オレゴン州医療カナビス・ハンドブック

Source: Oregon NORML
Date: March 27th, 2008
Subj: The Oregon Medical Marijuana Act Handbook
http://ornorml.org/downloads/files/MedMJ_Handbook.pdf

ここに紹介するガイドは、オレゴンNORMLが発行している 『オレゴン州医療カナビス法ハンドブック』 の本文部分で、実物 にはこの他に、関連機関や支援団体のリストや参考書籍のリスト、オレゴン州医療カナビス法全文なども掲載されている。

アメリカでは、1996年にカリフォルニア州で初めて医療カナビス条例が住民投票で成立したが、オレゴン州もその2年後に続いた。

カリフォルニア州では、州が大きいことや条例の適応病名がルーズに書かれているために現在の登録者数も数十万人と言われているが、正確な利用状況ははっきりわからない。これは患者の管理が郡によってまちまちで、州法が十分に機能していないことが原因になっている。

この点では、オレゴン州の医療カナビス法は堅実で管理も厳格に行われている。また現在では、12の州が医療カナビス法 を持っているが、適応疾患が狭くて患者数が数十から数百人程度の州もあるのに対して、オレゴン州の登録患者数は約1万6000人で、プログラムがよく機能していることを示している。

これまでの医療カナビスの利用に関するパンフレットなどもたくさん出されたが、法律や医学知識の解説が主体のものが多く、わかりやすくはなかった。これは、医療カナビスが十分に社会に浸透していなかったという事情も大きく影響している。

今回発表されたこのハンドブックは、オレゴン州というモデル的な場所で多くの経験を経て作成されただけあって、患者の知りたいことが適切に取り上げられ、非常にわかりやすくまとまっている。



誰が、オレゴン州医療カナビス・プログラムを利用できるのですか?

オレゴン州に住むすべての州民が対象ですが、オレゴン州公認の医師 (MD) または整骨療法士 (DO) から、現時点で重度の病状にあると診断を受け、「カナビスが症状を軽減するか、あるいは重度の病状に何らかの効果が見込まれる」 などと書かれた書類があれば、オレゴン医療カナビス・プログラム (OMMP) に登録する資格があります。

しかし、現在のところ、オレゴン州で医療カナビス患者に認定されるのは次の疾患または症状を持つ人に限られています。

  • アルツハイマー病の興奮
  • 緑内障
  • HIV/エイズ
  • 悪液質 (消耗症候群)
  • 深刻な痛み
  • 深刻な吐き気
  • 発作 (てんかんに限定されない)
  • 持続的な筋肉けいれん (多発性硬化症に限定されない)

また、18才未満の未成年の場合は、親権のある親または法定後見人がカナビスによる治療を受ける決断を下して公正証書を作成し、プライマリー・ケアギバーになって世話をすることに同意する必要があります。また、親または後見人は、未成年の本人に代わって、カナビスを取得し、服用量や使用回数などを管理することにも同意しなければなりません。

資格規程についてさらに詳しくは、州福祉サービス部(DHS)の 
オレゴン医療カナビス・プログラム に問い合わせてください。


登録費用はいくらですか?

現在の登録料は、初回・更新とも100ドルです。ただし、オレゴン・ヘルスプラン(OHP)有資格者や生活保護(SSI)受給者の場合は20ドルです。これらの額については変更になる可能性もあります。


医師の果たしている役割は何ですか?

オレゴン州公認の医師 (MD) または整骨療法士 (DO) は、患者が現時点で重度の病状にあると診断を下して、「カナビスが症状を軽減するか、あるいは重度の病状に何らかの効果が見込まれる」 という趣旨の意見書を提出することになります。

患者登録の更新にあたっても、重度の病状にあり、カナビスの使用でそれらの症状が軽減または何らかの効果が見込まれるとする主治医の書類を提出する必要があります。更新書類や診断書類は最新のもので医師のサインが必要です。提出日の90日以前の日付の書類は受付られません。

患者の認定IDカードの発行にあたっては、OMMP側は、書類の内容が正確かどうかを確認するために医師に連絡を入れてきますので、医師は、自分が患者にカナビスによる治療をすすめた主治医であることを告げなければなりません。

こうした医師による確認が必要なのは、すべての患者に医療カナビスが適合しているわけではないことも一つの理由になっています。例えば、血圧が高い人がカナビスを使うと血圧が下がり過ぎてしまう場合があります。いずれにしても、自分の病状については、医師や医療カナビス専門家とよく話合うことが重要です。


医師が協力してくれなかったら?

認定患者はオレゴン医療カナビス・プログラムの下で法的な保護を受けることができますが、医師の中には連邦の介入を恐れて必要な書類を作成したがらない人もいます。

OMMPの用意した情報パッケージには、医師が患者に医療カナビスの使用をすすめることに連邦政府が介入できないとする連邦最高裁の判決のコピーも含まれています。この 
決定 は、オレゴン州も関係する第9回連邦巡回控訴審の判決に対する上告を受理しないことで追認したものです。

そのコピーを見せて、医師がOMMPに関与しても、連邦政府は起訴したり邪魔したりできないという判決が出ていることを話せば納得して協力してもらえるかもしれません。

しかし、それでもダメならば、協力してくれる他の医師を探す必要があります。ですが、OMMP側ではそうした医師のリストを用意することはできないことにもなっています。


カナビスを栽培するためにケアギバーや栽培者を指定する必要がありますか?

認定患者であれば自分自身で栽培することができますが、18才以上の人を指定して代わりに栽培してもらうこともできます。さらに、サード・パーティが栽培したカナビスを使うことも選択可能です。

「患者」、「ケアギバー」 あるいは 「その他」 の場合であっても、カナビスを栽培する人は、「医療カナビス栽培場所に責任を持てる人」 でなければならず、それを書類に明記する必要があります。また、「医療カナビス栽培場所に責任を持てる人」 は、2006年1月1日以降に州法の規制薬物第1および2類の搬送または製造に違反して有罪となったことがあれば、科せられた制裁を完全に終えていなければなりません。

多くの患者は、治療の世話と栽培場所の管理を頼める 「ケアギバー指定」 を選んでいます。日常的に世話や管理の頼める配偶者やパートナーや同居人がいれば、ケアギバーとして指定するのに最も適しています。ケアギバーや栽培者などの指定にあたっては追加費用はかかりません。


患者・ケアギバー・栽培人の権利と責任

医療カナビスと医療カナビス用の植物は患者の所有物です。患者に代わって栽培場所の責任を持ち医療カナビスの生産を行っている人が管理している植物、苗、種子も患者の所有物になります。医療カナビスを生産する人は患者から正式な要請を受けていなければなりません。

ケアギバーや栽培の責任を持ってくれる人との間には、お互いが何を期待しているのかについて明確に理解し合っていることが重要です。後で誤解が出てこないように合意を文書化して残しておく人たちもいますが、このような文書が法的な拘束力を持っているかどうかについては現在までのところ確定した見解はありません。

医療カナビスの栽培を認められた人は、4人までの患者のカナビスを栽培することができますが、それ以上は認められていません。

ここで注意しなければならないのは、栽培場の育てているカナビスの本数が多くなると、その分だけ盗難のリスクや連邦当局の注目を集めやすいという懸念が大きくなることです。オレゴン州の医療カナビス法では、たとえ医療カナビス・カードを持っている人であっても連邦政府による訴求から保護することはできません。

ケアギバーや栽培人を選ぶ際には、次のような点を考えることが大切です。
  • 相手のことを十分に知っているだろうか?
  • 信用のある人なのか、法律をきちんと守る人なのか、頼れる人なのか?
  • 自分の必要とするカナビスの量はどのくらいか?
  • 栽培人は十分な時間と栽培技術を持ち、継続的に育ててくれるだろうか?
  • 栽培人は、身元を保証する何かを提示してくれているだろうか?

ケアギバーや栽培人との間には、特に次のような基本点については明確に確認し合っておくことが重要です。
  • 種子や苗(クローン・カッティング)は誰が用意するのか?
  • 植物の世話は誰がするのか?
  • グローランプのような栽培器具は誰が購入するのか?
  • 室外で育てる場合には誰が場所を用意するのか?
  • 医療カナビスの生産に必要な電気や消耗資材の費用は誰が負担するのか?
  • 万が一作物が盗難にあったときは、どのように対処するか考えているか?
  • 将来、どちらかが合意を履行できなくなった場合にはどのように処理するか?


カード所持者と栽培場に求められる法的要件

患者は、登録してあるケアギバイーや栽培場所の情報に何らかの変更が出てきた場合には、OMMPに連絡を入れてから所定の 「変更書類」 を作成して30日以内に提出しなければなりません。また、栽培責任者を新たに追加したり変更する場合は、「変更要請書類」 のすべての要件と項目を満たした書類を提出する必要があります。現在のところ変更のための費用はかかりません。

登録が終わると、患者には、自分自身とケアギバーと栽培責任者それぞれの登録カードが渡されます。ケアギバーや栽培責任者には患者が届ける必要があります。カードを持っていれば、医療カナビスを所持したり運んだりしても法的に保護されます。また、栽培者カードを持っている栽培人は、登録した栽培場で患者のために医療カナビスを栽培しても法的に保護されます。

いずれも名刺サイズのIDカードですが、医療カナビスを外に持ち歩く時には常に携帯していなければなりません。また、栽培責任者のカードには、栽培場であることや栽培内容の書かれた 「表示板」 も一緒についてきますので、栽培場に掲示しておく必要があります。

もし、ケアギバーや栽培者を変更する場合には、患者自身がそのことを告げて、カードと表示板を回収してOMMPに返却しなければなりません。一旦変更が完了すれば、栽培人は州による逮捕や訴追や財産没収の対象になって保護がなくなりますので、そのことについても告げておくことが大切です。

医療カナビスは、金銭的な儲けを上乗せすることはできず、「無償」 でなければなりません。登録患者とプライマリ・ケアギバーは、栽培人に対して医療カナビスの製造にかかる費用や資材のコストを負担することはできますが、それ以外の労賃などのコストについては負担することはできません。

栽培場では、苗、または花の付いていない高さと幅が12インチ(30センチ)以内の植物の場合は18本まで、花を持っていたり高さか幅が12インチを越える植物については6本まで育てることができます。また、患者とケアギバーと栽培者は、全部合わせて24オンス (680グラム) までの医療カナビスを所持または運ぶことができますが、それらは登録した栽培場で作られたものに限られます。


外でも医療カナビスを使うことができますか?

法律には、公共の場所や一般の人の視野に入る場所で医療カナビスを使ってはならないと明記されていますので、実際的に外で喫煙したりバポライザーを使ったりすることはできませんが、食用にしたカナビス調合品ならば大丈夫です。


自分では栽培できない場合は、どのようにして医療カナビスを入手できますか?

医療カナビスの売買は禁止されていますので、管理されたものは流通していません。密売されているカナビスには混入物がまじっていることもあり、薬として適しているとは言えません。しかし、公共の場所ではなくプライベートな場所で患者同士が無料で融通し合うことは認められています。栽培経費や配達料などの要求については実費のみで、儲けを上乗せすることはできません。量については法定の制限量以内まで可能です。

認定カードの保持者たちは、頻繁に会って苗や生産物をシャアしています。初めて認定患者になる人は、さまざまな援助を提供してくれる患者支援グループに参加することをおすすめします。


10 家主にはどのように話せばよいのでしょうか?

医療カナビスの栽培が認めらたOMMPの登録カード保持者は、州法によって逮捕や訴追、財産の没収から保護されています。しかしながら、家主が栽培器具や持ち物に不審を抱いたり、他の入居者の安全や快適さを懸念することは当然とも言えます。

特に連邦の資金援助をうけている家屋に住んでいる人の場合、管理人にOMMPの患者であることがわかるとさまざまな困難に遭遇することがあります。もちろん、州法でカナビスの所持や栽培する権利が認められていることを主張して説得に成功している人もいます。

問題は、家主にとって医療カナビス患者が初めてのケースです。何も知らないわけですから、この問題について説明をする必要があるかもしれません。その際には次のようなことを配慮します。

  • 「聞かざる・言わざる」(don’t ask, don’t tell) ポリシーで対応する
  • OMMP登録カードやこのハンドブックなどの情報を用意する
  • 法律の専門家に助言を求める


11 警察にはどのように対応すればよいのでしょうか?

州法務局の定めたガイドラインでは、地元及び州の警察が疑わしいと思われるカナビス栽培場を訪れる際には、事前にOMMPに連絡して合法的な医療カナビス栽培場なのかどうかを確認しなければならないことになっています。

法律では、警察は、患者や指定のケアギバー、栽培責任者が医療カナビス・プログラムの登録者であるかどうかを365日24時間調べることができるようになっています。また、警察は、栽培場がOMMPで保護されているかどうかを随時確認することができます。ただし、それ以外のことは照会できないことにもなっています。

警察が関与してきたら、まず最初に登録カードや栽培場の看板、関連書類などを見せて自分が医療カナビス患者であることを説明します。警察が植物の本数を確認したいから栽培場を見せてほしいと言ってきても、捜査令状がない限り必ずしも応じる義務はありません。応じれば、警察は、法的限度以上の植物や苗を押収して重罪を科すこともできます。

医療カナビスの影響下にある状態で運転することは控えるべきです。特に医療カナビスを運ぶ時には慎重になる必要があります。また、医療カナビスを外に持ち出す際には、警察から登録カードの提示を求められることもありますからカードは必ず携帯していなければなりません。

植物や医療カナビスが盗すまれた場合には、直ちに地元警察の盗難届けを提出します。カナビスは、他に使っている医薬品と複合的に作用している場合もありますので、そのことに関する情報も知る必要があります。


オレゴン州医療カナビス・プログラム の2008年1月1日現在の 利用状況

カードを保持している患者数 15,927
カードを保持しているケアギバー数 7,735
プログラムに署名している医師と整骨療法士の数 2,782
2007年1月1日から12月31日までに新規に受け付けたプログラム数 7,374
2007年1月1日から12月31日までに更新を受け付けたプログラム数 7,773
2008年1月1日現在の未確定プログラム数 1,668
未確定プログラムには、受け付けてから最初のスタッフ・レビュー待ちになっている新規及び更新プログラムのすべてと、申請書類が不完全なプログラム、署名と日付を再確認する主治医からの返信待ちになっているすべてのプログラムが含まれる
2007年1月1日から12月31日までに却下したプログラム数 612
病状 (一人で複数の診断を受けているケースもある)
アルツハイマー病の興奮 <50
悪液質 (消耗症候群) 405
451
緑内障 267
HIV/エイズ 329
深刻な吐き気 2,707
深刻な痛み 14,050
発作 (てんかんに限定されない) 469
持続的な筋肉けいれん (多発性硬化症に限定されない) 3,544