カナビス運転のリスク研究レビュー


Pub date: Oct, 2007
Author: Dau, Cannabis Study House


カナビスは、注意力、集中力、協調力、反応時間など自動車の安全運転に必要なさまざまな能力に影響を与える。実際、カナビスを使っていると、距離感の判断、信号への反応、標識の確認が難しくなることがシュミレータ実験などでも示されている。

しかし、問題は、カナビスの酔いによる精神運動機能への悪影響が、実際の事故にどの程度関与しているのかという点にある。これまでの調査結果で全体に共通している結論としては、リスクが増えることは間違いないが、少なくともアルコールのリスクに比較するとカナビスのリスクはずっと少ないことが明らかになっている。


●実際にどのくらい危険か?

  • 例えば、衝突事故の過失性を調べた1990年代の7つの研究について総合的に検証した2002年の報告書では、「カナビスとアルコールの摂取量と衝突事故の過失責任の相関を調べた研究からは、血中にカナビノイドが検出されたドライバーとドラッグが検出されなかったドライバーの間には事故の過失に明確な違いのあることは見出せなかった」 と結論を書いている。

  • しかし、カナビスとアルコールを併用している場合は、双方が影響しあって相乗的にリスクが高まることも示されている。


    Chesher et al. Cannabis and alcohol in motor vehicle accidents.
    Cannabis and Cannabinoids. Grotenhermen and Russo (Eds)
    New York: Haworth Press. 2002: 313-323.


  • また、2005年9月にメリーランド大学の研究チームが発表した報告では、1997年から2001年までに自動車事故で病院に搬送されて体内からアルコール、コカイン、カナビスが検出された2500人以上の事故ドライバーを分析した結果、アルコール検査で陽性を示したドライバーでは素面のドライバーに比べて衝突の過失が著しく高いが、カナビスの場合は、男性でも女性でも衝突の過失との相関は見出せなかったと書いている。
  • ドライバーのカナビス陽性反応は自動車事故の過失と相関していない  (2005.9.29)

    同じような結果は、コロラドやオランダでの研究でも出ている。
    Drugs and traffic crash responsibility: a study of injured motorists in Colorado  Lowenstein and Koziol-McLain, J Trauma 50(2):313-30 (2001)
    Psychoactive substance use and the risk of motor vehicle accidents” [in the Netherlands], KLL Movig et al, Accident Analysis and Prevention 36: 631-6 (2004).

  • 2005年12月に発表された過去最大規模のフランスの 研究 では、自動車事故死にからむ10748人のドライバーに対して血液中のドラッグとアルコールの残存量を調査しているが、その結果、カナビスの単独使用で血液中にTHCが残っている場合は事故を起こすリスクが若干高くなっているが、それでもアルコールのリスクに比較すればはるかに低くなっている。

  • Cannabis intoxication and fatal road crashes in France
    Bernard Laumon,et al., BMJ 2005;331;1371-, 1 Dec 2005;


    カナビスのリスクの程度はTHCの量が増えると大きくなり、リスク・スケールでは1.9から最高で3〜の範囲になっている。これに対して、アルコールのリスクは、最低が3.3で最高は40を超えている。スケールの3ポイントは、アメリカで飲酒運転の許容限度となっている血中アルコール濃度0.05%の相当しているが、血液検査でカナビス陽性になったドライバーの大半はそれよりもリスクが低いことになる。

    また、カナビスが関連している死亡事故の割合は全体の2.5%(1.5%〜3.5%)となっている。だが、これに対してアルコールの場合は全体の28.6%(26.8%〜30.5%)で10倍以上も多くなっている。

    研究者たちは、「カナビス影響下で運転すると衝突事故を起こすリスクが高くなるが、血中にアルコールが検出された場合に比較すれば、死亡事故原因としては極めて低い」 と結論を書いている。


  • 2007年1月にカナダの研究チームが発表した 対照研究 では、1993年から2003年に死亡事故を起こした20〜49才のアメリカでの自動車死亡事故を分析し、血液または尿に微量のカナビスが検出されたドライバーは、アルコールで低レベルの陽性反応を示した人よりも危険な運転をすることが少ないことが明らかにされている。

  • 研究者たちは、年齢や性別、過去の運転歴などの交錯因子を補正したデータをもとに、カナビスのみに陽性でアルコールが検出されなかったドライバーは、全く素面の人に比らべれば危険な運転をする可能性が若干高くなるとしながらも、「この数字は、アルコールや一部の医薬品のリスクに比べれば小さいことも示されている」 としている。

    また、アルコールに関しては、低レベル(血中アルコール濃度0.05%)の陽性反応の場合でも素面のドライバーに比べて危険な運転をする傾向が著しく高くなる、と結論付けている。