現在では、カナビスよりも

もっと効果的な医薬品が利用できる



神話

現在では、カナビスよりももっと効果的な医薬品が利用できるようになっている。
アメリカ連邦麻薬局(DEA)の医療カナビス神話 2-1

医療カナビスを擁護する人たちは緑内障のような病気の治療にカナビスが使えると盛んに言っているが、緑内障はすでにより効果的な医薬品が利用できるようになっている疾患の好例で、IOM報告でも、緑内障の進行を遅くしたり眼圧を低下させる治療には6群の医薬品と多重外科手術が利用できると書いている。
アメリカ連邦麻薬局(DEA)の医療カナビス神話 2-2


事実

この神話では、最も優れた医薬品以外は不要だと言いたいようだが、ある患者に最もよく効く医薬品でも他の患者では全く効かないこともあるのが当たり前で、現実には、同じ疾患でも何種類もの医薬品が用意されている。つまり、他にもっと良い薬があるからと言っても、それがカナビスを排除しなければならない理由にはならない。

1999年に発表された IOM報告書 には、次のように書かれている。
  • 確かに症状によってはカナビスよりも効果的な医薬品もあるが、必ずしもすべての患者に同じように効くとは限ぎらない。 (p159)

  • どのような場合でも、通常の医薬品にはよく反応しないという患者群が存在する。こうした医薬品でも、特に化学療法による嘔吐やエイズの消耗症候群のような症状のある場合には、カナビスの持っている不安緩和や食欲増進や吐き気の抑制などの効果と組み合わせるとよく対処できる。 (p3,4)

  • 問題は、現在や将来の医薬品がカナビスよりも優れているかどうかということではなく、現に、一部の患者たちはカナビスによって良い効果が得られているという事実にある。 (p153)

また神話では、いかにも新しい緑内障の医薬品のほうがカナビスよりも効果があるかのように書かれているが、実際には必ずしもそうではなく、IOM報告 では、「確かにカナビスには眼圧を下げる働きがある。しかし、効果の持続は短く多量の摂取が必要となるために、緑内障の治療に一生使い続けていると多くの副作用に見舞われる」 ことが大きな問題となっている。

また、「カナビス喫煙の効果を調べた臨床研究からは、カナビスの喫煙による緑内障の改善効果は期待できそうにない」 とも書かれているが、現在からしてみれば、当時の実験に使われたカナビスの効力が弱いことや、品種的に緑内障に合っていなかった可能性もある。

現在では、医療カナビスの効力もTHCが18%と4倍以上に増え、緑内障の治療効果の高い品種が開発されている。また、カナビス喫煙で肺癌や気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などのリスクが増えないことが明らかになり、性能の良いバポライザーが利用できるようになっているので当時の背景とは全く異なってきている。

さらに、現在使われている緑内障医薬品であっても時間とともに効果が失われてくると報告されいる。これに対して、カナビスでは20〜30年以上も視覚が失われていないケースも知られており、実績的な裏付けもある。


緑内障 は、失明の最大原因の一つになっており、加齢、遺伝、人種、眼圧などがリスク・ファクターといわれている。しかし、そのうちでコントロール可能なのは眼圧だけなので、治療の中心課題は眼圧を下げることに向けられる。現在のところ失った視野を全て取り戻すのは手術でも無理で、根本的な治療法は存在しない。

カナビスには眼圧を下げる働きがあることは多くの研究で示されている。しかし、カナビス喫煙や経口投与での効果の持続時間が3〜4時間しかなく、一日に何回も摂取する必要があること、また、一生続けていると大きな副作用に見舞われる可能性があることが問題にされている。

一方、現在緑内障に使われている医薬品に問題がないのかと言えば、必ずしも満足な結果が得られているわけでもない。2006年に発表されたメイヨ・クリニックの報告 には次のように書かれている。
カナビスを吸うと眼圧の下がることが発見されたのは1970年代始めにまで遡るが、カナビスに含まれるカナビノイドがどのような働きをしているのかは現在でも分かっていない。だが、眼の内部にはカナビノイド・レセプターのCB1が存在することが見出されており、それが糸口になって、将来の研究でそのメカニズムが解明される可能性もある。

現在では、緑内障の治療のために開発された医薬品が使われるのが普通になっているが、やがて効果が失われてしまう。研究者たちは、眼に直接的に作用して、しかもカナビス喫煙にともなう精神効果や副作用のないカナビノイド医薬品の開発に取り組んでいる。

●実際には、標準的な緑内障治療や手術では不満足な結果しか得られなかった患者の多くが、カナビスで緑内障の眼圧コントロールができたと報告している。

例えば、アメリカ政府が特定の病気を持つ患者向けにカナビスを配布していた実験新薬プログラム(IND)で最初の適応患者になった ロバート・ランダルは、緑内障で、政府の要求するあらゆる薬を試し何回となく手術を受けたがすべて失敗し、ついに1976年にアメリカ政府から正式にカナビスを支給されるようになった。彼は2001年6月に亡くなったが、カナビスのおかげで生涯にわたって視力を失うことはなかった。彼は、医療カナビスの普及にも生涯を捧げ 「医療カナビス運動の父」 と呼ばれている。

また、実験新薬プログラムは1992年に打ち切られたが、現在でも生き残って政府のカナビスの支給を受けている5人の適応患者の一人である エルビー・ミューシッカ は、緑内障であらゆる薬を試し何回となく手術を受けて右目を失明したが、カナビスによって左眼の視力が回復している。「自分の奇跡はカナビスがもたらしてくれた」 「今思えば、緑内障で失明することは決してなかった。失明したのは無知が原因だった」 と語り、今ではカナビスの合法化運動に積極的に取り組んでいる。

現在、オランダ政府の医療カナビスの生産を受け持っているジェームス・バートン は自身が緑内障患者でもある。彼の家系は遺伝的な欠陥から男性全員が緑内障で、完全に盲目かまたは多少視力が残っていても法的盲目のどちらかになっている。アメリカでは自分用の医療カナビスを栽培していたが、それが発覚して1年間投獄され、オランダに移住した。政府の容認のもとで医療カナビスの栽培を始め、現在では オランダ政府の公認カナビスを栽培 している。世界最高の医療カナビス栽培者としての彼の存在は、カナビスが緑内障に有効なことを端的に示している。

また、カナビスには、緑内障と背中に痛みの治療 を同時に行うことができるといった、単なる緑内障治療薬にはない特徴も備わっている。


●カナビスの長期的影響については、2002年に、アメリカ政府の治験新薬プログラム(IND)で 11〜27年にわたってカナビスの使用し続けている患者の健康状態を調べた研究 が知られているが、驚くべきことに、カナビス使用によるネガティブな副作用に苦しんだというエビデンスは全く出てきていない。

この中には、毎日8グラムのカナビス(THC3.8%)を25年間吸い続けている緑内障の エルビー・ミューシッカ も含まれている。


●現在では、IOM報告以後に出てきたこうしたデータや 本格的なバポライザー や高THCの医療カナビスの出現で、当時の懸念や背景 とは全く違ってきている。

もちろん、カナビスがすべての緑内障患者に有効というわけではないだろうが、効く患者が多くいることも確かで、少なくともカナビスには深刻な副作用をともなわずに眼圧低下の効果があるかどうかはすぐに自覚できるので、法的問題さえなければ第一選択薬として試してみる価値は十分にある。

また、最近、オランダのシードバンクでは医療用のカナビス品種の開発も盛んで、中には緑内障の治療効果を謳った種子も販売されている。カナビスによる緑内障治療は、医療カナビスの普及とともに今後ますます見直される可能性がある。


●参考文献