医療カナビスの効力と利用法

ホーンビイ博士の医療カナビス研究


ホーンビイ博士

Source: Cannabis Culture Magazine
Pub date: 11 Oct, 2005
Subj: Dr. Hornby Of Advanced Nutrients
Author: Fred Leduc, Photo by Sadie C.
http://www.cannabisculture.com/articles/4552.html


私は、最近、世界でも有数のカナビス研究者の一人として知られるポール・ホーンビイ博士にお話を伺う機会に恵まれた。

ホーンビイ博士は、カナビスのTHCなどの濃度を測定するヘドロン・アナリティカル社(Hedron Analytical Inc) の代表を務め、最近では、アドバンスト・ニュートリエント社(Advanced Nutrients) と協力してカナビスの栽培に特化したいろいろな栽培用製品を開発してきたことでも知られている。そうした製品はあちこちのハイドロフォニックス・グローショップで販売されている。

また、ホーンビイ博士はこの5年間、バンクーバー・コンパッションクラブで、どのようにしたらカナビスがより患者の役に立つのかを知るために、特定の疾患に効果のあるカナビスのプロファイルの作成に取り組んできた。このプロファイルが充実してくれば、患者は自分自身の病気や症状に最も適合したカナビスを選べるようになる。




ホーンビイ博士は、本来、何を研究する学者なのでしょうか?

私は、人体病理学で博士号を取得しました。生化学のマスターを目指している時に、人体の生理状態を変える物質の研究に取り組んで、麻酔薬で学位を取ったのです。


それがどうして今ではカナビスに深く関わることになったのですか?

産業用ヘンプがきっかけだったのです。何年も前のことですが、友たちが私の働いているラボに電話してきて、ヘンプのTHCの測定はできないかと聞かれたのです。私も以前からカナビス植物が非常に有用なことを知っていましたから、これはいい機会が訪れたと思ったわけです。

そこで、手続きはいろいろ厄介でしたが、ヘンプのTHCを分析するライセンスを取得しました。そんな具合でヘンプを分析してプロファイルを調べるようになったのですが、ますますそれにのめり込むようになったのです。

そんな時に、バンクーバー・コンパッションクラブのヒラリー・ブラックさんに偶然お会いしたのです。彼女は、特定の症状の軽減と品種には関連があると教えてくれました。つまり、病気の人は自分の症状に合わせて、特定の品種を繰り替えして求めてくるようになると言うのです。


いつごろから研究を開始したのですか?

6年前からです。でもその時期はヘンプのサンプルも探していてそのプロファイルに注目もしていました。ヒラリーと話をしているうちに、医療用のカナビスもプロファイルを集めれば、患者さんたちがなぜ同じ品種を繰り返し求めてくるのか説明できるのではないかと気付いたのです。

そこで、異なった品種のカナビノイド・フロファイルの違いに注目するようになったのです。その点では、ヒラリーの観測した事実は当然そうなっていてもおかしくないので、特に驚くようなことでもありませんでした。


最もよく使われている品種にはどのようなものがありますか?

何年もたくさんの異なった品種を調べてきましたが、コンパッションクラブの品種はその一つ一つが効果を持っているのです。どれかが特に効くという意味ではなく、例えば、癲癇の発作を和らげる特別な品種を患者さんたちが求めているならば、その品種のカナビノイド・プロファイルを調べるのです。


症状ごとにプロファイルを絞り込でいける?

ご存知のように、データは構築中ですが、これは全く新しい試みで、これまで誰もやったことはないのです。

何年か前のことですが、カナビノイドの医療的な側面に興味を持つようになってから、いつも使っている医学研究のデータベースを駆使して、カナビスに関する信頼できそうなあらゆる科学的な臨床研究を調べたのですが、どれも製薬会社が合成したマリノール(ドロナビノール)のようなものだけで、天然のカナビス製品を使った研究などまずありませんでした。


大半の臨床研究が合成されたカナビノイドで行われていたとは…

実際に研究を調べてデータを見れば分かります。どれも天然のカナビス製品ではないのです。天然のカナビスを喫煙実験した研究などはほとんどありません。臨床研究に限れば合成ドロナビノールが大半で結果はさまざまです。効果があったという研究もあれば、反対に効かなかったというのもあります。




患者さんが何か特別の問題に遭遇したり、あるいはある品種が特別によく効いたというようなケースはありますか?

今のところ特にありません。どのカナビノイドが特定の症状を和らげるかについてよく知るためには、もっとテストしてデータを集める必要があります。もともと誰も知らないわけですから。また、そうした研究をすることについては正式に許可を得ているわけでもありませんから、ひっそりと時間をかけてやらなければならないのです。でも少しずつ分かってきてもいます。この問題でエキサイティングなのは、検討すべき材料がたくさんあって、学ぶことがとても多いことです。


常にTHCを高くすることが最終ゴールですか?

そうではありません。何といってもCBD(カナビジオール)とTHCの比率が非常に重要です。


最近、THCが36.8%あるカナビスのことを聞いたのですが、何かご存知ですか?

ええ。私が分析しましたから。


どのような植物だったのですか?

私が見つけたのですが、口が膝まで垂れるようでしたよ。信じられませんでした。とても信じ難いほどの驚きでした。


成熟した植物だったのですか?

ピーク? …この件については会社の実験中だったので話しても大丈夫かどうか分かりませんが、まあ問題はないと思いますので… この現象は最近見つけたもので、生育ステージが8週間目の植物です。THCがピークだったのは6週から7週の間です。8週や7週では2〜3%ほど低くなっています。


なぜなのでしょうか?

たぶんフラッシングのせいです。フラッシングは、肥料などから出てきた培地の塩分などを洗うために数週間に1度ぐらい水を多量にやってリーチングすることですが、フラッシングしている時には肥料は植物には取り込まれなくなるわけです。

ですので、樹液性のカナビノイドの生成は止まってしまって増加は見られなくなってしまいます。しかし、一方では、葉の重量は増えていきます。 つまり、カナビノイドは葉の重量的には希釈されることになります。しかしながら、7週目で植物をカットしてしまうと葉の成長は止まり、そこにあった栄養素がバッズには行ってカナビノイドだけが増えることになる。まあいつもとは違った状態になる。

われわれは、可能ならば、フラッシングを続けている間でもTHCの生成を促す栄養素を探し出そうといろいろ実験しました。それが見つかれば、栽培者にとってはビッグニュースですから。この現象を発見したのは約1ヶ月前のことですが、実際には以前から起こっていたのに気付かなかっただけなのです。




THCが30%以上の品種とすればどのようなものがありますか?

私が知っている限りでは、ノーザンライトが一番でカルガリーで栽培されたものです。


アドバンスト・ニュートリエント社が認可を受けたたくさんの医療カナビス患者と関係を持っているのを知っていますが、どのようにしてデータを入手しているのでしょうか? そうした何年もの経験から、大半の人たちが求めて必要としているような特定の品種が明らかになってきましたか?

魔法の品種はしばしば見てきました。同僚は、サルモン・クリークとビッグバッズの2種類の品種を上げていましたが、カナビジオール(CBD)が21%もあるのです。THCが21%という品種なら珍しくもないのですが、この品種は、CBDが21%でTHCは8%だけなのです。

CBDは医療的には非常に重要ですので、こうした品種はとても役に立ちます。私に関心のあるのは、医療価値に焦点をあててただ品種を列挙するのではなく、カナビノイドの比率や量がどうなっているかという点にあります。


品種と疾患の対応関係には何らかの結論に到達していますか?

私は、天然の野性の品種には、カナビノイド比率のもっといろいろなバランスののものがたくさんあることを知っています。ブリティシュ・コロンビアのバッズは、程度の差はあっても、THC以外のカナビノノイドの生成が抑制されていてTHCの比率が高くなるようにされています。

私が考える真の医薬品は、THCだけではなくもっといろいろなカナビノイドを含んだものです。THCは重要な働きをしますが、他のカナビノイドにはTHCの効果を調整するといった重要な役割を果たしているからです。


ブリーダーと開発する品種の方向性に相談したりしていますか? 目標とする品種などはありますか?

私自身の研究については、大半が間違いなく相談しています。今までお話してきたように、正確なプロファイルとそれぞれの症状に最も医療的恩恵のあるものを探しています。どのようなものが癲癇に良くて、どのようなものが多発性硬化症に良いのか、緑内障に人にはどうか… そしてそれぞれの正確なTHC、CBN、CBD比率はどうなっているのか…


まだ、それぞれの疾患の対応品種は選定していないのですか?

一応、ラインアップしたことはあります。


それについてはまだ伺っていないと思うので、何か教えてもらえますか?

癲癇の場合については前にもお話したように、CBDの多い品種が向いています。一般的なルールとすれば、THCよりもCBDが高ければ高いほど癲癇の治療には良いのです。従って、THCのレベルよりもCBDのレベルのほうが高い品種が見つかったら、品種としては癲癇グループに加えています。




実際の品種名で教えてもらえますか?

どの品種がどの疾患に特別に治療効果があるのかという意味でしょうか?


そうです。

それは本質的な意味で言うことができません。品種についてはカナビノイド成分は変わってしまうことがあるからです。しかし、カナビノイドのプロファイルはそうではありません。私が探しているのは、特定の品種ではなくて、特定のカナビノイド・プロファイルなのです。われわれが選んでいる品種は目的とする特定のプロファイルを持っている品種で、品種名で特徴を表すことなどはできないのです。


何度調べてもある疾患のプロファイルに非常にフィットして安定した品種もあるのでは?

何度も言うようですが、癲癇に効果のあるプロファイルはTHCよりもCBDの比率が高いのです。プロファイルについてはそうなのですが、少なくとも私は、どれが最もフィットしているかについては具体的な品種名まで知りません。これに対して、例えば、ヒーローというサティバ系の品種はTHCが25%でCBDは2%で痛みの治療には非常にフィットしていて有効です。

また、効果は摂取法によっても大きな影響を受けます。例えば、カナビノール(CBN)は非常に興味深いカナビノイドなのですが、吸った場合は破壊されてしまいます。ところが食べた場合は破壊されないという性質があります。


もっと詳しく教えてもらえませんか? 実際には、何種類くらいのカナビノイドを問題にしているのですか?

最も重要なカナビノイドがΔ9-テトラヒドロカナビノール(THC)で精神活性作用を持っています。カナビスを吸うとハイになるのはTHCのせいです。

カナダのBCバッズでは、テトラヒドロカナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカナビノール(THC)、カナビノール(CBN)、カナビジオール酸(CBDA)、カナビジオール(CBD)の5種類が主なカナビノイドです。

この5種類については、量はいろいろですが、どのBCバッズにも含まれています。ブリダーたちが長年取り組んできたのは、交配と生育環境を操作することで、この5種類カナビノイドの中でTHCのレベルを引き上げることです。


THCとTHCAとはどのように違うのですか?

THCAは、化学構造的には、THCの一部が水素(H)ではなくカルボシキル基(COOH)に置き換わっただけなのですが、重要なことはTHCAには精神活性がないということです。従って、THCAをたくさん摂取してもハイにはなりません。

ところが、THCAを加熱すると1対1でTHCに変化するのです。実際のところ、BCバッズではTHCAの含有量が最も多いのです。ですから、そのまま食べてもハイにはならないのですが、バッズを燃焼させると熱で直ちにTHCAがTHCに変わってハイになれるのです。

バッズのカナビノイドを分析する際には、このことが問題になってきます。私がカナビスの分析に使っているのは、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ですが、普通、カナビノイドの分析は99%がガス・クロマトグラフィーが使われています。


分析方法に問題が隠されているということですか?

そうなのです。液体クロマトグラフィーは室温近くで動作しますが、ガス・クロマトグラフィーの場合は、サンプルをガス化するために加熱して蒸気にしなければなりません。ところが、カナビスを加熱すればカナビノイドが化学変化して特性が変わってしまうのです。また、サンプルを加熱してから適当なところで中断すれば、欲しいTHCの値を得ることもできるのです。ですので、ガス・クロマトグラフィーでは、さまざまな値の結果を広く操やつることが可能なのです。

私の場合は加熱しませんから、THCに変わっていないTHCAを自然な状態で知ることができます。当然のことながら、薬を作るためには自然の状態をベースにして考える必要があります。

ですが、ガス・クロマトグラフィーのようにサンプルを加熱してしまえば、元の自然の状態は全く失われてしまいます。THCAには精神活性作用がありませんから、このことは重要です。いったんTHCAがTHCに変化してしまった後では、元の状態がどのようなものだったのかを知ることはできません。


THCとしては自然の状態でも含まれている?

確かに自然の状態でも少しはTHCは含まれていますが約1%程度です。しかし、もしTHCAが20%だとすれば、加熱の仕方によってはTHC20%の変化する可能性もあるわけです。

マフィンやクッキーを焼く場合は250℃で20分などというレシピもあるかも知れませんが、実際にはこれではうまく行きません。医療カナビスのTHCAがTHCに転換を始める温度は約60℃です。そして200℃以上になるとTHCAは気化して蒸発し始めて空気中に失われてしまうのです。

従って、クッキーにしたりする場合は200℃よりも十分低い温度で焼く必要があります。そうすればTHCAを蒸発させずにTHCに転換させることができます。自然の状態ではそのまま食べてもTHCAには精神活性はありませんが、いったんTHCに転換すれば食べても精神活性を得ることができるようになるわけです。

ですが、焼く時間が短過ぎると転換が十分に行われないこともあります。以前には、カナビスを焼いた製品でTHCAが10%でTHCが全く含まれていないものにも出会ったことがありますが、加熱時間が短過ぎたか、または温度が高過ぎて蒸発してしまったことが考えられます。カナビスを焼いた製品を作る際には、十分に注意を払って、蒸発させることなしにTHCAをTHCに転換させることが必要です。


天然のカナビスをそのまま食べても効果がないようですが、お茶のようにして飲んだ場合はどうなのでしょうか? (この項はカナビス・スタディハウスが追加)

基本的にカナビノイドは油性で水にはほとんど溶解しません。ですか30分ほどお湯で煮るとTHCAとお湯で熱転換したTHCがごく僅かに溶け出してきます。しかし、興味あることに、溶解には飽和点がありますので一定以上は溶け出しません。つまり、元のカナビスの効力とは関係なくお茶の効力はいつも同じになるのです。

非常に僅かのTHCで症状が緩和する患者さんにとっては、カナビス・ティー はハイにならずに効果を得ることができるので有効な摂取法です。

また、お茶を煮出す際にミルクやバターなどの油性成分や糖分を少し加えておくとTHCがたくさん溶出して、効力の強いバング飲料にもなります。


いろいろ有難うございました。最後に何かあれば…

私を突き動かしているのは、「発見」です。言い換えれば、探索の機会が与えられているということです。これは、1900年頃のアマゾンの河口にキャンプをはり、カヌーとパドルを用意して上流に向かって川全体の探索を開始しようとしている心境です。

私にとっては、アマゾンが天然のカナビス製品なのです。この分野はまだ誰も探索していません。それだけに楽しみで一杯なのです。目ざとい人ならば、これを金儲けのチャンスと思うかもしれませんが、私の動機は違います。わたしが興味あるのは、カナビスという植物でしか生成されないカナビノイド成分の未知の性質を探索することなのです。

カナビスに対する私の動機は「発見」です。本当にまだ何も行われていないのです。カナビスの医療価値という面では、天然のカナビスを使った製品に関する信頼できる研究はまだ何も行われていません。ある日を境に、それが私の目標になったのです。

強制閉鎖される前のマークエメリー・シードバンクでは、医療用途に向いているとされる種子もたくさん扱っていた。カナダ保健省でも、医療カナビス認定患者が自分で栽培する際の種子の入手先にも推薦していた。

医療用カナビスは個人個人の症状によって最適な品種が異なるために、エメリー・シードバンクではピュア・サティバからピュア・インディーカまで20品種の種子が2粒ずつ入ったテスト・パックも提供していた。