カナビスの効力が
以前より強くなって危険が増している
神話
現在のカナビスは10年前のものよりも効力が強くなっている。ミシシッピー大学の効力監視プロジェクトのデータによれば、路上で販売されているカナビスの平均THC含有量は、1985年に3.71%だったものが1998年には5.57%に上昇している。また、アメリカ産のシンセミラの平均THC含有量は、1977年に3.2%だったものが1997年には12.8%まで増えている。
(アメリカ連邦麻薬局(DEA)の医療カナビス神話 1-10)
事実
この神話では、1回1錠に設定されている薬を何錠も飲んでしまうと大変なことになるという通常の医薬品のアナロジーを使って、カナビスの効力が強くなった分だけ危険も増していると思い込ませようとしている。
だが、カナビス喫煙では吸っている最中に効果が現れるので、いつでも中断して摂取量を調整することができる。この点では、いったん飲んでしまえば良の調整できない錠剤とは事情が全く違う。また、カナビスには、どんなに多量に使っても死ぬようなことはないという安全性も備わっている。
カナビスの効力が強いほどリスクも大きくなるという神話が一般受けしやすいのは確かだが、実際には、効力が高くなるに従って危険が増えることをきちんと示した研究は全く見当たらない。
●アメリカで実際にどの程度効力が増してきたかについては、ホワイトハウス麻薬撲滅対策室(ONDCP)が2007年4月25日に発表した プレスリリース を見ればよく分かる。効力は20年間で約2倍になっているが、グラフからも明らかなように、効力が上昇している理由は2000年以降に低品質のカナビスが淘汰されて高品質のカナビスが普及して平均値が上がったためであることが示されている。
つまり、昔からカナビスには高品質のものから低品質のものまで幅広く使われていたわけで、高効力のカナビスが最近になって現れたわけではない。2008年5月に発表されたオーストラリアの研究者による過去30年10万サンプルの メタ分析 でも、「確かに、一部の国では効力の上昇が見られるものの、サンプルの間には非常にばらつきがあり、カナビス・ユーザーが経験している効力のばらつきは、数年あるいは数十年の上昇傾向よりもその年々の幅のほうが大きい」 と結論づけている。
また、2008年6月に発表されたヨーロッパ・ドラッグ監視センター(EMCDDA)の 『カナビス便覧、グローバルな課題と地域の経験』 でも、最近のカナビスの効力が数十年前よりも極めて強力になって危険が増しているという主張に対して、欠陥データにもとづく 「都市伝説」 に過ぎないと書いている。
●そもそも効力の強いカナビスがより危険だということを示す証拠はあるのだろうか?
まず第一に、高効力なほど危険という主張は、カナビスが害を引き起こす原因がTHCにあるという仮説に立脚しているが、THCはカナビスの煙に含まれる数百もの化合物の一つに過ぎない。つまり、よりTHC濃度の高いカナビスのほうが危険であるという主張が成り立つためには、THC自体がそれ特有の害を引き起こすものであることが必要になる。しかし、そのような害については周知して認められているとはいい難い。
また、ハシシについて考えてみれば、明らかな証拠などないことがわかる。ハシシは、普通のカナビスを精製して製造した非常に強力な形態をしているが、通常でもTHC濃度は15〜20%もあり、場合によっては50%に達することもある。ハシシの利用については地域によって大きく異なり,アメリカではあまり一般的ではないが、EMCDDAの報告にもあるように一部のヨーロッパ諸国ではむしろ主流になっている。
もし、高効力が危険なのであれば、そうした国々ではより大きな害が顕在化しているはずだが、実際には、ハシシの使用者がマリファナなど普通のカナビスの使用者よりも健康を害しているというような証拠は見られず、そのような問題は起こっていない。
また、高効力=危険という見方を疑わせるものとしてマリノールがある。マリノールはアメリカ政府の肝入りで開発された医薬品で、ガン患者の制吐剤やエイズ患者の食欲増進剤として正式に認可されているが、実体は合成THC100%で、最高度の効力を持っている。
(カナビスの効力が飛躍的に上昇? 効力の強いカナビスは危険か?)
●実際には、高効力のカナビスよりも低効力のカナビスのほうがリスクが大きい。これは、低品質のカナビスには異物が混入されている可能性が高いことと、多量に喫煙する必要があり、その分だけタールなどの有害物質の摂取量も増えてしまうからだ。
低品質カナビスのリスク
- 使用量がふえる分だけ喉が熱にさらされる時間が長く、吸い込む煙の量も増えてタールなどの有害物質の摂取量も増える。
- 効果が十分に自覚できずに惰性で過剰に吸ってしまい、依存性に陥りやすい。
- 増量のために形状や色の似ているオレガノやキャトニップなどのスパイスが混ぜられていることもある。
- 効力増強のためにアニマル・トランキライザーやPCP)、ハード・ドラッグなどが混ぜられることもある。また、ホルムアルデヒド漬けにされることもある。
- 効力の強いハシシは、効力を薄めても需要があるために、増量のためにさまざまな物質が混入されることがある。例えば、イギリスの ソープバー には、アニマル・トランキライザー、ケタミン、アスピリン、テレピンや蜂蜜、着色用ヘンナやコーヒーや靴研クリーム、ジーゼルやベンゼン、トルエンなどが混入されていることもある。
高品質カナビスのメリット
- 吸う量をユーザー自身が調整できるので、効力が強ければ自然に量を減らすようになる。
- 喉が熱にさらされる時間が減り、吸い込む煙の量が少なくなる分だけタールなどの有害物質の摂取量も減る。
- 使用量の上限を決めやすい。
- 異物混入のリスクが少ない。
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