カナビスに医療効果があるならば

製剤・医薬品化したほうが安全で効果的



神話

アスピリンは、ヤナギの樹皮に鎮痛効果があることから、その成分を化学的に処理して製剤化することで安全で効果的な医薬品として生まれた。カナビスの場合も製剤化して医薬品にしたほうが安全で効果的なはずで、不安定な生の植物を喫煙するのはヤナギの樹皮をしゃぶるのと同じようなもの。
Public faces medical marijuana scam


事実

この神話ではカナビスをヤナギに例えているが、実際にはカナビスはヤナギよりもオレンジと同じで、わざわざジュースに加工しなくても、生のままおいしく食べていろいろな天然のビタミンや栄養素を摂取できる。

単一成分の純度の高い医薬品のほうが効果があるという思い込みは、多数の有効成分がシナジー効果をもたらすカナビスには当てはまらない。


●ドイツで1899年にアスピリンが誕生した当時のアメリカでは、家庭用鎮痛剤としてはカナビス(チンキ)が最も広く使われていた。1937年のカナビス禁止法の制定に当たっては アメリカ医師会は禁止することに強く反対 したほどだった。

しかし、禁止法の施行によって、近代製薬産業の 「進歩」 した医薬品がカナビスを薬局方から追い出すことになった。それ以来、アプピリンは、偏頭痛や関節痛などの慢性的な痛みに対する安価な家庭用鎮痛剤として多量に使われるようになった。

だが、果たして、年間数百人もの死者が出るアスピリン のほうが、かつては同じ目的で使われていた死亡することのないカナビスよりも 「進歩」 して安全になったと本当に言えるのかどうかは極めて疑わしい。


●近代薬学は、例えば、ケシから分泌したアヘンの有効成分を取り出してモルヒネを作りだしたり、ヤナギの樹皮の抽出エキスからサルチル酸を作り、さらに副作用の少ないアセチルサリチル酸(アスピリン)を化学合成することで発達してきた。

やがて、純度の高い単一成分の医薬品のほうが、扱いやすく効力も優れているという通念が生まれて、植物などから有効成分を取り出すよりも化学合成によって医薬品をつくることが主流となった。

アメリカ政府も、ヤナギの皮をしゃぶっているよりも精製したアスピリンのほうが安定してよく効くのだから、THCを化学合成すれば、天然のカナビスよりも安定して医療効果が高いものができると考えても何ら不思議ではなかった。FDAは1985年に、ガンの化学療法にともなう吐き気や嘔吐の治療薬としてマリノールを医薬品として認可した。

しかし、マリノールがカナビスに置き代わることはなかった。患者の大半がマリノールよりもカナビスそのものを使ったほうが効果の高いことに気づいたからだった。

2000年にはアメリカ政府は、マリノールの売り上げを伸ばすために、規制薬物分類の制限を緩めて、医師の管理下で記録を残して使うことが要求される第2分類から、医師の処方箋だけで特定の薬局から購入できる第3分類へと変更したが、逆にますます評判を落として、各州で医療カナビス法が成立する後押しにさえなった。


●現在では、一部の患者を除けば、マリノールよりも天然のカナビスのほうが医療効果が高い ことはほとんどの専門家や患者が認めるところとなっている。

実際、2008年7月に発表された 神経因性疼痛モデル・ラットを使った動物実験 では、多種類のカナビノイドやテレピン、フラボノイドを含んだ天然のカナビスの抽出液のほうが、単独の成分しか含まないマリノールなどの合成カナビノイよりも抗痛覚過敏効果に優れていることが示されている。

結局、少なくともカナビスの場合は、さまざまな成分のシナジー効果でより高い医療効果が得られるわけで、わざわざ精製しなくてもそれ自体が完成した医薬品となっている。その効果は、純粋の化学合成医薬品では真似ることはできない。


●また、カナビスに含まれる60種類以上のカナビノイドには、成分構成に非常に大きなバラツキがあって標準化できないので、医薬品として失格であるという指摘もある。

しかし、バラツキが大きいのはカナビスの品種の違いによるものであって、同じ品種を同じ環境で同じように栽培すれば、成分構成を高度に標準化することができる。このことは、オランダ政府の医療カナビスや イギリスのGW製薬の例 をみればわかる。


●逆に、医療カナビスでは、さまざまなバリエーションの成分構成のものを用意できるので、それぞれの患者は自分の症状に合ったものを選択できるという利点にもなっている。

例えば一般的に、ダイエットが重要な癲癇には、吐き気を抑制して食欲を増進する品種は向いていないと言われているが、食欲増進作用のないCBD成分の多い品種を使ったり、また、一部の地域が原産のカナビスにはテトラ・ヒドロ・カナビバリン(THCV)という食欲の抑止効果があるカナビノイドが含まれているので、それも含んだ品種を使うこともできる。

THCVは、化学構造も効果もTHCによく似ているが、摂取後に急速に発現し急激に消失する。THCVの初期の食欲抑止効果は、その後のTHCの食欲増進効果を薄めるように働くと考えられている。このようなシナジー効果は、化学合成した医薬品では実現することは極めて難しい。