カナビノイドとTHC

translated and arranged from
MARIJUANA Grouwer's Cuide, Capter 2
Mel Frank & Ed Rosental


カナビスはいろいろな意味でユニークな植物だ。植物はいろいろな化学物質を生成するが、マリファナのハイをもたらす精神作用成分であるカナビノイドと呼ばれる物質を生成することのできる植物はカナビス以外にない。(カナビクロームCBCは例外)

カナビノイドは、少しずつ構造の違った化学物質の集合体で、60種類以上の化学物質が植物の中から見つけ出されている。そのほとんどは非常に微量で、植物が生成するカナビノイド全体の.01%以下でしかなく、精神作用も持っていない。精神作用を持ちハイには関与しているのは以下にあげる数種類で、それ以外はそのいずれかの派生体に過ぎない。


1. Δ9型テトラ・ヒドロ・カナビノール(THC)

マリファナの精神作用活性成分で、ハイを引き起こす70〜100%がΔ9型テトラ・ヒドロ・カナビノール(THC)だと考えられている。カナビスはどれもこの物質を生成するが、カナビノイド全体に占める割合は植物の種類によって異なり、1%未満から95%まで変化する。乾燥マリファナ(種や茎は除く)全体に含まれるΔ9-THCの重量は通常数%程度だが、効力の強いバッズでは20%以上のものもある。

また、二重結合の位置がずれたΔ8型THCの存在も知られている。量は少なくΔ9-THCの1%以下で、効力もよりやや劣るとされている。天然のもの以外にも抽出過程で人工的に生成される場合もある。通常単に「THC」といった場合は、Δ9-もΔ8-区別しない。

(注、化学式には違う付番システムもありΔ9型がΔ1型と表記されることこともある。Δ1-THC=Δ9-THC)


2. カナビディオール(CBD)

カナビディオール(CBD)もほとんどどの植物からでも抽出される。全カナビノイドに占める割合はほぼ0%から95%まで変化するが、CBDはTHCとともに自然生成されるカナビノイドの2大成分となっている。純粋のCBDには精神作用はないが、鎮痛や抗生といった効果が認められている。

CBDのハイに対する影響は、THCがある程度存在しているときに精神作用の違いとなってあらわれてくる。THCと相互作用することによってハイの特定の効果を促進したり抑制する。CBDにはTHCの鎮痛効果を促し、興奮効果を抑える作用がある。

また、CBDにはハイの出現を遅らせ、長く持続(およそ2倍)させる働きもある。ハイの高さに対しては、強めると弱めるという正反対の主張があり、「ハイの強さ」を定義するのは難しい。一般に「ノックアウト」とか「スリーピー」「ドリーミー」「メランコリック」などの形容詞はCBDとTHCがそれなりに含まれるマリファナのハイが対象になっており、THCが微小で大半がCBDのマリファナでは、気だるく、心がふさぎ、体を動かすのがおっくうになるのでハイにはならない。

医療カナビス分野では、多発性硬化症などの鎮痛効果は、CBDとTHCが同程度含まれる種類のカナビスのほうが優れているといわれている。一般にサティバ種はカナビノイドの絶対量が少なく成分もどちらかに偏っていることが多いのに対して、インディーカ種はカナビノイドの生成量も豊富で、成分のバランスも同程度なので医療目的には適している。


3. カナビノール(CBN)

カナビノール(CBN)は植物自身は作り出さない。刈り入れたばかりの新鮮なマリファナにはほとんど含まれていないが、後熟成やハシシ加工、不適切な保存などが原因して、THCの多くが酸化してCBNになる。CBNの化学式がTHCに似ていることもそれを示唆している。THCの水素2つが外部の酸素に奪われ水となって失われ、核の二重結合が2つ増えている。

純粋のCBNの精神作用は最大でもTHCの10%程度とされている。CBNはハイへの直接の関与は余りないが、THCの品質を変える働きがあり、CBDと同様にハイの状態に影響しているのではないかと考えられている。

実際、CBNを多く含むマリファナでは、ハイがやって来てもピークに達することはなく、気がふさぎ、イライラして最後には疲れて眠くなってしまう。保存状態のわるい高CBNマリファナでは、THCの活性の90%が失われていることもあり摂取には適していない。


4. テトラ・ヒドロ・カナビバリン(THCV)

通常のTHCには左図のように炭素が5つが連なる芳香族サイドチェーン(ペンチル基)があるが、テトラ・ヒドロ・カナビバリン(THCV)はチェーンの先端の2つがなく短い3連のチェーン(プロピル基)になっている。すべての植物に存在しているわけではなく、アジアやアフリカの非常に効力の強い一部の植物に見つかっている。

ある研究によると、アフガニスタンで48.23%、南アフリカで53.69%の含有量のあるものも確認されており、おそらくTHCVはTHCから2次的に派生したものではなく、特定の遺伝子をもった植物が直接生成すると思われる。効力はTHCよりもやや劣るが、急速に発現し急激に消失する。

通常は、Δ9-THCとΔ8-THCにTHCVも加えて 「THC」 と呼ばれている。また、THCVと同様に、CBDやCBNもチェーンが短くなったプロピル基同族体もあり、それぞれCBDV、CBVと呼ばれている。

一般にチェーンの長さと効力は正相関があるらしく、合成は難しいが、窒素などを加えて人工的に長いチェーンを作り出した化合物の中には、数日関持続し500倍の効力のあるものも見つかっている。


5. カナビクローム(CBC)

カナビクローム(CBC)は、CBDやTHCに比較すると少量しか生成されないが、主要なカナビノイドの一つで他とは化学構造が少し異なっている。植物のカナビノイド生成の初期段階で生成されるが、植物の含有量は全カナビノイドの20%を越えるようなことはない。

CBCには精神作用はないとされているが、THCと相互作用してハイを強力に促進するという見方もある。


6. カナビゲロール(CBG)

カナビゲロール(CBG)は、植物のカナビノイド生成の最初の段階にできる化合物で、 バラの花の芳香物質として知られるゲラニオールとフェノール性水酸基オリベトールが結合して生成される。CBGには精神作用はなく、その他の薬理作用についても余りよく分かっていない。

しかし、CBGは、CBDの前段階物質であることが知られており、さらにTHCがCBDと構造が近いために、主要なカナビノイドを誘導する原点になっている。植物の成育過程でCBGをコントロールできれば、最適な配合の医薬品ができるのではないかとも考えられている。