カナビスはゲートウエイ・ドラッグ

コカインを使うようになるリスクは104倍



神話

カナビスの害の中でも最も大きなのが、ヘロインやコカインなどの危険な違法ドラッグのゲートウエイになってしまうことで、ドラッグ使用に対する抑制心が低下して他のドラッグを使う環境に馴染やすくなってしまう。
アメリカ連邦麻薬局(DEA)の医療カナビス神話 4-1

カナビス・ユーザーがコカインを使うようになるリスクは、非ユーザーの104倍以上になると見積もられている。
アメリカ連邦麻薬局(DEA)の医療カナビス神話 4-2


事実
この神話でまず注目すべきなのは、カナビスの最大の害がヘロインなどのゲートウエイになるということで、「カナビスそのものは危険ではない」 と認めている点にある。

そもそも、アメリカでカナビスが禁止された1937年当時は、カナビスが人を殺人鬼にしたり強姦魔にしたりするという圧倒的な危険が理由とされていたので、ゲートウエイ理論など持ち出す必要がなかった。しかし、その後1944年にラガルディア調査報告書などでカナビスでは暴力的にならないことが明らかになってくると、カナビスが危険だという主張を維持するためにゲートウエイ理論がささやかれ始めた。

このように、ゲートウエイ理論は、害の少ないカナビスを危険にしておく必要性ために後からこじつけられた屁理屈に過ぎず、実際に多くの研究で否定されている。


●この時代遅れの理論に関しては、1999年に発表された IOM報告 でも明解に論駁されている。
  • カナビスの使用が他の薬物の乱用を引き起こすという因果を示す確定的な証拠はない。また、仮りに薬物の連鎖を示すデータがあったとしても、医療使用の場合にそれをそのままあてはめることはできないという点に注意しなければならない。カナビスの処方が可能になって医療利用ができるようになっても、違法使用の場合と同じパターンが繰り返されるわけではない。 (p6)

  • カナビスの生理学的な特性が踏石として働くという証拠はない。…むしろ、カナビスの置かれている法律的状況がゲートウエイ・ドラッグにしてしまっている側面がある。 (p99)

  • 注意さえ怠らなければ、特にカナビスがゲートウエイ・ドラッグとしてさらに危険な薬物の先駆けになったりすることはない。 (p101)


●カナビスではコカインを使うリスクが104倍になるという主張については、倍率を計算する元になっている2つの数字に問題がある。この神話ではそれが明示されていないが、ゲートウエイ理論でしばしば使われている計算法は、カナビス・ユーザーでコカインを経験したことのある人の率と、カナビス未経験でコカインを使っている人の率を割算して算出している。

例えば、コロンビア大学薬物中毒・乱用センター では、カナビスを使っている未成年はコカインを使うリスクが85倍になるとしているが、85倍という数字は、カナビス・ユーザーでコカインを使ったことのある人の割合(17%)をコカイン・ユーザーでカナビス未経験の人の割合(0.2%)で割って算出している(17/0.2=85)。(John Morgan and Lynn Zimmer. Marijuana Myths, Marijuana Facts: A Review of the Scientific Evidence. 1997. p. 35)

もし数字が、20.8%と0.2%なら、この神話のように104倍になるが、この倍率は、多くのカナビス・ユーザーがコカインを使っているからではなく、コカイン・ユーザーでカナビス未経験者が非常に少ないために出てきた点に注目する必要がある。

このことはカナビスをアルコールに置き換えてみればわかりやすい。アルコール・ユーザーでコカインを経験したことのある人は少ないかもしれないが、コカイン・ユーザーでアルコール未経験の人も限りなく0に近いだろう。例えば、それぞれを5%と0.01%とすれば、 「アルコール・ユーザーはノン・ユーザーに比較して、コカインを使うリスクが500倍」  ということなる。

結局、リスクが104倍という数字は統計を使った詭弁に過ぎない。


●医療カナビスに反対する理由としてゲートウエイ理論を持ち出す人も少なくないが、これは、医療カナビスのことに無知なばかりか、ゲートウエイ理論を単に感覚的な方便として使っていることを如実に露呈している。

実際に、非常に多くの医療カナビス患者は、医師からすでに モルヒネを始めとする強力な鎮痛剤を何十種類と処方されていて、効果のなさと深刻な副作用に悩まされたあげくにやっとカナビスにたどり着いて安寧を得ている。

こうした医療カナビス患者にとってはカナビスが最終的な薬なのであって、それをゲートウエイ理論でヘロインを使うようになるなどと言うのは、自分の無知を差し置いて、無神経に人を見下した暴言以外の何者でもない。