カナダ

先行き不透明な政府公認カナビス

Source: Calgary Herald
Pub date: November 06, 2006
Subj: Embers Dying for Fedral 'Weed'
Auther: Kevin Brooker
Web: http://www.mapinc.org/norml/v06/n1504/a02.htm


「政府謹製のウィードって見たことある?」

私もよく出席する中年同士のカクテル・パーティーでは、こんな質問を何度も聞いたこともあるが今まで見たことはなかった。

「これさ」 と、きっちり巻かれたジョイントを取り出しながら、Mrバッズは言った。「100%合法。国公認のドラッグだ。アルミフォイルの小袋で配達されてくるんだ。宅配便のプーロレターでね。このジョイントを『カンサー・スティク(cancer sticks)』と呼んでいるよ。」  スティックに火をつけると、すぐに部屋は1970年代の香りにつつまれた。パーティの最中だったが、彼には薬の時間だった。

1970年代の香りを感じたといっても、もちろんそのとき以来久しぶりにかいだというわけではなく、ウィードそのものがあの時代に持っていた独特の雰囲気が甦ったのだ。つまり北アメリカのヒッピーたちが栽培マジックでつくり出した謎のマリファナの持っていたあの妖しい感覚とでも言おうか。今日の子供たちが、カナビスをシュワッグ(shwag)と呼んでいる感じとそっくりかもしれない。

以前に読んだところでは、カナダ・マニトバ州のフリンフロン鉱山の地下深くで栽培されている政府のウィードは、プレイリープラント・システムという会社の「バイオセキュア」な施設(チェストメール湖底のずっと下にあるらしい)の中で、MS-17/338と呼ばれる特別な種類のカナビスとして栽培されている。

カナダ連邦政府のウェブサイトによれば、この栽培プログラムでは、どの植物学者がみても、植物1本1本まで完全に同じ性質や効力を持ったものを作ることが目標の一つに掲げられている。だか、何故かすこぶる評判が悪い。

実は、最終製品にはどれも枝の部分が含まれているのだ。これが効果を弱めてしまう。さらに、実質が軽くなってしまう。ストリートだったら、ボロクソに言われる。

「ホント、効力は弱いよ」とMrバッズは言う。「たぶんTHCが10%ぐらいにじゃないかな。これに比べれば、その辺のディーラーが扱っている水耕栽培の上質なのは30%あるからね。でも、弱くても自分には問題ないよ。化学療法での吐き気も抑えられるし、食欲も出るからね。ミラクルさ。悪評でも国ならやめられないしね。」

それから、彼は、医療カナビス・プログラムで政府が発行したIDカードを見せてくれた。ものの30秒もあれば偽造できそうな代物で、みんなは、70年代に使われていた運転免許証みたいだなどと頷きあっていた。

「本物だよ。だけど、もらいたいなんて思う奴はまずいないね。このプログラムを受けたくなるはずないもの。カナダ保健省は、取得資格として、医者が『重篤で衰弱している』と認定することを要求しているからね。不治の病か1年以内に死ぬと宣告されているようなもんだし。」

IDカードがあれば、ひと月に120グラムまで買うことができる。でも、誰でもがそんなに注文できるとは限らない。1グラム5ドルもするし、ストリートと同じで現金で払わなければならないからだ。政府や民間の健康保険は適応されないので、病気であっても経済力のない患者は支払いが続けられなくなり、プログラムから追い出されてしまう。

この事実は、最近行われたグラント・クリーガーの裁判の行方が如何に重要なものかを物語っている。クリーガーは、単に、多発性硬化症で苦しんでいる自分自身と同病の人たちの症状緩和ために数本のカナビスを栽培していたに過ぎない。

彼の活動を犯罪にしてしまうことは間違っているが、もし、そのようなことになれば、患者に良質のカナビスを提供している多数のカナビスのコンパッション・クラブも全部犯罪になって大変なことになってしまう。

しかし、政府のウィード資格を持つ患者の85%は、ブラック・マーケットでも入手できるから、そのことを気にしていないという調査が出ている。また最近、政府は、プレイリー・プラント・システムとの契約を1年延長したが、多くのカナビス活動家は、このような独占的な現状が続くことに懸念を示している。

先週実施された世論調査では、93%のカナダ人が、医師の承認した患者のカナビス使用を合法化することに賛成している。

ハーパー政権がこのことに注目することが望まれるが、政府は最近、医療カナビス研究のための全予算400万ドルを削っている。このことは、圧倒的多数が支持していたとしても、必ずしも将来が約束されていないことを示唆している。

「カードの有効期間は1年なんだ」 と顔を曇らせながらMrバッズは言う。「切れたら、もうもらえなくなるかもしれない。」

現在、国が主体となって医療カナビスを提供しているところとすれば、オランダとカナダがあるが、どちらとも患者からの評判は悪い。その主な原因は、効力が弱いことと価格が高いことが上げられる。

オランダ政府の公式サイトによれば、カナビスは2業者から調達していて、それぞれ、THCは13%と18%、CBDは0.2%と0.8%、価格は5グラムで42ユーロと47ユーロになっている。Netherlans Ministry of Health Office of Medical Cannabis

一方、カナダ保健省のカナビスは9種類ほどで、THCは9%から14%、CBDは微量、となっている。Health Canada Marijuana Quality Control Results

THCの量については、過去の時代の数%という数字から比較するととても多いような印象を受けるが、オランダやカナダの公式な医療カナビスが患者から効力が弱いと指摘されていることは、もともと医療カナビスとして確実に効くというレベルがTHC20%程度であることを示唆している。

このことは、カナビスが禁止される以前に、カナビス医薬品用に使われていた原料がインドから輸入されたTHC20%以上と考えられるハシシだったこととも合致している。

また、両国の公認カナビスのCBD含有量が非常に少ないのも医療効果が上がらない原因になっている可能性もある。

最近では、CBDの以前知られていなかった大きな医療効果が確認されており、医療用の栽培されるカナビスは、THCが大半であるサティバ種よりも、CBDの多く含まれるインディーカ種が主体になっている。また、カナビス経口スプレーのサティベックスなどでは、1回分の標準量約100μL当たりTHC2.7mg、CBD2.5mg、というように多量のCBDが含まれている。

カナダ保健省のカナビスは、当初評判が悪く、返品や支払い拒否などで多額の不良債権を抱えて問題になった。 カナダ政府の医療カナビス、不評で多額の焦げ付き February 05, 2006



当時の製品のTHCは11%〜7%で、特に低濃度のカナビスは人気がなく、2004年の夏に製品の構成を現在のように変更している。その後、購入者は増加したが、今ではまた頭打ちの状態が続いている。人数としても1500人足らずしかいない。医療カナビスのユーザーは1万人と推定されており、大半がディスペンサリーや自宅栽培やストリートで調達している。
Evaluation of herbal cannabis characteristics by medical users: a randomized trial 13 November 2006
Marihuana for Medical Purposes - Statistics  September 1, 2006

カナダ政府は、最近、医療カナビスの研究費補助予算を全面カットする一方で、プレイリー・プラント・システムとの契約交渉を密室で行い、関係者から非難を浴びている。
New deal for federal pot grower; Legal marijuana grow-op to continue but activists decry research cutbacks October 12, 2006

しかし、プレイリー・プラント・システム側は、10月の契約延長で前年よりも80%も注文が増加して、従業員を増やす計画を立てており、返品率も1%以下だと順調なことを強調している。
More pot, please: Demand booming for Prairie Plant's marijuana October 23, 2006

グラント・クリーガーの裁判は、10月26日に行われた最高裁の判決で、控訴審で意図的に陪審の役割を狭めたとして差戻しされ、裁判をやり直すことになっている。

Grant Krieger
'IMPOSSIBLE' POT RULES CHALLENGED
Supreme Court quashes conviction of medical marijuana crusader

プレイリー・プラント・システム
廃坑でマリファナを公式に栽培
カナダ、カナビス医薬品をめざす会社が上場