カナビスの活性成分

何事に関しても、ちょっとした知識が非常に役に立つ。これは 「カナビスの化学」 についても同様だ。確かにカナビスの活性成分について知らなくても、吸ってハイになることはできる。種をまけば育てることもできる。だが、人一人の経験は非常に限られている。すべての種類のカナビスを体験することはできないし、どんなに栽培のベテランでも年に数回、一生でもたかだか数十回程度しか実経験できない。

カナビスの化学は、過去の無数の人々の経験と知識が積み重さねられ検証されてきたエッセンスだ。何も論文を書く専門家のような化学知識は必要ではないが、そのほんの僅かな知識を学んでおくだけでも、カナビス使用や栽培に無用な試行錯誤や無駄や失敗をしないで済む。




カナビスの活性成分Δ9-THC
http://www.worldofmolecules.com/drugs/thc.htm  

カナビスの活性成分を見つけ出そうとする科学者たちの研究は植物化学が飛躍的に発展した19世紀に本格化したが、その正体はなかなか解明できなかった。これは、19世紀前半にモルヒネやコカイン、ニコチン、キニーネなどが結晶として単離され化学構造式が明らかにされていたのとは対照的だった。

モルヒネなどはいずれもが窒素(N)を持つ水溶性の有機塩基でアルカロイドと呼ばれるが、酸と化合させることで容易に固体結晶になる。しかしカナビスは水にはほとんど溶けず結晶化の努力はすべて失敗した。最初の成果は20世紀直前にもたらされた。アルコールなどの有機溶媒を使いハシシからレッド・オイルが生成された。その後、ハシシをアルコールに溶解にしたカナビス・チンキが医薬品としても普及したが、その活性成分は依然不明のままだった。

本格的な解明は1940年代になってから進み、お互いに密接な関連をもつ化学成分として、カナビノール、カナビジオール、テトラヒドロカナビノールの化学構造が明らかにされ、やがてテトラヒドロカナビノール(THC)がカナビスの活性成分であることが見い出された。いずれも水素・酸素・炭素の化合物であり、アルカロイドではなかった。精神作用物質のなかでもカナビスがユニークなのはこのことが関連しているのかもしれない。

解明が進むと構造の似た化合物が次々に60種類以上発見され、人工的に合成されたものを含めると100種類を越えている。これらは総称してカナビノイドと呼ばる同族体を構成しているが、各々の薬理作用や構成比率には相当なバリエーションがあり、カナビスの効力が強くなるにしたがって、カナビノイドの生化学的状態が変化する。

カナビスの遺伝学的・生態学的な影響、つまり種類や産地、栽培方法、熟成処理、保存方法、摂取方法によってどのように効果が変化するのかについてはいろいろな研究が行われている。まだまだ解明されていないことは多いが、既に明らかになっている 「カナビスの化学」 を少し学ぶだけでもカナビスを知るための大きな力になる。