カナビスのバイオアベラビリティ

●カナビスを摂取した時に、カナビスに含まれている活性成分のTHCがすべて体内に吸収されるわけではない。例えば、喫煙では燃焼で破壊されたり、副流煙になって失われるものもある。食べた場合には未消化のまま体外へ排出されてしまう部分もある。

実際に体内で利用される率(バイオアベラビリティ)は、喫煙の場合では10〜50%、経口摂取した場合は10〜20%と言われている。


Comparison of the Effectiveness of THC Application to Humans via Relievant Routes
F.Grotenherman, Cannabis and Cannabinoids 351p, Haworth Integrative Healing Press 2002


●カナビスを喫煙した場合の効率については、ユーザーの吸い方によって大きく異なる。どの程度のハイを求めているかによって一回に吸う量が違うし、吸うインターバルも異なる。また、吸引力や煙の密度、煙を体内に留めておく時間、その他にも、カナビスの効力、THCの燃焼による破壊率、副流煙になって失われる率、器具の中に付着して失われる率、喫煙方法、上気道の粘膜に捕獲される率などによっても変化する。

これらの中でユーザーの吸い方に余り影響を受けないのが、THCの燃焼による破壊率、副流煙になって失われる率、器具の中に付着して失われる率で、特に副流煙のないボングやバポライザーではかなり正確な測定が行われている。


●ボングについて詳しく調べた 研究 によると、意外なことに21.1%が燃かすに中に残されている。また、3.3%が水に吸収され、7.8%が柄の部分に付着し、水の中に落ちてしまった植物にも8%残されている。全体では約40%がボングの中で失われ、吸い口に到達した煙の中のTHCの量は最初の約40%になっている。


Marijuana Smoking: Factors that Influence the Bioavailability of Tetrahydrocannibinol.



●またこの研究では、ジョイントのTHCがユーザーに到達する率は20〜37%で、燃焼で破壊される率が23〜30%、副流煙で失われる率が40〜50%になると見積もっている。

ユーザーへの到達度は1分間にジョイントを吸う回数によって変化し、急いで吸うほど到達度も高くなるとしている。観察の結果では、ユーザーが普通に吸う平均回数は1分間に2.6回で、1本吸い終わるのに17.5分かかっている。急いで吸う場合は、1回の吸う時間が増えてインターバルが短くなることで6分で吸い終わっている。


Marijuana Smoking: Factors that Influence the Bioavailability of Tetrahydrocannibinol.



●バポライザーの場合は、燃焼によって破壊される部分はないものの、やはり加熱によって破壊されたり器具に付着して失われるTHCがある。ボルケーノを使った最新の オランダの研究 では、バルーンの中に取り込まれるTHCは平均で54%となっている。

また興味深いことに、この実験では、病人たちは吸入したTHCの35%を直接吐き出している。これは、病人たちの吸引力や肺活量が少ないことや、症状の緩和が目的でハイになるほどTHCを必要としていないことが影響しているのかもしれない。


ボルケーノ・バポライザー



●吸い方のテクニックでジョイントとボングを比較するとボングが最も難しく、吸引力の弱い人では火が消えてしまって吸い切れない。その代わりにきちっと吸える人ではジョイントよりも効率が良い。

ボングで問題なのは吸いカスにかなりのTHCが残留してしまうことで、これを防ぐには、一服で吸い切れる程度の少量だけを使って、ボールに押し込まずによく火が回るようにする。

ジョイントではボングのように一気に煙を吸うことはできないが、吸い切るのに時間がかかる分だけハイを調整しやすいという利点もある。しかし、THCは数分で血液中に取り込まれてしまうためにあまり時間をかけて吸っているとハイのピークがフラットになる可能性もある。

だが、ピークがフラットになることは医療患者では逆に利点になることもあり、ジョイントの使い方のバリエーションの広さを表している。このことは、カナビスの喫煙法でジョイントが最も好まれる理由にもなっている。


●吸い方のテクニックが最も容易でしかも効率が良いのはバポライザーで、煙に伴うタールなどの問題もない。こうした点からすれば、カナビスの吸引にはバポライザーが最も優れていると言える。

だが、バポライザーの蒸気は煙のような刺激がないことから、喫煙に慣れた人では物足りなく感じたり、効き方に違和感を抱く人もいる。しかし、現在までのところ、十分な温度管理もできない低性能のバポライザーも少なくなく、また使い方が未熟なことも原因になっている可能性もある。実際には、バポライザーも喫煙と遜色なく、よく効くことが実験でも示されている。


Vaporization as a smokeless cannabis delivery system: a pilot study



●また上の研究では、バルーンへのTHC到達度が平均54%になっているが、この値はバポライザーの使い方で大きく変化する可能性もある。例えば、ハシシ0.5gをそのままの塊で使えば、バポライザーでは実質的に蒸気はほとんど発生せず、期待通りの結果は得られない。しかし、同じハシシを砕いて小さな粉にすれば表面積が一気に増えて濃い蒸気が発生し、結果的に蒸気の効力も強くなる。

気化することのできる活性成分はカナビスの表面に隣接した部分に限られているので、カナビスをグリンダーでできるだけ細かくすれば効率がよくなる。また、バポライザーではカナビスは燃焼しないので、残ったTHCがなくなるまで繰り返し使うことができるという特徴がある。しかし繰り返す場合は、固まったカナビスをほぐし直したり、バポライザーの温度を若干上げたりするとよい。


●カナビスを食べて摂取する場合は、素材に含まれるTHCは一旦すべて体内に入ることになるが、その全てが血液に吸収されて効果を発揮するわけではない。

THCは水には溶けにくいので、アルコールや糖分が媒介しないと吸収が悪くなる。したがって、調理法やユーザーの胃や腸の状態などによって効き方は大きく異なる。また、食べた場合は、THCは、肝臓の中で代謝されてTHCの4〜5倍の効力を持つ11-ハイドロキシーTHCに変わるとも言われている。

こうしたことから、食べた場合は個人差も大きく一般的なバイオアベラビリティについてはあまりあてにならないが、同じ人が同じ素材を同じ量だけ繰り返し食べた場合は割合安定した効果が得られる。