アルコール毒性がカナビスで強まる

新生児ラット実験、カナビスのみでは毒性なし

Source: UPI
Pub date: 9 April 2008
Pot increases alcohol toxicity
http://www.upi.com/NewsTrack/Health/
2008/04/09/study_pot_increases_alcohol_toxicity/8160/


新生児ラットを使ったドイツの実験で、カナビスの主要な活性成分であるTHCをアルコールと一緒に使うと脳の神経細胞が広範囲に細胞死することが明らかになった。

ベルリン・ハンボルト大学神経科学研究センターとドレスデン工科大学のヘンリク・ハンセン博士とクリサンシー・イケノミドウ博士のチームは、合成THC、エタノール、飲酒用アルコール、抗けいれん剤のMK-801、フェノバルビタールを、生後1日から14日のラットに注射して脳内の神経細胞に与える影響を調べた。

神経学年報ジャーナルに掲載された研究結果によると、THCまたは合成THCを単独で投与した場合には神経変性は起こらなかったが、エタノールを同時投与すると、普通は毒性の出ないわずかな量であっても細胞死を引き起こすことが示された。また、同じような神経毒性作用は、MK-801やフェノバルビタールに対しても見られた。

こうした結果について研究者たちは、「エタノール毒性がやや出ている状態でTHCを組み合わせて投与すると、神経変性が最も広く起こって非常に深刻な状態になった」 として、発達中の脳に対するエタノールの神経毒性にカナビス自体がどのように影響するかについては、さらなる研究を行って詳しく調べる必要があると指摘している。

今回の研究:
Cannabinoids Enhance Susceptibility of Immature Brain to Ethanol Neurotoxicity  Henrik Hansen, et al., Ann Neurol. 2007 Dec 7

また、この研究では、THCとアルコールの併用による影響レベルについては、THCとカナビノイド・レセプターCB1との結合を邪魔するブロッカー(リモナバント)を与えると低くなることも見出している。同様のことは、CB1のないノックアウト・マウスによっても確かめられている。

このことについて研究者たちは、「これらの結果は、エタノールや睡眠剤、抗けいれん剤などに晒された胎児や新生児の脳障害を防ぐためにCB1ブロッカーを使うという興味深い治療の可能性を示している」 と述べている。

確かにそうした治療の可能性があるのかもしれないが、CB1ブロッカーは体内の恒常性機能まで低下させてしまう可能性も指摘されており、そもそもアメリカではリモナバントは医薬品としての承認を拒否されている。

また、今回の研究からは、妊婦がリラックスしたり睡眠やけいれんを防ぐためには、アルコールや睡眠剤、抗けいれん剤などを使わずに、カナビスだけを医療的に使ったほうが良いことを示していると言えるのではないか?

今回の研究は、新生児の発達中の脳に与える影響を調べたものだが、一般的なカナビス使用においてもアルコールと併用するとさまざまな悪影響が出てくることが知られている。

もっともはっきりしているのが運転への影響で、カナビスだけの影響下では致死的な事故はそれほど見られないが、わずかでもアルコールが入った状態で運転していると 相乗的にリスクが高まる ことが知られている。

また、アルコールを飲みながらカナビスを吸っていると カナビスの依存性が高まる可能性のある ことも指摘されいる。カナビスによる禁断症状は全く出ない人と非常に苦しむ人に2極分化される傾向がみられるが、禁断症状に苦しむ人の多くがアルコールを常時併用しているとも言われている。

さらに、精神病を抱えている人は、もともとアルコールやタバコ、カナビスの使用率が非常に高い特徴が知られているが、カナビスだけならば症状を緩和させる効果があっても、アルコールと併用することでかえって 症状が悪化する可能性 がある。