ドラッグ戦争・ボディ・カウント


Debra J. Saunders

Source: Townhall.com
Pub date: 16, Mar 2009
The Drug War Body Count
Author: Debra J. Saunders
http://townhall.com/Columnists/
DebraJSaunders/2009/03/16/the_drug_war_body_count


「ドラッグ戦争は失敗だった」、フェルナンド・カルドーゾ、セサル・ガビリア、エルネスト・セディージョの ブラジル、コロンビア、メキシコのラテンアメリカの元大統領3人 は先月、「撲滅、禁止、刑事犯罪化をベースにした禁止法政策は… 全く機能しなかった」 とウォールストリート・ジャーナルに語った。

メキシコでは昨年、ドラッグ関連の殺人で6290人が殺害されたと見積もられている。先月の20日には、シウダドフアレス市警察のロベルト・オルドニャ・クルツ署長が、辞めなければ48時間毎に警察官を一人づつ殺すとドラッグの密売組織に脅されて辞任に追い込まれた。

カルドーゾ、ガビリア、セディージョの元大統領たちは、「ドラッグ・カルテルの脅しの警告は、政策の刑事犯罪化を促し、犯罪を政治問題化させてしまった」 と言う。ラテンアメリカ諸国は、禁止政策遂行のためにアメリカから多額の援助を受けてきた。だが元大統領たちは、「個人使用目的のカナビスの所持を非犯罪化することで事態を解決できる」 とその可能性を指摘している。

現在では、赤子のような小さな歩みが成長して大きくなってきている。そこでは、L文字(Loveを意味する)のlegalize(合法化)が好んで使われることも多いが、実際には、ドラッグを非犯罪化すれば、暴力の支配するカルテルの取引と巨大な利益をなくすことができることを意味している。

刑事裁判政策ファウンデーションの エリック・スターリング氏 は、「非犯罪化という言葉はしばしば合法化の婉曲表現」 として使われるために、有権者は合法化によって完全に法規制のない状態になると誤解することもあると言う。「しかし、お茶のように自由になるわけではなく、アルコールのように規制が伴うのが必然で、国や州、ドラッグの種類ベースで規制の仕方がかわる」 と注意している。

元シアトル警察の署長だった ノーム・スタンパー氏 は、現在では、LEAP(Law Enforcement against Prohibition、禁止法に反対する警察官)のスピーカーを務めているが、以前から今回のような事態が起こることを懸念していた。彼はサンディエゴで育ち、友だちとメキシコ国境を越えてティファナで多くの時間を過ごしている。

「本当に大好きな場所でした。でも、今の惨状を見ると心が切り裂かれます。解決策が分かっていて単純なのです。禁止モデルを止めて、規制モデルに置き換えれいいのです。そうすれば、カルテルや売人たちにとっては仕事がなくなって決定的な打撃になるのです。」

3月7日には、エコノミスト誌 も、「禁止法は失敗している。合法化こそ最善の解決策」 と指摘して、再度ドラッグ戦争の終結を呼びかけている。「2006年12月以来、800人ものメキシコ警察や軍人が殺されている。実際問題として、禁止法は犯罪を減らすどころではなく、かつてはありえなかったようなスケールにまでギャング行為を煽ってしまっている。」

3月12日には、CNNの番組で司会のロブ・マルシアーノ氏がエコノミストの記事の一部を読みあげて、ロレッタ・サンチェス下院議員 (カリフォルニア州、民主)にドラッグの合法化について意見を求めた。サンチェス議員はそれに次のように答えている。

「アルコールもドラッグの一つですが、ご存知のようにアメリカでは禁止されていたこともあります。それで、地下経済やカルテルといった今と同じような状態になったわけですが、実際にアルコールを規制管理して課税させて終結させることができました。この考え方は今でも通用します。たぶんドラッグを合法化すれば、地下経済の利益が上がらず止めさせることができると思います。」

また、サンフランシスコの トム・アミアーノ州議会議員 は、慢性的な州財政不足を補うために、「州で最大の換金作物」であるカナビスを合法化して規制管理・課税する法案を提出している。もし仮にこの法案が通過すれば、確かにカリフォルニアのカナビス使用は増えるという悪い面もでてくるだろうが、ドラッグ売買による利益や暴力が減るという良い面のあると見るのが公平だろう。

先週の3月13日に行われた連邦下院小委員会の公聴会で、ジョン・ティアニー下院議員(マサチューセッツ州、民主)は、メキシコのカルテルがアメリカでのドラッグ売買で年間150億〜250億ドルの利益を得ており、その資金でアメリカから銃や武器を調達していると語っている。「利益と銃… そしてドラッグ前線のギャングの一部が… 国境を越えてメキシコに戻り、さらに暴力に油を注いでいるのです。」

スターリング氏は、「メキシコの暴力は目的もない無分別なものではなく、非常に計算されたものなのです。暴力がより身の毛がよだつようにして、殺人がメッセージになるように仕向けているのです。これまでも、それで政府を怖がらせてきたのです」 と説明する。

戦略国際問題研究センター(CSIS)のシドニー・ワイントローブ氏が サンフランシスコ・クロニクル の語ったところによると、メキシコでのドラッグ売買の40%がカナビスだと言う。「まずわれわれの政策を変更しなければならないのは、カナビスを非犯罪化することです。」

カルテルの中心人物を干し上げることをL語で考えるには、ドラッグ戦争が税金の無駄使いかどうかという問題を棚上げにしないとうまくいかない。

メキシコ国境のエルパソの市議会は、「ドラッグ禁止法の終結について、国同士がオープンで誠実な対話を行う」 ことを呼びかけた解決案を通過させたが、州や連邦の政治家たちは政府の拠出する資金を減らすと脅した。AP通信は、「その解決案では、ギブアップして何もやらなくなると思われて、エルパソに対する正しい見方がされなくなる」 と書いた5人の民主党州議会議員の書簡を暴露し、最終的には、エルパソ市長もその案に拒否権を発動して葬りさっている。

私は、実際には禁止法が機能していて、ギブアップして何もやらなくなることになるかについて論じるつもりはない。今問題になっているのは人間としての倫理だ。アメリカの親たちが、禁止法で子供たちが守られているのに合法化などとんでもないと信じている間に、いったい何人のメキシコ警察官が死ななければならないのか?

さらに加えれば、ドラッグ・カルテルの暴力が北に移動して来たとしても、親たちは安全だと思っているのだろうか?