カナビノイド治療研究最前線
第4回国際カナビノイド医薬品学会カンファレンス
Source: IACM-Bulletin
Pub date: 14 Oct 2007
Subj: Chronic Pain Intensity Cut Nearly in Half with Oral THC
http://www.cannabis-med.org/english/bulletin /ww_en_db_cannabis_artikel.php?id=255
国際カナビノイド医薬品学会(IACM)の第4回カンファレンスが2007年10月5-6日にドイツ・ケルンで開催され、50件近い研究発表が行われた。
イギリスの研究チームは、関節リウマチに苦しむ患者に対してカナビス抽出液(サティベックス)を投与して、長期的な耐性や効果について調査した。該当患者53人のうち38人が長期研究に参加し、そのうち3ヵ月以上の治療を継続した人は70%で、6ヵ月以上の人は51%だった。痛みや睡眠の質の改善については、短期使用の研究で得られたのと同じ程度の効果が見られた。一方では、長期使用で耐性が形成されることを示すエビデンスはなく、サティベックスの服用量も増えなかった。(Abstract by Robson et al.)
カナダの研究チームは、神経因性疼痛の患者を対象に、4種類のTHC濃度(0、2.5、6、9.5)のハーバル・カナビスを与えてその効果を比較する予備実験を実施した。参加したのは、外傷や手術による慢性的な神経因性疼痛患者23人で、全員が現在カナビスを使っていない。患者たちには、9日間の期間中、前半4日と後半5日に分けて効力の違う4種類をカナビスが与えられた。その結果、THC9.5%のカナビスを1日3回25mg(1服)を摂取した場合に、慢性神経因性疼痛の鎮痛効果や睡眠改善効果が他よりもやや高かった。耐性が増加するようなことはなかった。(Abstract by Ware et al.)
スペインの研究チームはラットを使った実験で、カナビノイドが、長期化学療法で引き起こされた末梢神経障害や消化管変性通過障害の進行を抑制することを見出した。化学療法に使う抗がん剤シスプラチンは、体重増加や腸管輸送を遅らせ神経障害を引き起こすが、シスプラチンに合成カナビノイドを併用して投与すると、神経障害や腸管輸送遅延が抑制された。(Abstract by Abalo et al.)
イスラエルの研究チームは、マウスを使った実験で、エンドカナビノイドの不足やCB1レセプターの機能低下が乳児に発育不良に深く関与していることを示すエビデンスを発表し、カナビノイド・ベースの治療によって、発育や成長が遅れた乳児の食物摂取が改善して体重が増加すると結論づけている。(Abstract by Ester Fride et al.)
ドイツの研究チームは、慢性痛患者124人を対象にした経口ドロナビノール(THC)の効果についての遡及的に評価したデータを発表した。治療前の痛みの平均スコアは7.6だったが、ドロナビノール治療期間中のスコアは4.2に軽減した。こうした結果から、研究者たちは、重度の疼痛患者に対して痛みが慢性化する前にドロナビノール治療を実施すれば、効果が高く良好な耐容性が得られることが示されたと結論づけている。(Abstract by Konrad et al.)
|
Abstract (pdf)
今回のカンファレンスの特徴の一つは、以前から指摘されていたことだが、THCが唯一の活性を持ったカナビノイドではなく、また、カナビノイドがカナビス植物の唯一の活性成分でもない、という主張がより現実的に語られ出したことにみられる。
イスラエルのラファエル・マッカラム博士は、カナビジオール(CBD)の神経防護作用や、炎症、糖尿病、睡眠の治療に効果が認められたというエビデンスの検証報告をしている。また、GW製薬のエサン・ルッソ博士は、治療効果の見込まれるカナビスの7種類のテレピノイドと2種類のフラビノイドについて調査を始めていることを報告している。
また、オランダの医療カナビス栽培の実際や、カナビス・テーなどの化学成分の分析、カナダやカリフォルニアの状況など、医療カナビスが定着してきている現状を示す報告も数多く行われている。さらに、IACMの特徴に一つである患者参加の学会を反映して、患者の体験談の紹介なども行われている。
今回のIACM賞には、医療カナビス喫煙でHIVの神経障害疼痛が顕著に軽減することを示したカルフォルニアの ドナルド・アブラム博士 が選ばれた。また ラファエル・マッカラム博士 にもIACM特別賞が贈られている。
国際カナビス医薬品学会
多発性硬化症患者向け医療カナビス・チョコレート配布運動