サティベックス

アメリカでの最終フェーズ臨床試験開始

Source: The International Herald Tribune
Pub date: 26 Nov 2007
Subj: Cannabis drug begins last phase of U.S. testing
Author: Trista Kelley Bloomberg News
http://cannazine.co.uk/content/view/2880/1582/


イギリス・ソールズベリーを本拠とするGW製薬は提携先の日本の大塚製薬とともに、カナビス・ベースの医薬品サティベックスの最終フェーズ臨床試験をアメリカで開始した。サティベックスは鎮痛作用をもつ医薬品で、今回の臨床試験は癌患者を対象にしている。

月曜日に発表された会社の声明によると、5週間にわたる臨床試験には336人の患者が参加して、オピアム・ベースの鎮痛剤が効かなくなった進行癌に役立つか調べることになっている。GW製薬では来年中に結果を集計して報告書を作成し、2011年にはアメリカ当局から認証を取り付けたいとしている。

アメリカには600万人以上の癌患者がいるとされているが、GW製薬では、その40%が激しい痛みでオピアム・ベースの治療の対象になっていると見積もっている。サティベックスはカナビス抽出液から作った霧状のスプレーで、舌下に吹き付けて使うようになっている。現在では、すでにカナダで進行癌と多発性硬化症の鎮痛医薬品として認証を受けている。

ロンドンのクリア・キャピタルのアナリスト、ステファン・ハミル氏は、「サティベックスは、収益性の高いニッチ医薬品になる可能性をもっています。市場では、2008年の始めに出るデータで現実に通用する医薬品として信頼を獲得できると思います」 と語っている。

ハミル氏は、癌鎮痛薬としてのサティベックスがアメリカでは販売最高額は年間2億ドル、全世界では3億5000万ドルになると予想しており、GW製薬の株に買い指標を出している。

当初、GW製薬はヨーロッパでも多発性硬化症の痙攣治療薬としてサティベックスの認証を求めていたが、審査当局から臨床試験の不足を指摘されて7月20日に申請を取り下げ、その影響で株価は過去最大の29%まで急落している。だが会社では、追加の臨床試験を実施して再申請することにしている。

月曜日の発表で株価は1%上昇し50ペンスになっているが、今年全体の下げ幅は43%まで拡大している。しかし、ハミル氏は、「悲観的な局面は今が底で、良い臨床結果が出てくれば反転するはずです。102ペンスを当面の目標にしています」 と語っている。

2月に交わした契約では、大塚製薬側がGW製薬に2億7300万ドルとロイヤリティを支払い、さらにアメリカでの臨床試験や開発コストの全額を負担する代わりに、サティベックスのアメリカ市場での独占販売権を取得している。

大塚製薬は抗精神病薬エビリファイを開発したことでも知られているが、契約では、中枢神経系と癌の治療に使うカナビス・ベースの医薬品の研究と開発でも協力していくことが合意されている。

GW製薬のマネージング・ディレクターであるジャスティン・デビッド・ガバー氏によると、大塚製薬用に、カナビス植物から成分を抽出する作業に取りかかっており、最初の製品が来年早々にも臨床試験で試されることになっていると言う。

また、契約では販売流通コストの全額を大塚製薬側が負担することになったが、契約前は、アメリカでの資金をどのように調達するか頭を痛めていたと明かしている。

GW製薬は、イギリスとカナダでのサティベックス販売ライセンス契約をドイツのバイエルと締結している。またイギリス以外のヨーロッパでの販売についてはスペインのラボラトリオス・アルミラール社がライセンス契約している。

また、ガバー氏は来年には、炎症疾患、肥満症、糖尿病、アルツハイマー病、骨粗鬆症の治療に使うカナビス・ベースの医薬品の開発に協力してくれるパートナーを探すことを予定していると語っている。

今回のGW製薬の発表     GW製薬の株価

アメリカでの通常の 医薬品認証プロセス は3フェーズで構成されているが、今回サティベックスがアメリカで第3フェーズから臨床試験が行われるのは第1、2フェーズが完了したからではなく、ホワイトハウス麻薬撲滅対策室のアンドレア・バーサウエル元次官をコンサルに雇ってロビー活動を展開して、アメリカ当局の特別のはからいを引き出すことに成功したからだった。

役職当時の彼女は、医療カナビスの合法化の動きに反対するロビー活動に従事していた人物で、「サティベックスが利用できるようになれば、国中の患者が天然の無精製な植物を使えるように目論む動きを確実に削ぐことができます」 と語っている。

アメリカ政府の最終的な思惑はカナビスを禁止しておくことにあり、そのためには医療カナビスを絶対に認めない立場を取っている。それに呼応するかのように、GW製薬も、天然のカナビスを原料にしているにもかかわらず、サティベックスは医療カナビスではなく医薬品だと盛んに 違いを強調 している。

思惑渦巻くカナビス・スプレー・サティベックス  (2007.7.20)

現在オランダでも、政府の支援を受けて エコー製薬 がカナビス・ベースの医薬品の開発を始めている。

会社で初の製品になるナミソールは、カナビスから抽出した純度の高いTHCを含んだ錠剤で舌下で溶かして摂取する。会社の サイト には、発現はハーバル・カナビスをバポライザーで摂取するより若干遅い程度で、血中濃度は33分でピークに達し、下がってからも長時間持続する。また、吸収効率(バイオアベラビリティ)については1.5倍優れていると書かれている。

サティベックスに比較すると、ナミソールは摂取も容易で発現も早いうえに持続性も優れている。また、カナビノイドの含有成分構成についても簡単に変更できるとされ、製造コストの点でもサティベックスよりも安くできるという優位性がある。

臨床試験ではサティベックスの方が先行しているが、オランダ政府は5年以内にナミソールの臨床試験を終わらせるとしており、こうした点からすれば、長期的にはカナビス・ベースの医薬品としては、ナミソールなどの製品のほうが将来性があるではないかと思われる。

オランダ、カナビス・ベース医薬品の開発を推進  (2007.11.7)

医療カナビスとカナビス製剤の1ヵ月当たりの価格はおおよそ次のようになっている。(保険補助なしの場合)
  
  1ヶ月の負担1日の使用量 
サティベックス 600〜1000ドル10スプレー1本51スプレーで125ドル
マリノール製剤650〜1200ドル2カプセル5mg25カプセルで270ドル
医療カナビス300〜500ドル2〜3g1g5ドル (カナダ政府)

医療カナビスについては、オランダ政府のベドローカン(THC18%)は 1g6ユーロ (9ドル) で、カナダ政府の医療カナビスよりも高くなっているが、その分THC含有量も多くなっている。また、アメリカのディスペンサリーの場合は、一般にこれよりもかなり高い。

しかし、医療カナビスの場合は自分で栽培することもできるのでずっと安く済ませることもできる。アメリカ政府は医療カナビスを認めず、製薬会社によって製造されたカナビス製剤しか認めようとしていないが、そこには、貧しい人やエイズに苦しむ最貧国の人たちには高価過ぎて買うことができないという問題も横たわっている。

医療カナビスを認める必要があるのは、ひとつには、そうした人々でも自分たちで栽培して利用できるようにしなければならないという理由もある。