アメリカ政府の調査統計からわかる

カナビス使用者の実像 Part2

Source:NORML's Daily Audio Stash
Pub date: April 13th, 2009
Who Are You II: Industrious & Smart -
More SAMHDA Stats on Adult Marijuana Users
Author: Radical Russ
http://stash.norml.org/
who-are-you-ii-industrious-smart-more-samhda-stats-on-adult-marijuana-users/


前回の記事 のコメントで、読者の一人から次のような質問 をいただいた。

カナビス議論では反対陣営から、「カナビスを吸っていると怠け者になって仕事をしなくなる」 という主張が頻繁に出てきますが、カナビス・スモーカーで成功した人の割合を示すグラフもあればいいのにと思いました。平均的なスモーカーの何%がダメになって、何%が社会に対して生産的になるのでしょうか?

いい質問。SAMHDAの2007年ドラッグ使用と健康に関する全国調査をベースにした クイック・テーブル によれば、カナビス・スモーカーは、使ったことのない人に比較して教育程度が高く、よりハードに働くことが示されている。

  カナビス使用経験なし カナビス使用経験あり
フルタイム就業 48.7% 51.3%
パートタイム就業 56.5% 43.5%
失業状態 46.2% 53.8%
その他/就業を強要されていない 73.7% 26.3%

この表から、フルタイム就業者と失業者の過半数がカナビスを吸っていることがわかる。また、パートタイム就労者の数字は43.5%で半数を割っているが、一般に仕事のスキルが低いパートタイマーでもドラッグ・テストの対象にされることを考えればそれも納得できる。さらに、カナビス使用者で就労を強要されていない人の割合が非常に低くなっているが、これが失業者の割合の高さを押し上げていると思われる。


アメリカ成人全体の就労状況 (クリックで拡大)

調査の回答では、アメリカ成人全体のおよそ3分の2(67.8%)がフルタイムまたはパートタイムで仕事をしている。これに対して失業者の割合は3.2%になっている。(公式の失業者統計では、2007年以降に雇用データの取り方について変更されて、その他の一部も失業扱いとなったが、この調査ではそれを反映していない。)


カナビス使用経験のあるアメリカ成人の就労状況 (クリックで拡大)

一方、カナビスを使った経験のあるアメリカ成人について見ると、4分の3以上(78.3%)がパートタイムまたはフルタイムで就労していることが分かる。失業者についてはカナビス経験者のほうが全体よりも多くなっているが(4%対3.2%)、統計的に見ればそれほど顕著な差があるとまでは言えない。


過去1年間にカナビスを吸った経験のあるフルタイム就労者のカナビス使用頻度 (クリックで拡大)

少なくとも過去1年に1回はカナビスを吸った経験のある2200万人のアメリカ成人のうちで、1290万人がフルタイムで働いている。さらにそれを頻度別に見ると、3分の1を超える人36%が年間100回以上カナビスを吸っており、最も大きな割合を占めている。その470万人はフルタイム就労の常用者で、当然のことながら、全員がカナビス常用者の典型と言われるスノーボーダーやラッパー、あるいはヘッドショップの従業員ということはあり得ない。


学業達成度とカナビス使用 (クリックで拡大)

アメリカ成人の学業達成度とカナビス使用経験の関係では、大学で1年以上教育を受けた人のほぼ半数(47.6%)はカナビスを吸った経験があるが、高卒までの人ではほぼ3分の1(33.8%)にとどまっている。このことから、カナビスが頭を良くするとまでは言うことはできないが、頭の良い人ほどカナビスを使う傾向が高いとは言えるだろう。

前回の記事と今回の記事を合わせると、アメリカ成人の最も平均的なカナビス・ユーザーとしては、大学で教育を受けた40才以下の白人で、フルタイムで働いている人という像が浮かび上がってくる。もっとも、平均的なユーザー像という概念に意味があるかどうかについてはかなり疑問もあるが…

だが確かに、アメリカの最近5期の大統領(クリントン、クリントン、ブッシュ、ブッシュ、オバマ)は全員がカナビスを経験している。また、最近3回の大統領選挙のうち2回は、民主党と共和党の候補(ブッシュ/ゴア、ブッシュ/ケリー)がともにカナビス経験者だった。さらに、アメリカ最大の州の知事(カリフォルニア州シュワルツネッガー)とアメリカ最大の都市の市長(ニューヨーク市ブルームバーグ)もカナビスを使っていた、という事実もある…

これまでカナビス・ユーザーと言えば、ヒッピーや昼間からソファのうずくまって音楽の聞いているような外れたタイプで見られることが多かったが、もはやそのようなステレオタイプは否定されている。

また、カナビス反対派からは、カナビス・ユーザーは無気力で仕事もしないので社会の生産性が下がって迷惑になっているといったステレオタイブも相変わらず語られているが、今回の記事だけではなく、2008年に発表されたカナダの2件の報告でも、68%が高卒より上の学歴をもち、年収5万ドル(500万円)以上を稼いでいる人が32%になっていることも示され、否定されている。

カナビス反対派は、カナビスを使っている人の実態を実際には知らないので上のようなステレオタイプの設定が必要になるわけだが、彼らが現実のデータに基づいた議論をしたがらない理由もそこにある。妄想が肥大化すると、人は無知に酔うようになる。

カナダ 中年のカナビス・ユーザーが急増 (2008.4.15)
カナダのカナビス使用 中流階級でカジュアル化が進む (2008.5.14)