっていません。PPSの地下栽培施設は最新式のもので、高度に管理され、クリーンで植物栽培にとって最良の環境を備えています」 と反論している。


少数精鋭の新参者

プレイリー・プラントのブレント・ゼッテル社長
消耗症候群や痙縮や慢性痛に苦しむ患者のためにカナビノイドをベースにした医薬品を開発して販売を目論んでいるのはカナサットだけではない。急成長が見込まれるこの市場をめぐっては、フランスやイギリス、イスラエルさらにアメリカでも、政府や民間企業が入り乱れて合法的なカナビス医薬品を作ろうとしのぎを削っている。

例えば、すでに、マリノールという合成THCをカプセルにした医薬品が利用可能になっている。この薬は、癌の化学療法に伴う吐き気やエイズの消耗症候群に伴う食欲不振などの治療薬として市場に投入されたが、皮肉なことに患者からは、むしろ吐き気が増したり、ネガティブな副作用も多いという証言が相次ぎ、薬の評判を落として市場にも陰りが漂っている。

イギリスのGW製薬は、最近、マリノールの競争相手としてサティベックスを投入してきた。サティベックスは、植物の成分全体の成分を抽出して経口型のスプレーにしたもので、2004年12月にカナダ保健省から条件付き認可を取り付け、医師の処方で医薬品として利用できるようになっている。

カナサットの医学顧問のグリンスプーンは、サティベックスが医薬品というよりも市場性を優先していると指摘し、「カナビスを医療品として使う方法としては最善とは言えません」 と批判している。「私の意見とすれば、サティベックスはマリノールと同様に、カナビスを喫煙したり、蒸気で吸引したりする方法に勝てないと思います。味が最悪で、口の中で吸収するのに必要な時間を堪えていることができないのです。従って、マリノールと同じように消化器内できちんとした量が吸収されません。私は、カナビス治療薬としてはニッチ市場しか獲得できないと考えています。」


期待と危惧

カナビス運動に携わる多くの人が危惧しているのが、カナサットの研究が情報公開よりも取引の秘密を重視するようになるのではないかという点にある。反対派は、価値のある情報が患者のために利用されるのではなく、経済的な利益への動機から隠されるに違いないと主張している。

これに対してカナサットのウイリアム副社長は、「いずれは、われわれの最優先課題が患者の要求に応えることだということがわかってもらえると思っています。われわれが学んだことの多くは共有し、研究の成果は医学雑誌に掲載して検証を受けるつもりです」 と語っている。

やがて 「利益に対する情熱」 がカナサットの活動と製品に忍び込むようになるかどうかはわからない。「経験を積んだ研究者で非営利のカナビス・ディストリビューターとしての私から言わせてもらえば、結局のところ疑問は一つに集約されます」 とVICSのルーカルは言う 「末期慢性的な病気に苦しむカナダの患者さんたちに、果たして本当に、最も安全で強力な最高品質の医薬品を提供できるのかという点に尽きます。」