最良の医療カナビス摂取法は?
総合評価ではジョイントが一番
Subj: Hits and Misses What's the best way to take medical marijuana?
Date: May 5, 2006
Autor: Ryan Grim
Web: http://slate.msn.com/id/2141091/
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セキュリティ (10点) |
安全性 (5点) |
使い易さ (10点) |
医療効果 (25点) |
総合評価 (50点) |
マリノール |
10 |
5 |
5 |
2 |
22 |
クッキー&チョコ |
8 |
5 |
5 |
11 |
29 |
サティベックス |
10 |
5 |
10 |
15 |
40 |
パイプ&ボング |
7 |
3 |
8 |
23 |
41 |
バポライザー |
7 |
5 |
6 |
24 |
42 |
ジョイント |
6 |
3 |
10 |
24 |
43 |
評価基準
セキュリティ (10点満点)
方法によっては違法なために投獄される可能性もある。合法的に利用できるものについては10点とし、その他については逮捕されやすいほど点数は低くなる。
安全性 (5点満点)
安全性とは、肺ガンや気管支炎のような呼吸器系の障害などを引き起こすかどうかを意味している。しかし、多くの医療カナビス患者さんはすでにガンや深刻な障害を患っているので、すべての人にとって問題になるわけでもないので5点満点とした。
可搬性と使い易さ (10点満点)
病気や障害を抱えた患者さんにとって、外出の際に簡単に持ち運びができるかどうか。さらに、身体が制約された状態の範囲内で使うことができるかどうか。多くの医療カナビス患者さんは吐き気に苦しんでいるのでピルや食用などの経口投与はあまり歓迎されていない。したがって、経口投与の場合は5点減点した。
医療効果 (25点満点)
最も重要なのが医療効果の度合で、痛みや吐き気を減らして、食欲を増進させ、よく眠れるようになるか。副作用より得るもののほうが多いか。点数は、得られる効果の性質、発現の迅速性、確実な効果の予測可能性が備わっているかどうかを評価している。
評価ランキング(昇順)
マリノール(ドロナビノール)
マリノールは、カナビスの主要な活性成分であるTHCを人工的に化学合成した医薬品で、医師の処方があれば合法的に使うことができる。しかし、はなはだ評判はよくない。
その第一の理由は、食べ物を吐いてしまうような患者さんにとってピルを飲むこと自体に問題があるからだ。エンジェル・ライヒさんは、「私の場合は、吐き気と空腹感が同時にあるのです。マリノールはそのことを考慮していません」 と指摘している。
その上、さらに悪いことには、マリノールは効果が現れるまでにしばしば1時間以上もかかってしまうことだ。しかも、いったん効果が現れ始めると、半端ではないほどの効き方になることもあり、頭が混乱して何もできなくなってしまう。マリノールの製造会社も、「めまい、過大な多幸感、パラノイド反応、眠気、思考異常」 などが起こることがあると警告を出している。
「マリノールはまともな効き方をしません。私もできるだけ少ない量で試してみましたが、心臓の鼓動があまりにも激しく、恐ろしいほど調子が悪くなって主治医に来てもらったほどです」 とライヒさんは語っている。
研究者であるフィリップ・ルーカスさんによると、過大な効き方はピルを経口投与することと関係しており、肝臓に入ったTHCが吸ったときの4倍も強力な11-ハイドロキシーTHCと呼ばれる化合物に代謝して血液に送り出され、「恐ろしいまで酔ってしまう」 からだと言う。
セキュリティ: 10
安全性: 5
可搬性と使い易さ: 5
医療効果: 2
総合評価: 22
クッキー&チョコ
カナビス入りのクッキーやチョコレートなどのお菓子については、マリノールの欠点と同様の理由から多くの患者さんに敬遠されている。ピルのように、吐き気のある人には不向きな形態であり、効果の発現についてもしばしば1時間以上かかってしまう。
一方、私がマリファナ・ポリシー・プロジェクトで働いているときに出会った患者さんの中には、カナビスをバターで調理して、トーストやマフィンの上に塗り広げる方法で量を調整して少しだけ摂取している人もいた。
アメリカでは11の州で医療カナビスが合法化されているにもかかわらず、連邦政府は患者を逮捕することもできるようになっているが、私の知っている患者たちは、調理したお菓子などについては大目にみてもらえると言っていた。警察もお菓子を持っている年老いた女性まで逮捕したりすることは滅多にない。
私がインタビューした患者さんたちは、おおむねマリノールと似た評価を下していたが、マリノールよりも優れている面も指摘している。マリノールの成分は合成したTHCだけしかないが、カナビス入りのお菓子は天然のカナビスの成分がすべて含まれている。
「私も食べたり、お茶にして飲んだりしています。お茶の方が発現は早いのですが、クッキーは効果は長く持続します。6時間から8時間くらい元気でいることができます」 と筋ジストロフィーで顔の痛みに悩ませられながら暮らすアリソン・ミュルデンさんは言っている。
セキュリティ: 8
安全性: 5
可搬性と使い易さ: 5
医療効果: 11
総合評価: 29
サティベックス
カナビスをピルの形態で経口摂取すると、吸う場合の迅速な効果発現や摂取量のコントロール性という長所が得られなくなるが、イギリスのGW製薬は、その妥協として、天然のカナビスからTHCなどの全成分を抽出した液体をスプレーにして舌の裏側で吸収させる医薬品を開発している。
サティベックスと呼ばれるこの医薬品は、世界で初めてカナダで全面的な承認を受けて利用できるようになった。アリソン・ミュルデンさんはサティベックスを正式に処方された世界で最初の患者になっている。また、現在までのところ、限定的ながらイギリスやスペインでも使えるようになっている。(アメリカでは治験途中でまだ使うことはできない)
しかし、サティベックスの評判はいまひとつ良くない。「1ヵ月近くにわたって1日50回スプレーしてみましたが、それでも顔の痛みが緩和されることはありませんでした」 とミュルデンさんは語っている。
1ボトルで51回使えるが、スプレー1回あたりの3ドルもするために費用も半端ではない。また、カナビスには病気ごとに最適の品種があることが知られているが、サティベックスには、1品種のカナビスだけからしか抽出されていないという欠点もある。
全体とすれば、患者さんたちはサティベックスのメーカーの努力にはA評価をしているが、製品には物足りなさを感じている。確かに、発現はマリノールやお菓子よりも早いが、喫煙など吸引する方法に比較すると遅く、劣っている。
セキュリティ: 10
安全性: 5
可搬性と使い易さ: 10
医療効果: 15
総合評価: 40
パイプ&ボング
パイプやボング、水パイプなどは、吸引による恩恵で摂取量のコントロールが容易で発現も早く、好ましい特性を備えている。しかし、取扱いには難もある。ミュルデンさんもパイプを使うが、右手が不自由なので自分一人では操作するのが難しく、パートナーの助けを借りなければならないと言う。
従来から、ボングや水パイプでは、水に通すことで煙の好ましくないタールや有害な成分が除去されると言われてきた。しかし、ジョイントよりもクリーンでピュアな煙を求めて使っている患者さんには残念なことだが、ルーカスさんによると、ボングや水パイプにはフィルター効果は全くなく、煙の温度を下げる機能しかないと言う。
セキュリティ: 7
安全性: 3
可搬性と使い易さ: 8
医療効果: 23
総合評価: 41
バポライザー(ボルケーノ)
バポライザーでは、カナビスの有効成分を蒸気にして取り出すので、燃やして煙にする必要はない。
製薬科学ジャーナル2006年6月号には、バポライザーのボルケーノ(ドイツのStorz & Bickel社製)を使ったカナビスの医療効果についての研究が掲載されているが、「煙による呼吸器への欠点を回避しながらも最終的に取り出されたTHCの量はカナビスを喫煙したときに劣らない。ボルケーノは安全で効果的なカナビノイド搬送システムといえる」 としてその有効性を認めている。
カナビスを加熱していくと、燃焼が始まるより低い温度で有効成分が蒸気になって放出される。燃えないので煙が発生することはない。ボルケーノではその蒸気をいったんポリ袋のなかに取り込み、患者さんはそれを吸引するようになっている。
バポライザーには、その他にもヒート・ガンや金属プレートで加熱して蒸気をガラス容器に取り出すものなど、形状や仕組みもさまざまなものがある。欠点としては、可搬性に多少難があるほか、カナビス摂取器具としては値段もパイプなどより一桁高い。
バポライザーは正式な医療器具として認定されているわけではないが、私が話を聞いた患者さんは全員が高く評価していた。エンジェル・ライヒさんも、「ボルケーノは患者フレンドリーで吸引するのも容易です。体が不自由でほとんど動かない患者さんにはボルケーノが最適です」 と語っている。
セキュリティ: 7
安全性: 5
可搬性と使い易さ: 6
医療効果: 24
総合評価: 42
ジョイント
ジョイントは摂取量の調整と効果の迅速な発現の双方を可能にしてくれる方法で、多くの患者さんに最もよく使われている。週に25〜30本のジョイントを吸っているアリソン・ミュルデンさんもその一人で、「ジョイントほど迅速な発現を約束してくれる方法はほかにありません」 と語っている。
ルーカスさんのバンクーバー・アイランド・コンパッション・ソサエティでもボルケーノ・バポライザーを所有しているが、彼も、「ジョイントによる喫煙法には、誰でも引きつける何かがあります」 と語り、カナビスの摂取法とすればジョイントが最も優れた摂取方法だと言う。
患者さんの中には煙の害を心配する人もいるが、「理論的に言えば、シガレット・フィルターを使ったほうがよいと思いますが、実際には、それで多くの害が減ったという事実は知りません」 とも指摘している。
ジョイントの最大の欠点は、カナビスの活性成分の損失が大きいことだ。ルーカスさんによると、ジョイントを吸っていないときに煙になって空気中に消えてしまう成分が全体の50〜70%もあるという。さらに、カナビスを燃やすと強い匂いが発生するので、合法的に認められた患者さんでない限り、堂々と吸うことができないというセキュリティ面の欠点もある。
セキュリティ: 6
安全性: 3
可搬性と使い易さ: 10
医療効果: 24
総合評価: 43
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現在進行中の議論は、医療カナビスに効果があるかどうかではなく、どのような方法で摂取するのが最善なのかという問題に移ってきている。医療カナビスの摂取方法を選択するにあたっては、法的な状況、安全性、使い易さ、得られる医療効果などについて比較検討する必要がある。
私は、2004年まで、カナビスの合法化を目指すマリファナ・ポリシー・プロジェクト(MPP)のスタッフの一員として働いていたが、その時に、カナビスを様々な方法で摂取している数多くの医療カナビス患者さんにお目にかかった。私は医学を勉強したことは全然なかったが、医療カナビス患者さんとお話することで最新のテクノロジーについて学ぶことができた。
患者さんの中には、医療カナビスについて最高裁で争っていたゴンザレス対ライヒ裁判の原告であるエンジェル・ライヒさんもいた。この裁判については、法学部の1年生だった自分にとっては永遠に忘れることのできないものとなっている。
また、バンクーバー・アイランド・コンパッション・ソサエティを主宰し、C型肝炎で自らもカナダの1200人の公認医療カナビス患者の一人でもあるフィリップ・ルーカスさんや、メディカル・マリファナ・ミッションの活動家アリソン・ミュルデンさんなども含まれている。彼女は、カナダでサティベックスが販売開始されたときに最初に処方された患者さんの一人としても知られている。
医療カナビスの様々な摂取方法を評価したこのレビューは、そうした人たちから教えられた体験をベースに作成した。