アメリカ医師会は

カナビスを規制薬物の第1類

のままに据置くことを勧告している



神話

アメリカ医師会(AMA)は、カナビスを中毒性が高く危険で医療効果のないドラッグとして規制薬物の第1類のままにして据え置くことを勧告している。 アメリカ連邦麻薬局(DEA)の医療カナビス神話 2-5


事実

この神話では、いかにもアメリカの医療の頂点に立つアメリカ医師会が、カナビスを危険で医療価値のないドラッグにしておくことを積極的に主張し、医学界全体が医療カナビスに否定的になっているかのように印象づけようとしている。


●しかし、アメリカ医師会の 医療カナビスに対する見解 を見てみると、基本的にカナビスに医療価値があることを前提に、カナビスの医療利用についてさらなる適切な対照研究を行うことや、確実に研究用のカナビスが入手できるようにすること、煙によらない摂取デバイスの開発の必要性などについて強調している。

その上で、研究結果が十分に揃うまではカナビスを規制薬物の第1類のままにしておくことを勧告する内容になっている。つまり、カナビスの分類据え置きは、そうした研究が十分に行えることが前提になっている。

(1)われわれAMAは、深刻な症状にある患者の臨床前データ、ケーススタディ証言、あるいはそれらを適切に整理したエビデンスが、疾病の理解に役立ち、治療に応用できる可能性が考えられる場合には、カナビスとカナビノイドに関する適切で管理された一層深い研究を実施できるようにすることを求める。

(2)われわれAMAは、そうした研究の結果が示されるまでは、カナビスを規制薬物法の第1類に留めておくことを勧告する。

(3)われわれAMAは、カナビスの医療実用化を進める目的を持った高度な設計の臨床研究を実施するために、国立衛生研究所(NIH)に対して、交付申請にともなう行政手続きが迅速に処理されるようにすることを強く求める。具体的には、
  1. 公的な審査委員会を通じて、カナビスの臨床研究手順に関する安全基準と、被験者に対する標準的なインフォームド・コンセント・モデルを開発して、それらを研究者に情報提供する

  2. 臨床研究に十分な財政支援を行い、認定された研究者が臨床研究目的のカナビスを適正に入手できるようにする

  3. 研究の第一認可者が国立衛生研究所かどうかにかかわらず、麻薬取締局(DEA)に登録された研究者が、食品医薬品局(FDA)の認可を受けた正規の臨床研究を実施している限りは、さまざまな効力の均質カナビスとプラセボを国立ドラッグ乱用研究所(NIDA)から確実に入手できるようにする
(4)われわれAMAは、カナビスの燃焼と煙の吸引にともなう健康への害を減らするために、国立衛生研究所がその資源と影響力を使って、煙を出さずにカナビスやTHCを搬送できるシステムの開発を行うべきであると考える。

(5)われわれAMAは、患者に効果のあるケアを実施するためにはさまざまな治療法について拘束を受けない自由な情報交換が不可欠であり、医師と患者の間でどのような代替治療について話し合われたとしても、双方のいすれも刑事制裁の対象にすべきではないと考える。


●アメリカ医師会が医療カナビスに効果のあると考えていることは、1997年の報告書 を見れば分かる。
喫煙カナビスは、経口THC(マリノール)と同等かそれ以上の効果を持っている。また、プロクラルペラジンなどの従来の制吐剤に比べても、吐き気や嘔吐を抑える効果はずっと高い…

事例証言や調査及び臨床データによれば、喫煙カナビスと経口THCには、多発性硬化症やトラウマの痙縮に苦しむ一部の患者に対して症状を緩和させる効果がある…

喫煙カナビスは、断続または慢性の痛みの苦しむ患者に恩恵をもたらす…

喫煙カナビスでは、好ましくない精神効果を最小限に抑えながら治療的恩恵が得られる服用量を患者が自己調整することが可能で、経口THCよりも発現が早く、効果が不必要に長続きすることもない…


●これに対してアメリカ政府当局は、実際にはカナビスの 医学研究を妨害 して研究自体を行わせないように画策したり、研究成果を隠蔽 したりして、アメリカ医師会の主張の一部だけを逆利用して、カナビスには医療価値がない根拠に仕立て上げている。


●現在では、医療カナビスを支持する医療関係グループの数は着実に増加しており、その一部には次のような団体が正式に支持を表明している。

エイズ行動委員会、 アメリカ家庭医学会、 アメリカ看護師協会、 アメリカ予防医学協会、 アメリカ公衆衛生協会、 エイズ看護師協会、 カリフォルニア家庭医学会、 カリフォルニア医師会、 カリフォルニア薬剤師協会、 コネチカット・エイズ看護士協会、 フロリダ医師会、 ロサンゼルス郡エイズ委員会、 アメリカ・リンパ腫基金、 ニューヨーク州医師会、 アメリカ公衆衛生政策協会、 アメリカ・エイズ患者協会、 アメリカ・中毒看護師協会、 ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン、 ニューメキシコ医師会、 社会的責任のための医師団、 サンフランシスコ医師会、 バージニア中毒看護師協会、 ウイスコンシン公衆衛生協会、 アラスカ・カリフォルニア・コロラド・コネチカット・ハワイ・イリノイ・ミシシッピー・ニュージャージー・ニューヨーク・ノースカロライナ・テキサス・バージニア・ウイスコンシンの各州看護師協会、……(ペイシェエント・アウトオブタイム のリストから)

このリストに最も最近加わったのがアメリカ内科医師会(ACP)で、今年の2月に、カナビスの分類変更と医療効果を調べる研究の拡充を求める 決議を採択している。アメリカ内科医師会は12万4000人のメンバーを有するアメリカ第2の医師グループで、アメリカ医師会に次ぐ規模を誇っている。また、昨年の11月には、アメリカ精神医学会総会も 満場一致で医療カナビス支持 している。

さらに、2008年6月には、アメリカ医師会の下部組織である医学生部会もシカゴで開催された年次カンファレンスにおいて、カナビスを医療利用できるようにするためにアメリカ医師会は規制薬物分類の変更を支持すべきだとする 決議を満場一致で採択している

また、ミシガン州では、アメリカ医師会ミシガン支部 が医療カナビスの住民条例をめぐって従来の反対の立場を取り下げて、中立で臨むことを決めて注目されている。


●もともとアメリカ医師会は、1937年にカナビス禁止法が制定されるときに、禁止する十分な理由が揃っていないと唯一異議を唱えた ことで知られている。しかし、政府の執拗な圧力を受けて、その後の数年間で態度を変えさせられてしまった。そのトラウマは現在も残っており、何かにつけて連邦麻薬局に擦り寄った立場を保持し続けている。

現在、アメリカ医師会の規制薬物分類の変更を阻止しようと最も熱心な下部団体の一つがアメリカ薬物中毒学会(American Society of Addiction Medicine)で、「カナビス中毒」 というコンセプトを軸に、政府から多額の研究資金を引き出したり、カナビス禁煙クリニックなどを開設したりしている。

アメリカ医師会がなかなか医療カナビスの支持に踏み切れないのは、必ずしも科学的な理由があるわけではなく、こうした団体とアメリカ政府の意向や利権が合致して政治的に操られていることが大きく影響している。しかし、医学界全体の流れは確実に医療カナビス支持に向かっている。