ワシントン州高裁

医療カナビス患者の

カナビス必要性を認めず


Source: Kitsap Sun
Pub date: September 19, 2008
Washington Judge Decides
Medical Marijuana Patient Doesn’t Really Need Medical Marijuana
Author: Josh Farley
http://stash.norml.org/2008/09/26/washington-judge-decides-
medical-marijuana-patient-doesnt-really-need-medical-marijuana/

ワシントン州キットサップ郡高等裁判所は、ブレマートンに住む医療カナビス認定患者のロバート・ダルトン被告に対して、栽培資格を持たずにカナビスを栽培したとして有罪の判決を言い渡した。

この男性は背中下部の慢性痛の緩和のために医療カナビスを使っていたが、アン・ローリー裁判官は、その症状が、1998年に住民投票で成立した医療カナビス条例の適応疾患や症状にはなく、またそれ以後に議会で追加されたものにも含まれていないとの判断を示した。

これに対して、彼の弁護を担当したジャネット・ダルトンとダグラス・ハイアットの両弁護士は、「彼の重荷を支えるのに失敗した」 と無念を表情を見せながらも、「彼の痛みは標準的な治療や通常のオピオイド・ベースの鎮痛剤のような医薬品では和らげることはできず、カナビスを医療目的で使うことが残された最後手段なのです」 とその正当性を指摘している。

ウエスト・サウンド麻薬取締当局は、2007年8月にダルトン被告の自宅でカナビスが栽培されているのが発覚して捜査を行ったが、裁判記録によると、88本の植物が栽培されており、この量は州法で医療カナビス患者に認められている60日分をはるかに越えていたと当局は話している。

しかし、今回のローリー裁判官の決定にはこの件は考慮されなかった。現在のワシントン州医療カナビス法では、認定患者は60日分の医療カナビスを所持できることになっているが、60日分に相当する具体的な量については定義が審議中で、未解決な問題になっているので適応できないとしている。

保健局では現在、議会の要請に従って、認定患者が所持できる60日分の具体的な量を決める作業を行っているが、勧告案では、20オンスのカナビスと成熟植物6本、未成熟植物18本になっている。

ハイアット弁護士は、ローリー裁判官の判断には非常に失望しいると言う。裁判では繰り返し、ロバート・ダルトン被告にカナビスの使用を薦めたのはトーマス・オルバルド医師であり、ローリー裁判官は 「第3者の意見」(second guessing) に過ぎないと訴えた。「ローリー裁判官が医師になりたいのなら、医学の学校へ行くべきです。もし、彼女のやり方が正しいのなら、ワシントン州では安全な患者などいなくなります。」

しかしながら、キットサップ郡のカミ・ルイス副検察官はこの判決は正しいと言う。最終論告を担当したコリーン・シュネッフ検察官は、実際にはダルトン被告の不治の痛みはオピオイド医薬品でも和らぐことが分かっているので、カナビスを使うよりも他の医薬品で痛みに対処する必要があると主張している。

これに対して、ハヤット弁護士は、オピオイド医薬品を使うとダルトン被告に与える副作用が大きく、痛みの緩和にも十分な効果がないと反論している。

重罪の判決を受けたダルトン被告は、投獄を免れる可能性もあるが、最悪の場合は最高で6ヶ月の懲役刑が科せられる。ダルトン被告の弁護士たちは、まだ訴えることが残っているとして、10月に開かれる公聴会までいかなる刑の言い渡しをしないように要請している。

11月の選挙でキッチサップ郡高等裁判官に立候補しているジャネット・ダルトン弁護士は、ローリー裁判官の決定は尊重するとしながらも、前例になってしまうことを恐れていると語っている。「他の裁判官までこうした厳格で融通性のない定義を採用するようになってしまえば、この州の患者たち全体に不利な悪影響を与えることになってしまいます。」

有罪が確定すれば判決に従ってダルトン被告の医療カナビスに認定は無効になる。彼は、痛みのコントロールにオピオイドを使うことになるが、中毒になるので使いたくないと話している。

「ドラッグ中毒者などにはなりたくありません。だから医療カナビスを選んだのです。」

オレゴン州医療カナビス・ハンドブック
アメリカの州、カナダ、オランダ 医療カナビス法の対応疾患

この記事の取り上げられた裁判は、カナビスの医療目的はOKだが嗜好目的はNOだとして、無理に分離していることからさまざまな奇妙な問題が派生していることをよく示している。例えば、…
  • 病気の種類を限定しているために、それ以外の病気の患者が恩恵を受けられない
  • 量的制限 で必要量が不足する患者が出る
  • カナビスよりもオピオイドを優先して使わなければならない
  • 医師でもない裁判官が病状や使う薬を決定する
  • 植物学者でもない警察官が収穫量や効力の判定をする

  • 栽培しているカナビスを盗まれる
  • 認定に少なからぬ費用がかかる
  • 尿テストで職場を解雇されることもある

結局こうした問題は、医療目的ばかりではなく嗜好目的のカナビス使用や栽培も合法化することではじめて解決する。

外傷性椎間板ヘルニアが原因で痛みを伴う筋肉のけいれんと神経過敏症を持っているアメリカ人のアーサー・レッチェスは、オランダに移住したことで自分の症状を非常によくコントロールできるようになった。

余命2年という終末期患者という条件があるオランダ政府の医療カナビスは入手が困難でも、コーヒーショップからカナビスを購入することができる上に、医師もカナビスに対する知識が豊富でどのように使えばよいのか指導してくれるので、アメリカとは全然違うという。

彼は、医療カナビスを先に合法化しようとするアプローチは間違っている として次のように書いている。
現在世界のほとんど国で医療カナビスを認めることに関しては及び腰ですが、カナビスの医療利用についてはどこよりもオランダが一歩先を行っていることは間違いありません。

これは、カナビスのリクレーショナル使用が容認されていることが、私のように通常の医療ケア・システムの対象から外れていても、簡単に医療用のカナビスを入手できることにつながっているわけで、身体的・精神的な苦痛をもたらしている非科学的で無茶苦茶な禁止法に影響されることなく、トータルに自分の健康に対処できることを示しています。

この状況は、まず医療カナビスを先に合法化してカナビスに対する迷信を打破してから、次にリクレーショナル用途のカナビスの合法化を目指そうとしているアメリカを始めとする多くの国の活動家の考え方が間違っているのではないか、という興味深い疑問を投げかけていると言えます。

またこの判決では、カナビスよりもオピオイドを優先してつかわなければならないとしているが、これは、一種の政治的妥協で、従来の医薬品に効果が見られない場合という条件で、最後の手段としてカナビスを使うことができると規程されているからだ。

しかし、医療的に考えれば、深刻な副作用のないカナビスが第1選択薬になるべきで、さまざまな深刻な副作用をともない管理的にも問題の多いオピオイドの使用は後にすることのほうが理にかなっている。

こうした点については、ミクリヤ医師 は次のように書いている。
オピオイドや鎮痛剤は、うつ症状や意欲喪失を起こし、体の可動力を損なう。また、体重を増加させたり、機能性を損なうという点も共通している。認知障害、感情障害、うつ症状に関しては合併してあらわれる。オピオイドは、便秘、消化不良、胃の不快感といった植物性機能に逆作用を持っている。かゆみに悩まされる人もいる。日周性リズムは睡眠障害によって乱されほか、慢性的な鎮静状態が生じる。鎮痛系の医薬品では、依存性や禁断症状といったより深刻な状態に陥りやすい。

オピオイドは、急性の痛みの鎮痛治療としては間違いなく役に立つ。しかしながら、慢性的な痛みに対しては、1859年にオハイオ医師会でフロミュラーという医師が提案してフロミュラー2と命名された対処法が好ましいようだ。この方法では、普段はカナビスをベースに使い、症状が悪化した場合にオピオイドの助けを借りる。こうすれば、オピオイドの耐性や副作用を最小限に抑えて最大の効果を得ることができる。治療法は古いが、カナビスも人間の生理機能は昔も今も変わっていない。

カナビスがモルヒネの効果を増強するという報告もあることから「補助薬」としても有効かもしれなとという指摘もあるが、カナビスを補助薬と考えるのは必ずしも上手な使い方とは言えず基本的認識が間違っている。