効力の劣化と保存法
translated and arranged from
MARIJUANA Grouwer's Cuide, Capter 20, 21
Mel Frank & Ed Rosental
植物は、開花期の後半になるとカナビノイドの生成が停止し、その中でも特にTHCが分解して効力が低下し始めることはよく知られている。この分解の原因となるのが光と空気中の酸素だ。
下の表では、光がTHCを急激に分解させることが示されている。この過程ではTHCは主にポリマーに変化するが、これに比べると空気(酸素)による分解はもっと緩慢で、THCの水素2つが酸素と結合して水になって失われ、活性のないカナビノイドCBNに変わる。この移行は空気の温度が高くなると促進される。
分解過程は植物が活動している時期にはあまり急速には進まないが、これはカナビノイドの生成が活発なことと十分な量の溶液に溶けているからだ。
表4にも見られるように溶液の中のカナビノイドは分解が遅いことが示されている。
表1 温度のよる乾燥マリファナのTHC分解(重量%) |
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-18℃ |
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4℃ |
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22℃ |
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36℃ |
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50℃ |
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week |
THC |
CBN |
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THC |
CBN |
|
THC |
CBN |
|
THC |
CBN |
|
THC |
CBN |
|
|
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Starting |
1.3 |
0.2 |
|
1.3 |
0.2 |
|
1.3 |
0.2 |
|
1.3 |
0.2 |
|
1.3 |
0.2 |
|
10 |
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0.75 |
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20 |
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0.20 |
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|
30 |
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0.05 |
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50 |
1.25 |
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|
1.23 |
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|
1.21 |
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|
60 |
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1.03 |
0.4 |
|
0.04 |
0.73 |
|
70 |
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|
|
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|
0.29 |
|
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|
0.15 |
|
100 |
1.2 |
+0 |
|
1.16 |
+0 |
|
1.12 |
+0 |
|
0.08 |
0.67 |
|
|
0.41 |
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THC lost% |
7.69% |
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|
10.76% |
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|
13.85% |
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94.00% |
|
|
97.00% |
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Turner, C E. et al. 1973. Constituents of Cannabis sativa L., IV: Stability of Cannabinoids in Stored Plant Material. J. Pharm. Sci. 62(10): 1601-1605.
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表2 異なった条件下でのマリファナのTHC劣化 |
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5℃暗室 |
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20℃暗室 |
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20℃明室 |
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week |
THC% |
lost% |
|
THC% |
lost% |
|
THC% |
lost% |
|
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Starting |
1.37 |
0 |
|
1.37 |
0 |
|
1.37 |
0 |
|
31 |
1.26 |
8 |
|
1.20 |
12 |
|
0.89 |
35 |
|
47 |
1.27 |
7 |
|
1.19 |
12 |
|
0.88 |
36 |
|
73 |
1.21 |
11 |
|
1.10 |
20 |
|
0.68 |
50 |
|
98 |
1.25 |
9 |
|
1.03 |
25 |
|
0.51 |
63 |
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表3 明暗条件下でのマリファナのTHC劣化 (20℃ 保存1年後) |
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保存条件
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THC% |
lost% |
CBN% |
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開始時 |
11.6 |
0 |
+0 |
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明室 20℃ 1年後 |
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|
(1) 粉状 |
7.3 |
37 |
1.8 |
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(2) 圧縮後の砕いた破片 |
5.2 |
55 |
2.4 |
|
|
(3) 圧縮した固まり |
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|
(a) 表面 |
5.2 |
55 |
2.3 |
|
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|
(b) 表面下 2mm |
10.7 |
8 |
1.8 |
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|
(c) 中央部 |
11.4 |
2 |
1.6 |
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暗室 20℃ 1年後 |
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|
(4) 粉状 |
12 |
+3 |
0.6 |
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(5) 圧縮後の砕いた破片 |
10.1 |
13 |
1.0 |
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|
(6) 圧縮した固まり |
|
|
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|
(a) 表面 |
11.1 |
4 |
1.8 |
|
|
|
(b) 表面下 2mm |
10.3 |
11 |
1.04 |
|
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|
(c) 中央部 |
11.0 |
6 |
1.47 |
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表4 溶剤に保存/抽出したTHCの劣化率 |
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溶剤と保存期間
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5℃暗室 |
20℃暗室 |
20℃明室 |
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△9-THC 石油エーテル保存 |
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開始時 |
100 |
100 |
100 |
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2日目 |
94 |
95 |
80 |
|
|
6日目 |
92 |
94 |
9 |
|
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|
△8-THC 石油エーテル保存 |
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|
開始時 |
100 |
100 |
100 |
|
|
2日目 |
100 |
100 |
51 |
|
|
6日目 |
99 |
101 |
1 |
|
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|
THC in クロロホルム |
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|
開始時 |
|
100 |
100 |
|
|
2日目 |
|
99 |
92 |
|
|
6日目 |
|
105 |
65 |
|
|
20日目 |
|
95 |
9 |
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|
サンプルUNC 255のクロロホルム抽出液 |
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開始時 |
|
100 |
100 |
|
|
2日目 |
|
103 |
67 |
|
|
6日目 |
|
103 |
15 |
|
|
20日目 |
|
101 |
0 |
|
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|
サンプルUNC 255のエタノール抽出液 |
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|
開始時 |
|
100 |
100 |
|
|
2日目 |
|
100 |
84 |
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6日目 |
|
97 |
76 |
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|
20日目 |
|
100 |
55 |
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Fairburn, J. W., Liebman, J. A. , and Rowan, M. G. 1976. The Stability of Cannabis and its Preparation on Staorage. J. Pharmaceut. Pharmacol. 28(1):1-7
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トリコーム腺毛の変化
カナビノイドの貯蔵庫になっているトリコーム腺毛は、乾燥させた後でもカナビノイドを分解から守る働きをしているが、日光と気温で分解率は高まり、直射日光下に放置すると急激に加速される。
成育中で未成熟な植物にはほとんどCBN(カナビノール)は見られないが、一般に、成熟したものでは少なくともTHCの量の5%のCBNが含まれている。熱帯地方のように気温が高いところで育った植物では20%を越えるものもある。実際には、THCのすべてがCBNに変化するわけではないので、生成されたTHC全体量はもっと多く、分解率はCBN含有率よりも高い。
THCの酸化によるCBNへの変化がゆっくり進むことを考えれば、空気による分解は2ヵ月以内で5%程度だと思われる。この過程の大半は腺毛が劣化を始める開花後期に始まる。
雌花の胞葉にキノコのような生えたトリコーム腺毛はしばしば壊れ、頭部に穴があいてカナビノイドが流れ出す。浸出はずっと続くわけではないく、ほとんどの内容物が空になった時点で破裂してしまう。また、腺毛は植物の頭部に多いので、強い日光に晒されでダメージを受ける。こうした状況はとくに過熟したバッズにおいて効力が目立って失われる原因になっている。
葉に生えた腺毛でもカナビノイドが分解するが、バッズほど深刻ではない。これは、おそらく、葉の腺毛の多くが葉の裏側に生えているために日光の影響を受けにくいためだろう。この部分の腺毛はあまり壊れたり樹脂を放出することはなく、しばしば何週間も無傷で形崩れもしない。
目でも確認できるように、腺毛はもともと無色あるいは白色をしているが、次に金色になり、さらに赤色から茶色に変わっていく。やがてバッズ全体の色も変わるほどになる。THCは無色なので、こうした色変化はTHCの分解が始まっていることを示している。
立ち枯れ状態で数週間経った植物を吸ってみると効力が半減していることがわかる。この事実からしても色変化はTHCの分解を示している。多くの腺毛が茶色ぽくなりだしたらすぐに収穫を終えなければならない。
保存状態と劣化の進行
表からもわかるように、THCは高い保存温度と光によって劣化する。温度を20℃以下に保ち、光の当たらない暗い場所で適正に保存すれは2年間でも2〜3割程度までしか劣化は進まないが、暗部でも36℃以上になると2年間でほぼ効力は失われる。
明るい室(窓は北側)と暗い室でざまざまな温度で保存した実験(表2)では、暗い場所に低温で保存したほうが劣化の進行ははるかに遅くなっている。
また、資料を粉状で保存した場合と固めて保存した場合の違いについても調べられている(表3)。この実験結果で特徴的なのは光が直接当たる部分の劣化が激しいことで、明室でも資料の中側では劣化が遅くなっている。
さらに、石油エーテル、クロロホルム、エタノールそれぞれに漬けて保存したものと、それぞれの溶液で抽出したものの保存実験(表4)も行われている。一般に、溶液を使った保存では、光に当てない限り劣化はほとんど起こっていない。このことはハシシ・オイルなどは遮光容器に保存しなけれはならないことを示している。逆に、光に当てると短期間で急激に劣化が進んでしまう。
これらの実験から、保存においてTHCを劣化させる主要な原因は光だ、ということがわかる。
空気(酸素)もTHCをCBNに変化させるが、その進行はもっと緩慢で30℃以下ではあまり目立たない。しかしながら、乾燥が不十分のままパックしてしまったような場合は、残った水分が微生物の活動を助けて発酵し内部の温度を上昇させてしまうので注意しなければならない。きちんと乾燥させればこのようなことはなく、空気による効力の劣化はあまり気にするほどは起こらない。
適切な保存法
表3からもわかるように、資料を固めて砕いたものは劣化が激しい。このことはトリコーム腺毛の組織が破壊されたものほど保存状態が悪くなることを示している。これは腺毛がカナビノイドを保護しているからだ。
つまり、保存の要は腺毛が壊れないようにすることだ。組織を崩したりしないように慎重に扱い、できるだけそのままの形状で保存するようにしなければならない。形の崩れていないバッズが最も保存状態がよいことになる。
そのためには、バッズを缶やガラス容器に入れて冷暗所に保存するのがよい。人によっては組織がもろくならないようにするために、新鮮なレモンやオレンジの皮を入れたりもする。香りの改善にもなる。
量が少なければ冷蔵庫や冷凍庫に保存するのがよいが、多量に保存しようとしてプラスチック・バッグに真空包装したりするのは好ましくない。圧縮すると組織が破壊され、時には浸出した樹液でバックが曇るほどになってしまう。
また、圧縮しない場合でも静電気が腺毛を破壊する可能性があるので、ポリ袋に長期保存するのは好ましいとは言えない。
ハシシは製造過程で組織がかなり破壊されてしまうので、一般にバッズよりも保存に適していない。一度に大量に製造したり購入するのではなく、短期間に消費する分だけその都度用意したほうがよい。
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