思惑渦巻く

カナビス・スプレー・サティベックス


Pub date: July 20, 2007
Author: Dau, Cannabis Study House


天然のカナビスから抽出した液体を原料にして製造されたサティベックには様々な疑問が語られている。


●サティベックスは最初からスプレーだったのか

サティベックスは、カナビスの特定品種をクローン化して栽培・収穫・乾燥した植物から、液化二酸化炭素を使って成分を抽出し、エタノールと医薬品添加物として知られるプロピレングリコール、さらに味の改善のためにペパーミントを加えて、小型スプレーに封入した舌下型スプレーで、1回のスプレーで正確に100μLが噴射するように調整されている。1回分には、THC2.7mgとCBD (カナビジオール) 2.5mgが含まれ、1本にはスプレー51回分が入っている。

摂取は、吸収を迅速にするために、舌を上側に巻き上げて、裏側の血管の浮き出ている赤い部分に向けて噴射する。人によって必要量が変わるので自分に合った回数を探りながら決めていくが、だいたい1週間で最適量が分かるとされている。効果の発現には摂取後15〜40分程度かかる。この時間は経口ピル・マリノールの1〜2時間よりも早いが、カナビスを喫煙した場合の数分よりもかなり遅い。


・最初はバポライザーを考えていた?

GW製薬によるサティベックスの開発は1999年に始まったが、当初は吸入器としては、舌下スプレーではなくバポライザーを試していた。1999年6月の デイリー・テレグラフ紙 の報道には、カナビス抽出液を加熱してから携帯電話位の大きさの吸引器に入れてチューブで吸うと書かれている。また、発現が数分以内であることや、今後、吸入器に熱源を組み入れる予定であるとも書かれている。

このように、GW製薬はバポライザーがサティベックスの有力な吸入装置と考えていたことは間違いなさそうではあるが、なぜ最終的には発現の遅いスプレーになったのだろうか? 

第一理由とすれば、携帯型の吸入器に組み込めるような適当な熱源がなく実現が困難だったことが考えられる。現在医療用バポライザーとして定評のあるボルケーノが発売されたのが2000年11月で、当時はまだ医療用バポライザーというコンセプト自体が認知されていなかった。また、小型で定常的な高温の熱源は現在でも実現されておらす、やっと数年前からいくつかの プロトタイプが提案 されるようになったばかりで、とても当時では技術的に無理だった。


・正確なスプレーで喫煙とハイを避ける

しかし、最大の理由は、肺を経由した搬送方法としては喫煙と同じようなものだとされていたために、イギリス政府が、カナビス医薬品開発のライセンス条件として、喫煙に頼らずハイにもならない方法を求めていたことが上げられる。つまり、医療目的以外に転用されることを防ぐには、喫煙できない形態にしてハイにならないようにしなければならなかった。また、喫煙のような肺による搬送システムを採用すれば、医薬品認可を獲得できる見込みがほとんどないこともあった。

カナビスには、ハイのような精神的効果の他にも痛み緩和などの身体的効果がある。一般的に、この2つの効果の閾値は後者のほうが低く、従ってハイにならずに医療効果を得ることができる。しかし、閾値の差はそれほど大きくないために摂取量の調整が難しい。

おそらく、GW製薬がスプレーを選択したのは、スプレー1回分の噴射量を厳密のコントロールできることと、1度に使うスプレー回数を最小限にすることでハイの閾値までなりにくいようにできるからだ。会社は、最大でも1日に14スプレーを越えないようにすすめてている。


・舌下摂取は昔から行われていた

確かに、サティベックスは、植物の徹底した管理と精巧なスプレー装置で常に一定のTHCやCBDが摂取できるようになっている点は現代的で新しいが、舌下から摂取するという方法は必ずしも新しいわけではない。

19世紀から20世紀前半まで薬局方で医薬品として販売されていたカナビス・チンキは、カナビスの成分をアルコールで抽出したもので、多くは水で薄めて飲んだが、直接舌下の滴下して摂取することもあった。これは、原理的にはサティベックスと変わらない。

また、舌下から摂取する方法としては、熱して小さく丸めたハシシを下側の歯茎の裏に押し込んでおくというやり方も知られている。この方法では、ハシシが徐々に溶け出して舌下から吸収されるので、穏やかだが長時間効果が持続する。



●サティベックスは本当に効くのか

サティベックスは、カナビスの精神的効果と身体的効果の閾値の差を利用して、ハイにならない範囲で医療効果を得ることを想定しているが、当然のことながら閾値は個人で大きく異なる。2つの閾値にほとんど差のない人もいるし、身体的効果の閾値が高くスプレーの回数程度では十分効果が得られない人もいる。

つまり、医薬品会社とすれば当たり前のこととも言えるが、サティベックスは医薬品として認可されることを第一にして、実際には、より多くの患者に役立つことよりも身体的閾値の低い患者だけを対象にしている。


・発現の遅くピークがないサティベックス

また、サティベックスについては当初より、効果が分かり難いのではという懸念がささやかれていた。これは、天然のカナビスの喫煙が直ちに効果を感じられるのに対して、サティベックスのような経口投与では発現が遅く効き始めを自覚しにくい上に、効き方や効果の持続時間に個人差が大きく、しばしば全く効かないと感じることもあるためだ。


Public Information Report on Sativex Oromucosal Spray  イギリス医薬品庁(MHRA)

さらに、多発性硬化症のような神経障害性の痛みは、細胞の損傷を伴って引き起こされる痛みに比べると、心理状態の影響が大きく、僅かな痛みでも大きなストレスを感じる傾向があるので、精神状態を改善することで症状が緩和することも多い。だが、わざわざカナビスの精神効果が出ないように意図しているサティベックスには、この点に対する配慮が欠けている。


・成分構成にバリエーションがない

サティベックスには、THCとCBDがほぼ半々ずつ含まれている。CBDにはTHCとは違った医療効果があるとされているが、実際のところ余り確かな研究は一部の症状以外には明らかになっていない。GW製薬は盛んにCBDの鎮痛効果を言い立てているが、これは、「酔わない」 ことを売りにしている会社とすれば、酔うTHCを多くしたくないという事情が隠されているのではないか。だが、CBDの割合の多過ぎることが、かえってサティベックスの効果を下げてしまっている可能性も考えられる。

さらに根本的な問題として、サティベックスはもともと成分が一定になるように作られているので、成分構成にバリエーションがないことが上げられる。医療カナビスの場合は、品種によって成分構成や医療効果が異なるので、さまざまな品種を試してみて自分に一番合ったカナビスを見つけることが常識になっていることから考えれば、サティベックスの成分構成が合う人と合わない人がいても何ら不思議ではない。


・臨床試験では効果が確認しにくい?

また、臨床試験の二重盲検法では、サティベックスのように発現が遅いと効果を確実に自覚できず、本当に痛みが軽減したかどうか確信が持てないことがあるのに対して、逆にプラセボを投与された人でも一部は薬が効いていると思い込みやすいので、効果の差が狭まって分かりにくくなってしまう可能性がある。

これに対して、天然のカナビスを喫煙する場合は、発現が早く効果のピークが鋭いので確実で痛みの軽減が自覚しやすく、しかも、THCがゼロのプラセポ・カナビスを吸っても効果のないことがすぐに分かるのでプラセボ効果が出にくい。このために、二重盲検法実験でもカナビスの場合は、医療効果がはっきり表れやすいと言える。


・サティベックスはニッチ商品

サティベックスが当初言われていたほど効かないことは、医薬品の認可申請に相次いで失敗していることからも分かる。サティベックスは、2005年には、カナダで認可されたものの、イギリスでの不許可になった。さらに、2007年には再度行った申請でも事実上不許可になり、最終決定前に申請を取り下げている。

実際、カナダやイギリスの一部でサティベックスが利用できるようになっているが、効かないという患者の証言があちこちで聞かれるようになった。

グリンスプーン博士は、サティベックスが医薬品というよりも市場性を優先していると指摘して、「カナビスを医療品として使う方法としては最善とは言えません」 と批判している。

「私の意見とすれば、サティベックスはマリノールと同様に、カナビスを喫煙したり、蒸気で吸引したりする方法に勝てないと思います。味が最悪で、口の中で吸収するのに必要な時間を堪えていることができないのです。従って、マリノールと同じように消化器内で適正な量が吸収されません。私は、カナビス治療薬としてはニッチ市場しか獲得できないと考えています。」



●イギリス政府とGW製薬の思惑

サティベックの周囲には様々関係者の思惑が渦巻いている。

1990年代になるとカナビスを利用する多発性硬化症患者が増加するのにともなって、逮捕されて裁判にもちこまれるケースも増えるようになった。多くが軽い刑量か実質的な無罪になったが、このことでドラッグ取締法の評判が悪くなり、イギリス政府は医療カナビスの合法化議論や医薬品としての開発申請にも前向きに取り組むようになった。

こうした状況の中で、以前から医薬品の開発を手がけ、漢方薬やカナビスに興味を持っていたジオフェリー・ガイ博士が登場し、政府からカナビス栽培の許可を得て、GW製薬を設立してカナビス医薬品の開発に取り組むようになった。

GW製薬が舌下型のスプレーを開発したのは、医薬品としての認可を得るために、カナビスの喫煙による害とハイになって酔う害の二つを避けて、医療的効果だけを引き出すことが必要だったからで、政府からカナビス医薬品の開発許可を取る際の条件でもあった。

舌下スプレーにすれば、錠剤にするよりも血液への吸収が早いので発現も迅速で、嗜好用途へ悪用されにくく、政府もカナビスを解禁せずに患者たちをなだめることができるという条件が満たされると考えた。また、カナビスの植物そのものでパテントを得ることができないので、植物栽培権利を取得してカナビスの特定種をクローン化して薬を製造し、パテントを取って排他的にマーケットを握るという思惑もはたらいていた。

当然のことながら、カナビスが病気に効くという患者証言は大半が喫煙による経験なので、カナビスの喫煙に医療効果があることは分かっていたはずであるが、それを前提にすると、パテントや政府の許可が得られないので、最初から舌下型のスプレーとカナビスの喫煙による効果は比較することもされていない。

ここで、GW製薬は、サティベックスが医療カナビスとは全く違うものである強調し、カナビス禁止法を維持することで、患者や医者が、医療カナビスではなくサティベックスを使わざるを得ない状況を固定することを狙うようになった。

カナビス・コミュニテーも当初はカナビス医薬品の開発に好意的だったが、GW製薬が医療カナビスを分離して抑え込もうとしている思惑が明らかになるにつれ警戒心を強めるようになった。それは、ドイツのバイエルと販売独占契約を結んだことで決定的になった。



●バイエルの思惑

GW製薬は研究開発型の企業なので販売部門がなく、サティベックスの販売にはパートナーを探す必要があった。1999年に開始した治験が2002年の終わりころには7段階の3段階目を終え、良い成績が出ていると発表し、会社はサティベックスを市場に投入するために、販売網と資金を提供してくれる製薬会社を探し始めた。

最初はアメリカの大手製薬会社と交渉していたが進展しなかったが、2003年3月に医薬品庁にサティベックスの認可申請を提出することで有望性を示し、5月にバイエルと提携することに成功し、多額のロイヤリティを獲得した。

ヨーロッパとカナダでの当初の年間販売高が最大で4億ドルと予想するアナリストもいるほど期待が膨らみ、バイエル社は、ヨーロッパでのサティベックスの独占販売権の見返りとして6000万ドル、カナダでの販売権に1400万ドルをGW製薬に支払った。このニュースでGW製薬の株価は急騰した

興味深いことに、この契約ではアメリカの販売権については除外されていた。おそらく、GW製薬側では、ヨーロッパとカナダで実績をつくってからアメリカの大手と交渉することを考え、一方、バイエル側では再度交渉してアメリカでの販売独占権を手中にする思惑があったのではないか。

しかし、結局はイギリスでの認可獲得に失敗し、カナダで細々と販売が続いただけだった。2006年9月の中間決算で計上された年間売上げは約135万ポンドで、当初の期待値の0.5%という惨状に終わっている。バイエルの思惑は完全に外れ、ロイヤリティをせしめたGW製薬の思惑だけが実を結ぶ格好となった。



●アメリカ政府の思惑

2004年4月には治験に遅れが出ていることが明らかになって、GW製薬の思惑に影が出てきた。しかし、サティベックに対する期待を失わせることなく、2005年の4月には、カナダで認可を獲得した。

その勢いで、GW製薬は、アメリカとの交渉のコンサルタント役として、ホワイトハウス麻薬撲滅対策室のアンドレア・バーサウエル元次官を雇用したと発表した。役職当時の彼女は、医療カナビスの合法化の動きに反対するロビー活動に従事していた人物で、「サティベックスが利用できるようになれば、国中の患者が天然の無精製な植物を使えるように目論む動きを確実に削ぐことができます」 と語っている。

アメリカ政府の最終的な思惑はカナビスを禁止しておくことにあり、そのためには医療カナビスを絶対に認めない立場を取っている。そのために、合成カナビノイド医薬品であるマリノールを開発して、薬局で買えるマリノールがあるのだから医療カナビスなど必要ではないと主張してきた。

しかし、マリノールが医療カナビスよりも効かないという定評ができてしまったために、新たにサティベックスを加えて、カナビスの医療使用を認めない口実を強化する必要があった。これは、2006年1月に、アメリカ食品医薬品局が、サティベックスを使ったガンの疼痛緩和の臨床試験を、特別に第3段階から直接開始することまで許可していることからも分かる。

つまり、アメリカ政府は、製薬会社がカナビスに対抗するような医薬品の開発を支援する立場を取り、製薬会社側は、カナビスの医療および一般使用を抑え込もうとするアメリカ政府の目標に同調することで、利益を確保するという思惑が連係している。

さらに、もしサティベックスの臨床試験が失敗すれば。アメリカ政府は、カナビスには医療効果のないことが証明されたと言い出すに違いなく、いずれにしても医療カナビスの攻撃に使えるという思惑も隠されている。



●大塚製薬の思惑

2005年4月、カナダでの認可獲得とアメリカ進出への手がかりを得るまでのGW製薬の勢いは、2ヶ月後にイギリスでの認可獲得に失敗し突如失速してしまう。株価は暴落し、カナダでの販売も思わしくなく、サティベックスに対する評価と期待は一気に萎んでしまった。

アメリカの大手製薬会社との販売契約の思惑は、2006年1月に治験許可を獲得しても、どこからも相手にされることはなかった。結局、パートナーとして業界26位の大塚製薬を選び、アメリカでのサティベックス独占販売権契約を結ぶしかなかった。

大塚製薬がなぜ手を上げたかについては、大塚製薬の実質的な創業者である大塚正士がかねてよりカナビスに興味を持っていたことが背景にあるように思われる。彼は、「80才まで生きられたら、アメリカに6ヵ月間行って、禁止されている薬物、例えばカナビスを吸ったりしてみたいと思っている。そうできれば満足して死ねる」 と述べている。

また、大塚製薬が、統合失調症や双極性障害など中枢神経系障害の医薬品の開発と販売でトップクラスの会社であることが大きく関係している。ドーパミンシステムスタビライザーとして知られるエビリファイは、第三世代抗精神病薬と言われ、カナビノイド・レセプター・システムの働きとよく似ている。

一方、サティベックスに含まれるCBDも、動物実験で中枢神経系障害の改善に顕著な効果のあることが確かめられている。このことから、大塚製薬では、GW製薬からサティベックスの提供を受けて共同研究することに強い魅力を感じたのではないか。

2007年7月、GW製薬は、ガンと中枢神経障害の共同研究で大塚製薬から900万ドルを受け取る契約に調印した。しかし、それから10日も経たないうちに、GW製薬はヨーロッパでの認可申請を取り下げることを発表した。果して、大塚製薬は契約前にそのことを知っていたのだろうか?



●GW製薬の株価の推移

GW製薬は総合的な製薬会社ではなく、サティベックスに特化したバイオ・ベンチャーなので、株価の推移はサティベックに対する市場の期待や見方をストレートに反映している。

2003年3月に、良い治験結果が出ているとしてサティベックスの認可申請したが、期待どおりにならず、2005年6月には、イギリス当局がサティベックスの認証申請を脚下している。

2006年9月には、新しいデータを加えてイギリスとヨーロッパ3国で認可申請したか。結局、再度失敗し、サティベックスは1999年の治験開始から8年を経た現在でも、カナダ以外には認可を得られないままになっている。


http://investing.reuters.co.uk/stocks/ChartsUK.aspx?
symbol=GWP.L&WTmodLoc=InvArt-R4-FactBox-2

治験は1999年6月に開始され、2002年11月の中間発表では、順調に進み良い成績が出ていると報じられた。それに合わせて株価も急騰し、そのままいけば、当初に計画通り2003年にはイギリスで認可を取得し、2004年には販売を開始できると見越して、2003年5月にはドイツのバイエル社と販売提携を結んで株価も最高値をつけた。

だが、2003年11月の過去最大級の臨床結果では、良し悪し入り混じった結果になり株価は下落した。いったん持ち直したものも、さらに、2004年4月には臨床試験が大幅に遅れていることが明らかになって、株価は再び急落した。

2004年の12月には、カナダでの承認交渉が上手くいっていることがわかり、再び株価は持ち直し、2005年4月には、カナダで認可取得に成功した。

しかし6月には、イギリスで、治験結果が十分ではないとして認可を受けることに失敗し、またも株価は暴落した。同時期にはカナダでの販売も開始されたが、高価で十分に効かないという話が広まり、株価は戻らなかった。

2006年1月には、アメリカで臨床試験実施許可を得て一時的に株価は上昇したが、3月の臨床結果が思わしくなく、さらに6月には会社の損失が拡大していることが報じられて以前の水準まで値を下げた。

バイエルと提携した絶頂期は、ヨーロッパとカナダでの当初の年間販売高が最大で2億5000万ポンドまでいくという投資筋の期待もあったが、実際には、2006年9月の中間決算で計上された年間売上げは約135万ポンドで、期待値の0.5%という惨状に終わっている。

2007年2月には、大塚製薬との間で、アメリカでの独占販売件を与える見返りに臨床試験の費用を全額負担してもらうことで提携し、財務見通しを改善したが、サティベックスそのものの商品価値に対する見方は厳しいままで、ほとんど株価には影響していない。

2007年7月、サティベックスのヨーロッパでの認可申請が不調に終わる見通しがでてきたために、いったん申請を取下げた。10日ほど前に、共同研究に費用として大塚製薬から900万ドルを受け取る契約を済ませたばかりだったが、取り下げで株価は上場以来の最低水準まで一気に下落した。



●GW製薬とサティベックス年表

1997-07 イギリス医学会が医療カナビスの法律を作ることを提唱

1998-03 カナビスを利用する多発性硬化症患者が増加するのにともなって、逮捕されて裁判にもちこまれるケースも増えるようになった。多くが軽い刑量か実質的な無罪になったが、このことでドラッグ取締法の評判が悪くなり、政府は医療カナビスの合法化議論や医薬品としての開発申請にも前向きに取り組むようになった。
1998-06 イギリス政府は、GW製薬のゲオフェリー・ガイ博士に対して、医学臨床研究目的でカナビスを栽培・所持するライセンスを与えた
1998-11 イギリス上院は、現在利用できる証拠をもとに、嗜好用途の合法化は認めないものの、猶予のない患者にカナビスを利用できるようにする内容の報告書を作成して政府に提出した。ジャック・ストロー内務相は直ちにこれを拒否し、適切な基準を満たした医薬品のテストが終了しない限りカナビスを利用できるようにはしない、と述べた。

1999-06 GW製薬が治験開始

2000-09 イギリスの多発性硬化症患者リズレイ・ギブソンが、カナビスを所持していたのは痛みの緩和のために必要だったと訴えて無罪になった。
2000-11 ボルケーノ・バポライザー発売開始
2000-12 カナダ政府、プレイリー・プラント・システムに医療カナビス栽培を依頼

2001-03 イギリス上院委員会は、カナビスをベースとした医薬品の開発をもっと早めるように提言した報告書を提出
2001-06 新任のデット・ブランケット内務相は、ロンドン警察がヘロインなどのハードドラッグの取締まりに重点を移しカナビスに対するのソフトアプローチを取ろうとしていることを歓迎した。この発言は、従来からカナビスに対して厳しい禁止措置を維持してきた政府の方針からの際だった転換といえる。
2001-06 GW製薬が ロンドン証券取引所で株式を公開
2001-06 カナダ、医療目的でのカナビスの所持と栽培を許可する 法律 を発表

2002-07 デビッド・ブランケット内務相が、カナビスの分類をB区分からC区分へダウングレードすることを発表した。
2002-11 GW製薬が治験の7段階の3段階目を終え、良い成績が出ていると発表

2003-3 GW製薬がイギリス医薬品庁にサティベックスの認可申請
2003-5 GW製薬がドイツの多国籍企業バイエルと提携
2003-9 オランダ、医療カナビス処方開始、同時期にカナダでも保健省が医療カナビスの提供を開始
2003-11 GW製薬が過去最大級の臨床結果を発表したが、良し悪し入り混じった結果

2004-4 GW製薬、臨床遅れで株価暴落
2004-12 医薬品認可担当委員会がサティベックスの認可決定にはもっと調査が必要と発表

2005-4 カナダ保健省がサティベックスを認可
2005-6 イギリス当局、サティベックスの認証申請を脚下
2005-6 カナダ、サティベックスの販売開始
2005-11 スペイン、条件付きでサティベックスの輸入を認める

2006-1 アメリカ連邦医薬品局、サティベックス臨床試験を認可
2006-3 GW製薬が発表した臨床最終結果では、目立った統計的優位性は見い出せなかった
2006-6 GW製薬、臨床試験の遅れで損失拡大
2006-9 GW製薬、サティベックスをイギリスとヨーロッパ3国で認可申請

2007-2 GW製薬、大塚製薬とサティベックスのアメリカにおける独占販売契約を締結
2007-6 カナダ、サティベックスのガン疼痛治療を許可
2007-7 GW製薬、大塚製薬から、ガンと中枢神経障害の共同研究で900万ドルを受け取る契約に調印
2007-7 GW製薬、ヨーロッパでの医薬品認可申請を取り下げ。データを追加して2008年に再提出を予定。



●アメリカの医薬品認証プロセス


IOM, Marijuana and Medicine:   Stages of clinical testing  クリックで拡大



●参考

GW製薬