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THCの加熱による変化
THCには、脱炭酸と気化という2つの重要な化学反応がある。この2つの反応はそれぞれ、およそ100℃と200℃に加熱すると起こる。
脱炭酸
植物の内部で生化学的の生成されるTHCは、厳密にはTHCAと呼ばれ、THCの一部が水素(H)ではなくカルボシキル基(COOH)の型をしている。このこと自体は科学的にはありふれたことで重要な特徴とは言えないが、薬学的にみるとTHCAには精神活性はなくTHCとはまるで異なっている。
しかし、温度を上げていくと、THCAは炭酸ガスと水を発生させて簡単にTHCへと化学変化する。この反応は常温でも少しずつ起こっているが、100℃を越えると急激に加速する。(詳しくはここ)
乾燥させたバッズ(室外栽培)の状態でのTHCAとTHCの比率はおよそ20:1〜2:1で、THCAのほうが圧倒的に多い。亜寒帯のヨーロッパなどでは17:1程度だといわれているが、熱帯地方で育ったほうがTHCの割合が多なる。ハシシの場合は6:1〜½:1で、バッズよりも幅は狭い。これはほとんどの産地が熱帯や亜熱帯地方にあるためかもしれない。
いすれにしても、カナビス製品には精神不活性のTHCAが多量に含まれている。しかし、このことがカナビス・ユーザーの間で話題になることはあまりない。それは喫煙によってTHCAが加熱され、吸引中すぐにTHCに変化してしまうからだ。喫煙では温度が500℃以上に上がり、脱炭酸反応を引き起こす温度よりもはるかに高い。
問題になるのは食用にした場合だ。クッキーなど高温で調理するものであれば製造過程で脱炭酸反応が自然に起きてしまうが、低温調理では事前にカナビスだけを加熱して脱炭酸反応を済めせておく必要がある。やり方は簡単で乾燥状態のカナビスを密封せずに電子レンジでカサカサになる程度(約2分)に加熱すればよい。
また、ハシシ・オイルなどを抽出する場合、抽出温度は普通80℃以下なので、やはり事前に脱炭酸反応を済めせておくほうがよい。
気化
THCは約200℃で気化して蒸気になる。普通に喫煙する場合(500℃以上)はこの温度よりはるかに高くなるので自然と気化したTHCを吸い込むことになるのでほとんど気にする必要はない。
しかし、クッキーなどに調理する場合は加熱過程で温度を上げすぎてTHCを蒸発させて失わないように注意しなければならない。脱炭酸反応を考慮すれば、100〜150℃ぐらいの範囲で調理しなければならないことになる。
また、この気化温度は、喫煙温度に比べればかなり低く、セルロースなどを燃焼させずタールを発生させないという特徴がある。この性質を巧みに使って、有害なタールなどを吸引せずにTHCだけを摂取する装置(バポライザー)が開発されている。
バポライザーを使うと、蒸気だけを発生し煙が出ないのでクリアで苦みがない。普通のユーザーは刺激が物足りなく感じることもあるが、医療カナビス患者や肺の弱い人、煙の嫌いな人などには大変有効な吸引方法といえる。多少高価だが、THCの吸収効率が良いために消費するカナビスの量も少なく結局は節約にもなる。
THCの気化温度が200℃というのは、食用、バポライズ、喫煙とさまざまな方法での摂取を可能にしている。脱炭酸温度よりも十分に高く、燃焼温度よりもはるかに低いという理想的な温度ともいえる。誠にカナビスの奇跡の一つと言ってよいかもしれない。
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