カナビス・ティー



一口に 「カナビス・ティー」 と言っても内容が全く違うものがあり、しばしば混乱して使われている。どれも同じようなものと思っている人も少なくないが、実際には、ハイになるためのバング、単にお茶として楽しむフレーバー・ティー、医療用に症状の緩和のために飲むメディカル・ティーの3種類に分けることができる。


●バング

インドでは、バングという言葉は植物の雌の葉と花そのものを指して使われているが,アルコールの入っていないカナビス飲料を指すこともある。バングは、主にハシシには適さない葉を原料にしたもので、古くから庶民に飲まれてきた。

基本的には、カナビスの葉とミルク、砂糖、香料、水で作る。ミルクと砂糖を使うのはTHCが油溶性で水に溶けにくいためで、水は全体量を調整するために加える。

ジョイント数本分のカナビスを冷たい水でよく洗ってから乾かし、粉にして、砂糖と少量のミルク、ブラックペッパーなどの香料とこね合わせてペースト状にする。それをカップに移して、少しづつミルクを加えて溶かし、最後に水を加える。

通常はカナビスのTHCの一部が不活性の酸になっているので、事前にレンジで2分ほど加熱処理したほうが効力が強くなる。


●カナビス・フレーバー・ティー

現在では、カナビス・ティーと称するハーブ・ティーなども販売されている。THCの入っていない葉をつかったものや、ラズベリーやマテ茶にカナビス・フレーバーを加えたティーバッグなどさまざまなものがある。しかし、いずれもカナビスをお茶として楽しむためのもので、ハイになるわけではない。


●カナビス・メディカル・ティー

医療用のカナビス・ティーは、ハイになるためではなく、多発性硬化症などの痛みの緩和や睡眠改善のために使われる。すべての患者に当てはまるわけではないが、症状緩和に必要なTHCの量はハイになるレベルよりもずっと低い患者の場合は、カナビス・ティーでハイにならずに症状を緩和することができるので、普通に仕事や日常生活を過ごせる。

しかし、THCの量が少なくハイを目安に摂取量を調整することができないので、繰り返し正確な量を摂取するための工夫が必要になる。医療用のカナビス・ティーは、カナビスを水だけを使ってTHCを煮出してつくる。THCは油溶性なので水には溶けにくいが、僅かには溶け出す。

だが、飽和点があるので一定以上は溶けないので、原料のカナビスの効力にばらつきがあっても一定した低濃度溶液を作ることができるという特徴がある。これを定量のカップに入れて飲めば、いつも決まった量のTHCを摂取することができることになる。

オランダ保健省医療カナビス事務所(OMC)の発行している パンフレット には、ティーの作り方が掲載されている。1リットルのお湯にカナビスを1グラム入れ、かき回しながら15分間ゆっくり煮出す。普通のお茶と同じように茶漉しで固形分を分離して、カップに移して砂糖やクリームなどを入れて飲む。残ったティーは密閉した容器に入れて、冷蔵庫で5日間保存することもできる。


Helsingin Sanomat


このカナビス・ティーの成分については、オランダ・ライデン大学の研究チームが政府の高品質医療カナビスを使って詳細な 化学分析 を行っている。

その結果によると、処理前のTHC濃度は19.7%で、処理後の再乾燥した原料は15%になっている。つまり4.7%だけが溶け出したことになる。このために、処理後の残留カナビスでも十分に強いので、茶殻のように捨てる必要はない。

カナビスのTHCは、活性のあるフェノールTHCと活性のないTHCAから構成されているが、処理後の溶液1リットルあたりのTHCは10mgで、THCAは43mgだった。植物の中で生成されるのは大半が活性のないTHCAだが、100℃以上に加熱すると速やかに活性のあるTHCに変化する。しかし、溶出過程の温度は十分には高くないために、利用できるTHCは10mgのみで、当初の全THC(197mg)の5%に過ぎないことになる。

こうしたことから、カナビスは事前にレンジで2分ほど加熱して不活性のTHCAをTHCに変換しておいたほうがよい。また、THC濃度は保存によって急激に低下することも明らかになっているが、保存前にクリーム・パウダーを加えると低下が大幅に抑えられるとしている。